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タンゲーラ・タンゲーラ

アルゼンチンタンゴを踊る女性のことをさしてタンゲーラ(tanguera)。男性だとタンゲーロ(tanguero)、複数形ではタンゲロス(tangueros)。
(タイトル写真:UnsplashPreillumination SeTh

 タンゴを踊っていれば誰でもタンゲーラ・タンゲーロか、というと、その辺は微妙で、プロのタンゴダンサーたちは「ダンサー」を意味する bailarina/bailarin、もしくは danzarina/danzarin と自称することが多いように思います。タンゴだけじゃなく他のダンスも踊れるよ、という彼らの矜持がそうさせるのでしょうかね。

 一方、趣味のタンゴの世界では、なりきり・自己満足ロールプレイ遊びのウチOK!なので、みんな結構使ってますね~。例えば、「ハーイ、タンゲロスみんな踊ってる元気?」とか、「僕のセクシ―なタンゲーラ、今夜は##に踊りに来る?」とか。ミロンガダンスホールの常連と言う意味のミロンゲーラ・ミロンゲーロという呼称もありますが、こちらには「無頼」のイメージがあって、ただそのイメージが、「粋な遊び人」から「どうしようもないヤクザ者」まで、聞く人によってかなり違うので、思わぬ誤解を引き起こさぬよう、使う時はご注意を。

 さて本題に戻って「Tanguera」、Mariano Mores 作曲の有名なタンゴの曲名でもあります。弦楽器のピチカートに始まってだんだん盛り上がり、ドラマチックなBメロが現れるこの曲は、弦セクションの厚いオーケストラがよく取り上げるタンゴですが、タンゴショーでも人気です。なかでも有名なのは『Forever Tango』で使われたバージョンではないでしょうか。

 このバージョンは、ピチカート部分がパーカッションに変更、長さも1分半と短いのですが緊張感があり、またダンスの方にも高度なテクニックが詰め込まれていて飽きさせません。見栄えの良さのせいか、プロダンサーがデモなどで使うことも多い振付で、あ、なんか見たことあるヨ、と思われる方もおられるかと思います。一般的に言って、アルゼンチンタンゴの振付は流動的で、同じ音楽でもダンサーによって振付が全く違うのが普通なので、多少のアレンジはされても、30年近く踊られてきたこの振付は一種の古典といっていいんじゃないかなと思います。(マネしてみたい方は Claudio Villagra と Romina Levin のお手本をどうぞ。でも、マネする時はくれぐれもお気をつけて⚠️)

 Tanguera の振付は、ショーの初期はかなり違っていて、いつからこの振付になったのか、誰が振り付けたのか、少し調べてみましたがはっきりしませんでした。スターダンサーたちは自分の得意技をちりばめて踊るせいか、いろいろなバージョンがあるのも確かで、Forever Tango のように長く続いて多くのトップダンサーが参加したショーでは、誰がどこを振り付けた、と特定しにくいことも事実。

 技術面では、リンディホップ系の技を効果的に使っていて、考えてみると、今ではごく普通にタンゴショーで使われているこういった技をよく見るようになったのは Forever Tango あたりからかもしれません。ちなみに、このショーでは他にもにリフト&ドロップやスロー(フォロワーを床にスライドするように「投げ」る)など一連のテクニックが印象的に使われました。こういう派手さ重視の動きは、アルゼンチンタンゴファンの間でも好き嫌いの分れるところかもしれませんが、エポックメーキングだったことは確かです。

 Tanguera のアレンジ版はいろいろありますが、Miriam Larici と Leonardo Barrionuevo のバージョンがドラマチックです。 The circus scarf(とリンディホップで呼ばれる、リーダーがフォロワーをリフトして左肩、背中、右肩と首のまわりを回転させる技)からフィニッシュのポーズに至るシークエンスなど文句なし✨  

 このビデオは Miriam & Leonardo をアルゼンチンタンゴ界を超える人気者にしたテレビ番組 So You Think You Can Dance でのパフォーマンスですが、このコンペの準備を手伝った Sandor Sandoval は Forever Tango の初期のダンサーの一人で、ヘリコプターリフトなど様々なテクニックをあのショーに持ち込んだ人、と言われています。今このビデオを見直してみて、(プロのダンサーは振付もできる)アルゼンチンタンゴでも専門の振付家やテクニカル・アドバイザーは重要だなーとしみじみ思いますね。テレビやストリーミングは画面の制約があるし、大きい舞台は狭いミロンガと違うから、彼らの的確なアドバイスがあってこそ伝わる魅力もあるわけで……。

 さておき、本題に戻って Tanguera、音楽のみ Forever Tango 版を用いた全く別の振付も多数あって、例えば、Sebastian Arce と Mariana MontesGuillermina Quiroga と Roberto ReisEva Lucero と Patricio Touceda (あ、これは音楽が Tango Argentino 版ですね。それにしても Eva の脚……そしてタッセルのドレス😍)それぞれ素晴らしく、ステージタンゴが「ファンタジア夢の世界」と呼ばれるのも納得。

 もちろん、ファンタジアはミロンガでの踊りとは別モノです(そうなんです、タンゴのダンスパーティではあまり派手な動きはしないんです。そのあたりの詳しいことはコチラまたはコチラの記事を)。それでも、素晴らしいパフォーマンスはインスピレーションの源🌹。フーム、あの脚はムリでもタッセル付きのドレス、今度のグランミロンガで挑戦してみません、タンゲーラスご同輩
©2024 Rico Unno, CC BY-ND


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