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空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで㉙

第二十九章

“王の涙”

神殺し。

その斬撃が放たれた瞬間。

世界が、
真っ白になった。

──ズバァァァァァァァァン!!!!!!

音が遅れて来る。

いや。

空間そのものが、
悲鳴を上げていた。

空が割れる。

大地が裂ける。

世界を覆っていた終末の黒雲が、
一直線に断ち切られていく。

終末核。

無数の顔を埋め込まれた黒腕が、
ゆっくり崩壊していく。

──ボロ……

──ボロボロボロ……

喰われた世界達の悲鳴が、
空へ溶けていった。

そして。

終末の神が、
絶叫する。

──ギャァァァァァァァァァァァァ!!!!

空が歪む。

巨大な顔面へ、
深い裂傷。

紫黒の血が、
空から降り注ぐ。

触れた大地が、
一瞬で腐敗していく。

兵士達は、
ただ呆然としていた。

神が。

終末が。

押されている。

そんな光景、
誰一人として想像すらしていなかった。

ラグナは、
静かに剣を下ろす。

だが。

その身体は、
限界だった。

神殺し。

それは。

“自分自身も壊す剣”。

白銀鎧が、
崩れ始める。

──パキ……

──パキパキ……

腕が砕ける。

血が流れる。

魂すら削れていた。

ルミアが叫ぶ。

「ラグナ!!」


だが。

神殺しの聖騎士は、
静かに笑った。

初めて。

ほんの少しだけ。

穏やかに。

「……これでいい」


その姿を見た瞬間。

レインの胸が、
激しく痛んだ。

記憶。

また流れ込んでくる。

神代戦争。

終末に侵される世界。

そして。

最後の最後。

ラグナは。

王を守る為に、
一人で終末へ突っ込んだ。

誰よりも傷付きながら。

誰よりも壊れながら。

それでも。

最後まで、
王へ剣を向けなかった。

その記憶が。

レインの胸を、
引き裂いていく。

「……なんで」


声が震える。

ラグナが振り返る。

白銀の長髪。

傷だらけの顔。

それでも。

その瞳だけは、
真っ直ぐだった。

「貴方は」

「私達に、居場所をくれた」


静かな声。

だが。

その言葉は、
重かった。

ゼルヴァ。

ノクス。

フェルグラード。

エルシア。

皆、
黙っていた。

誰も否定しない。

空席の軍勢。

それは。

世界から捨てられた怪物達。

居場所を失った最強達。

そんな彼らを、
唯一受け入れたのが。

空席の王だった。

だから。

彼らは、
命を懸ける。

その時。

終末の神が、
怒り狂う。

巨大な口が、
裂ける。

──グガァァァァァァァァァ!!!!

終末の空間が、
完全に開いた。

そこから。

“本体”が現れ始める。

兵士達が絶望する。

空より巨大。

世界そのものより巨大な、
黒い肉塊。

星々を呑み込みながら、
こちらへ近づいて来る。

ルミアが青ざめる。

「うそ……」

「完全顕現……!?」


ノクスが低く呟く。

「まずい」


フェルグラードも、
初めて焦りを見せた。

「おいおい」

「神代の時よりヤベェぞ」


だが。

その時だった。

レインの頬を、
一筋の涙が流れる。

誰も動かなかった。

王が。

泣いていた。

レイン自身も、
止められなかった。

苦しい。

胸が苦しい。

孤独だった。

怖かった。

失いたくなかった。

なのに。

また。

また仲間達が、
傷付いていく。

その感情が、
王権へ流れ込む。

瞬間。

黒き玉座が、
激しく脈動した。

──ゴォォォォォォ!!!!

紫雷爆発。

空席全体が、
一斉に共鳴する。

そして。

今まで沈黙していた、
最奥の“封印席”が。

ゆっくり。

開き始めた。

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