空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで④
第四章
“王座の宣戦布告”
聖王国軍の空気が、
凍りついていた。
誰も動けない。
いや。
動けば死ぬと、
本能が理解していた。
黒き玉座。
紫雷。
空を覆う魔力。
そして。
レインの後ろに立つ、
二人の“怪物”。
竜殺しゼルヴァ。
禁書の魔女ルミア。
どちらも、
本来なら一国が総力を挙げて対処する存在。
それが今。
一人の男の隣にいる。
騎士団長ガルド・ヴァイスは、
歯を食いしばった。
「……貴様」
「何者だ」
レインは静かに答える。
「空席の王」
その瞬間。
兵士達がざわめいた。
「空席の……?」
「まさか伝承の……!」
「ありえない……!」
王国上層部だけが知る、
禁忌の存在。
“玉座の王”。
世界を書き換える災厄。
ガルドの顔から余裕が消えた。
「……総員」
「戦闘準備!!」
一斉に剣が抜かれる。
魔導砲展開。
詠唱開始。
空気が張り詰める。
ルミアが怯えて、
レインの服を掴んだ。
「ご、ごめんなさい……」
「私のせいで……」
レインは振り返る。
「違う」
「お前は悪くない」
その言葉に、
ルミアの瞳が揺れた。
誰かに。
“悪くない”と言われたのは、
いつ以来だろう。
ゼルヴァが肩で笑う。
「王様」
「もう話し合いの空気じゃないぞ?」
レインは前を見る。
兵士達。
怯え。
敵意。
殺意。
でも。
その奥にあるのは。
“恐怖”だった。
理解できないものへの恐怖。
それは、
昔レインが向けられていたものと同じ。
だから。
レインは静かに言った。
「道を開けろ」
ガルドが怒鳴る。
「断る!!」
「その女は災厄だ!!」
「世界を滅ぼす!!」
レインの目が細くなる。
「じゃあ聞く」
「……誰が決めた?」
「っ!?」
「お前らは」
「見たのか?」
「ルミアが世界を壊すところを」
ガルドが詰まる。
だがすぐに叫ぶ。
「危険因子は排除する!」
「それが秩序だ!!」
レインは笑った。
冷たく。
静かに。
「なるほど」
「昔の奴らと同じだ」
空気が変わる。
黒い魔力。
王の圧。
兵士達が一歩下がる。
レインは前へ出た。
「だったら」
「俺が壊してやる」
“そんな世界”
──ドゴォォォォォン!!!!
紫雷が落ちた。
大地が裂ける。
兵士達が吹き飛ぶ。
「うわああああ!!」
「魔導障壁が!!」
「耐えられない!?」
空間が軋む。
空が割れる。
その時だった。
ルミアの禁書。
《叡智の書グノーシス》が、
ひとりでにページを開く。
そして。
文字が浮かび上がる。
《王座所属者確認》
《新たな空席候補を観測》
レインが眉をひそめる。
「……新しい候補?」
次の瞬間。
遥か遠く。
山脈の彼方から。
巨大な光柱が立ち上った。
空を貫くほどの黄金の炎。
ゼルヴァの表情が変わる。
「……は?」
ルミアが震える。
「あれ……」
「嘘……」
ガルドの顔から血の気が消えた。
「ま、まさか……」
空気が揺れる。
世界そのものが震えていた。
そして。
レインの脳内へ声。
《空席No.3》
《適合存在を確認》
《神代兵器級反応》
《称号: “太陽を喰らう者”》
ゼルヴァが、
珍しく真顔になった。
「おい王様」
「……とんでもねぇのが目覚めたぞ」
黄金の炎は、
夜空すら焼いていた。

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