誰も教えてくれない「ドローダウンの算数」──10%の上限は、遠い壁ではなくあなたの口座の"実サイズ"だ
Sです。FTMOを含む複数のプロップファームで、Fundedアカウントを合計3回取得しました。出金回数は、いまだに0回です。まだ壁の内側にいる当事者として書いています。
前回、私はエントリー前に必ず回す14項目のチェックリストの話を書きました。今日はそのチェックリストの中にある、たった1つの「数字」を深掘りします。
どんな下手なエントリーよりも静かに、そして確実に、Fundedアカウントを終わらせている数字。
最大ドローダウンです。
どのプロップファームにも、この上限があります。10%が一般的です。そして、ほぼ全員がこれを同じように「間違って」読んでいます。「自分には関係ない、遠くにある壁」として。
私の見方を根本から変えた「読み替え」を、今日は共有します。
ヘッドラインの数字は、自分につく嘘だ
10万ドルの口座を、最大ドローダウン10%で渡されたとき、あなたの脳は「10万ドル」と聞きます。
そうではありません。「1万ドル」と聞くべきです。
なぜなら、1万ドル負けた瞬間に、その口座は消えるからです。傷つくのではありません。消えます。9万ドルというフロア(床)より上にある全てのドルは、あなたが退場する前に失われるためだけに存在している。あなたの口座の“本当のサイズ”──生き残れるかどうかを決めるサイズ──は、ダッシュボードに出ている10万ドルではなく、ドローダウンの1万ドルのほうなのです。
私は何年も、大きいほうの数字を相手にトレードしていました。10万ドルの余裕があるかのようにロットを決めていた。実際に持っていた余裕は、1万ドルでした。この差こそが、3つの口座が死んだ場所です。
デイリーと最大──2つの上限が仕掛ける罠
多くのFundedアカウントには、ドローダウンのルールが2つあります。そしてこの2つは、手遅れになるまで気づけない形で絡み合っています。
デイリーの上限(たとえば5%)──1日に失える額
最大(トータル)の上限(たとえば10%)──ピークまたは開始時点から、全体で失える額
私が何度も犯したミスは、デイリーの数字だけを見ていたことです。「今日はまだ5%の中に収まっている、大丈夫」と自分に言い聞かせる。そして実際、その日は大丈夫でした。でも、-4%の「大丈夫」な日が2日続けば、トータルでは-8%です。もう、普通の負け1回で退場するところまで来ている。呼吸する余裕はどこにもありません。
デイリー上限は、一発の爆死からファームを守るためのものです。あなたの運命を実際に決めるのは、最大上限のほうです。トータルを見てください。「今日の上限まであといくら」ではなく、「フロアまであといくら」を常に把握する。ここが分かれ道です。
私が今、相手にしている「本当の数字」
だから今の私は、どんなポジションを持つ前にも、この算数を回します。
まずトータルのフロアをドルで出す。10万ドル/10%の口座なら、9万ドル。
次に、今この瞬間そこまでの距離を出す。残高が9万6千ドルなら、私の“実残り資金”は9万6千ドルではなく、6千ドルです。
損切りにフルでかかったとき、その「実残り資金」の小さな一定割合だけを失うようにロットを決める。ヘッドラインの残高ではなく。
効果は、地味であると同時に残酷です。フロアに近づくほど、私のロットは自動的に小さくなります。リスクを測る相手の数字そのものが縮んでいくからです。「取り返す」ために口座を賭けることが、構造的にできなくなる。余裕が小さいとき、算数がロットを大きくさせてくれないからです。
昔の私は、負けたあとにロットを上げて、回復を追いかけていました。この算数は逆をやります。いちばん大きくしたい誘惑に駆られる瞬間に、いちばん小さくさせる。それが狙いの全てです。
なぜ「通過したあと」ほど効くのか
チャレンジ中は、ドローダウンは机上の話に感じます。利益目標を追っていて、口座は新品で、フロアははるか遠くにある。
Fundedになると、話が変わります。本物のお金がかかり、本物のプレッシャーがかかる。そして決定的なことに、あなたが思っているよりフロアまでの距離は近い。すでに動かした実口座をトレードしているからです。プレッシャーはあなたにロットを上げさせようとする。算数は、それを押し返さなければなりません。
私の崩壊は、チャート上ではいつも同じ形をしていました。普通の負け、それを取り返すための大きめの負け、そして午後のうちにトータルドローダウンが消える。値動きが読めなかったからではありません。実際の余裕が静かに尽きていく間、私が“間違った数字”を相手にサイズを決めていたからです。
この方法の、正直な限界
これであなたが勝てるようになるわけではありません。私自身、いまだに1回も出金していません。良いドローダウンの算数は、勝ちトレードを見つけてはくれない。ただ、あなたにエッジがあるのなら、そのエッジが姿を現す前に負けの連続で退場させられないように守ってくれる。それだけです。
これは、世の多くのトレード情報が語る約束より、ずっと小さな約束です。でも「来月もまだ土俵に残っている」ことだけが、複利で効く唯一の約束です。それ以外は全部、退場しないことの下流にあります。
もしあなたが今、Fundedアカウントや大会の賞金口座を持っているなら、次のトレードの前に1つだけやってください。トータルのドローダウン・フロアをドルで書き出し、今日そこまであといくらかを書く。その数字を相手にトレードする。ダッシュボードの数字ではなく。
この記事で書いた「フロアに対してロットを決める」計算を、感情なしで自動的に回せるように、PDFにドローダウン計算シートをまとめています。
デイリー/最大ドローダウンの残量を入力するだけで、そのトレードで取れる最大ロットを機械的に出せるシートです。エントリー前14項目チェックリストも付いています。「なんとなく」で入る前に、自分を止められる道具です。
→ 詳細はプロフィールのnoteにあります(¥4,980)
