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⑭誰にも救われなかった僕が、異世界では“上限なし”

人が、選んだ

朝の村は、静かだった。

昨日までのざわめきが、
嘘みたいに落ち着いている。

誰も、
声を張り上げない。
誰も、
こちらを指差さない。

(……無視、かな)

それでもいい、と思った。
拒絶よりは、ずっと楽だ。

焚き火の跡を片付けていると、
足音が近づいてくる。

振り返ると、
昨日の代表が立っていた。

ひとりだ。

「……話がある」

短い言葉。

逃げ道も、
脅しもない。

ただ、
話したい、という空気。

「いいですよ」

そう答えた自分に、
少し驚いた。



村の端。
畑の脇にある、
古い石垣の前で立ち止まる。

代表は、
しばらく黙っていた。

「……昨日な」

ゆっくり、言葉を選ぶ。

「村の連中と、
 夜通し話した」

「追い出すのは簡単だ」

「だが——」

一度、
言葉を切る。

「それで、
 村が守られるわけじゃない」

胸の奥が、
小さく動く。

「君たちは、
 条件を突き返した」

「助けても、
 見返りを求めなかった」

「……正直、
 扱いづらい」

少し、
苦笑する。

「だが」

視線が、
真っ直ぐこちらを向く。

「信用は、
 条件では測れん」

その言葉が、
胸に落ちた。

重くはない。
でも、確かだった。



「だから、決めた」

代表は、
静かに言う。

「村として、
 君たちを受け入れる」

「条件は、つけない」

「ただし」

一瞬、
間がある。

「問題が起きたときは、
 一緒に向き合う」

「逃げないこと」

……それは。

(……条件じゃない)

(……“仲間”の前提だ)

「分かりました」

自然に、
そう答えていた。

代表は、
小さく頷く。

「昼までに、
 空き家を用意する」

「好きに使え」

背中を向けて、
歩き出す。

「……ありがとう」

思わず、
声が出た。

代表は、
振り返らなかった。



昼前。

ミレアが、
息を切らして走ってくる。

「聞きました!」

嬉しそうな顔。

「村の人、
 結構、話してましたよ」

「“面倒だけど、
 放っておけない”って」

……その評価、
悪くない。

「……ミレア」

「はい?」

「ありがとう」

一瞬、
きょとんとした顔。

「私、
 何もしてませんよ」

「見てただけです」

「それが、
 大きかった」

彼女は、
少しだけ照れて、
視線を逸らした。



空き家は、
古かった。

でも、
雨はしのげる。
風も通らない。

床に座ると、
少しだけ、力が抜けた。

(……居場所、か)

完全じゃない。
安心しきれるわけでもない。

でも。

追い出されていない。

それだけで、
胸の奥が、静かになる。

レイヴァが、
窓の外を見ながら言う。

「世界ではなく、
 人が選んだ」

「それが、
 一番厄介で、
 一番強い」

「……厄介?」

「世界は、
 計算できる」

「人は、
 できん」

小さく、
笑った。

「だからこそ、
 居場所になる」



夕方。

村の子どもが、
家の前で立ち止まる。

じっと、
こちらを見る。

「……なに?」

そう聞くと、
少し考えてから言った。

「……ここに、
 住むの?」

「うん」

「ふーん」

それだけ言って、
走っていく。

……それでいい。

過剰な歓迎も、
過剰な拒絶もない。

ただ、
日常の一部になる。



夜。

小さな灯りの下で、
息を吐く。

「……レイヴァ」

「何だ」

「ここ、
 居場所にしていいと思う?」

彼女は、
少し考えてから答えた。

「“居場所”とは、
 完成するものではない」

「選び続けた結果だ」

……なるほど。

「なら」

拳を、
軽く握る。

「選び続けるよ」

外では、
虫の声が鳴いている。

世界は、
まだ敵だ。

でも。

人は、
 味方になり得る。

それを、
今日、知った。



読者のみなさまへ

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

この章では
世界ではなく、人が“受け入れる”決断をする瞬間を描きました。
派手な勝利ではありませんが、
物語にとっては大きな一歩です。

もし
「この居場所がどう変わっていくのか気になる」
「世界はこの選択をどう見るのか知りたい」
と感じていただけたら、
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