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〜第94夜〜「途中で帰った一人」

🕯️ 百物語 完結まで
残り──6話。

……いよいよ、ここまで来ましたねぇ。

昔からね……

百物語で一番やってはいけないことがあるんですよ。

それは……

途中で帰ること。

「怖くなったから帰る。」

「もう十分だから抜ける。」

普通なら、何も問題ない話でしょう……?

でもね……

百物語の最中だけは、違うんです。

始めた時の人数と、終わる時の人数。

それが変わると……

“何か”が、数を合わせに来る。

だから昔の人は、

最後まで終わるまで……

誰ひとり、席を立たなかったんですよ……。

……では、第94夜。

お話ししましょうか……🕯️


📌 視えてしまう世界の話

〜第94夜〜

「途中で帰った一人」



🕯️ はじめに

集まりってね……

最後までいる人と、

途中で帰る人がいますよね……。

でも……

“途中で帰ってはいけない場所”というのが、

この世にはあるんですよ……。

えぇ……。

百物語も、そのひとつなんです。


これはね……

ある専門学校の学生たちが、

夏休みに百物語をした時の話なんですが……。

場所は、山の中の貸別荘。

参加者は8人。

最初はね……

みんな盛り上がっていたそうですよ。

怖い話をして、笑って……

肝試しみたいな感覚だった。

でも……

70話を過ぎた頃から、

空気が変わった。

誰も笑わなくなった。

妙に寒い。

時計の針だけが、やけに大きく聞こえる。

そして……

80話を超えた頃。

ひとりの女の子が、

突然、立ち上がった。

「……ごめん。帰る。」

顔色が真っ青だったそうです。

みんな止めた。

「もう少しだから。」

「終わってから帰ろう。」

でもね……

彼女は首を振った。

「なんか……ここにいたらダメな気がする。」

そう言って、

荷物を持って部屋を出て行った。

えぇ……。

それきりです。

残った7人は、

気味が悪いと思いながらも……

結局、百物語を続けた。

そして……

94話目。

突然……

玄関のチャイムが鳴った。

ピンポーン……

山奥ですよ。

夜中の2時。

誰か来るはずがない。

全員、顔を見合わせた。

もう一度。

ピンポーン……

すると……

外から声がした。

「開けて。」

……えぇ。

帰ったはずの、あの女の子の声なんです。

みんな、安心した。

「なんだ、戻ってきたんだ。」

そう思って、

ひとりが玄関へ向かった。

でも……

ドアを開けようとした瞬間。

後ろから、

小さな声が聞こえた。

「……待って。」

振り返ると、

別の女の子が、

震えながら言った。

「さっき……メッセージ来た。」

スマホを見せた。

そこには……

帰ったはずの彼女から、

10分前に届いたメッセージが表示されていた。

『今、駅に着いた。また今度ね。』

……えぇ?

じゃあ……

今、外にいるのは誰なんだ。

全員、固まった。

その時……

また、チャイムが鳴る。

ピンポーン……

そして……

今度は、ドアの向こうから。

「……寒い。」

「入れて。」

「まだ、帰れてないの。」

……えぇ。

その声……

だんだん、近づいてくるんです。

まるで……

ドアのすぐ向こうで、

顔をつけて話しているみたいに。

そして最後に……

こう言ったそうなんですよ。

「……ひとり、足りないから。」


📝 あとがき

帰るっていうのはね……

そこから離れることです。

でも……

“離れたつもり”になっているだけで、

本当はまだ、

その場から出られていないこともあるんですよ……。



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この話の核心――

なぜ彼女は帰らなければならなかったのか。

なぜ“もう一人の彼女”が戻ってきたのか。

そして……

「ひとり足りない」とは、

誰のことだったのか……。

ここでしか読めない解釈をお話しします……。

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329字
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