アルゼンチンタンゴを踊りに来たのに、ピアソラの曲がかからないっていう、あれはなんなんですか?
え、ピアソラ、かかりますよ。でも、そうですね、いつもかかる、ってわけではないですね。
(タイトルイメージ from Wikipedia)
リベルタンゴ、アディオス・ノニーノ、ブエノスアイレスの四季……素晴らしい曲をたくさん残したアストル・ピアソラ。踊るだけでなく音楽も楽しみたいんだから、ミロンガでもどれか一つくらいはかかってほしいわ、と思うのは人情ですよね。なのにかからない時があるのは、単純にいうと、他にも人気の曲、それも踊る人たちと共に歩んできたタンゴ楽団が名演奏をした音源がたくさんあるからです。
ミロンガで人気のタンゴは?
ではどういう曲がピアソラと張り合うくらい人気なのか? いや~、たくさんあるんですけど、ざっくり楽団でいうと、
カルロス・ディ・サルリ楽団 (参考プレイリスト by Tangology 101)
フアン・ダリエンソ楽団 (参考プレイリスト by DJ Luigi)
アニバル・トロイロ楽団 (参考プレイリスト by Tangology 101)
オスバルド・プグリエーセ楽団 (参考プレイリスト by Tangology 101)
あたりが四天王じゃないでしょうか。もちろん他にもたくさん人気楽団はありますが、これら四大楽団の曲が一曲もかからないミロンガ、っていうのはまずないんじゃないかと思います。これらの楽団の演奏は、目の前で踊っている有名無名のタンゲーロスに常に寄り添い、彼らを楽しませると同時にインスパイアする要素を持っていて、ゆえにタンゲーロスからの絶大な支持を誇るのでミロンガで頻繁にかかります。また、生演奏のバンドがミロンガに入る時も、バンドはこれら歴史的な楽団のスタイルを頭に置いて演奏するので、まさにミロンガでのコアを形成する音楽だ、といえるかと思います。
外連味がないリズムに、バンドネオンをはじめとする楽器と歌手が様々な感情表現でメロディーを奏で、適度な盛り上がりがあるけれど踊っているパートナーへの注意を邪魔するほどじゃない。1曲だけ聞くと、ふ~ん、というカンジかもしれませんが、3、4曲続けて、できれば誰かと踊っているイメージで聞くと、楽団ごとのタンゴの魅力がじんわり効いてきますヨ。
ミロンガで踊ってきた人たちは、これらの楽団の曲をずっと聞いてきているので、それこそ装飾音のひとつまで知っていて、踊る時もいろいろ工夫をしています。従って、これらの楽団の曲がかかる時は音楽的に豊かな踊りがダンスフロアで展開します。なので、このあたりの楽団の音楽を事前にチェックしておくと、「あ、これプグリエーセね!」とか、見ても踊っても面白さが増すこと間違いなし🌹
ピアソラはいつかかるの?
ミロンガではタンダといって3、4曲がひとまとまりになってかかります。1つのタンダでは同じ楽団、もしくは同じタイプの曲が選ばれていて、タンダとタンダの間にはコルティーナという短いブレイクが入って音楽が続いていきます。1タンダは15分くらいなので、1時間当たり4楽団くらい、ひと晩でいくつの楽団がかかるかはミロンガの長さによりますが、その中にピアソラが入るかどうかは タンゴDJ とミロンガのオーガナイザー次第なのです。
ウチのミロンガでは伝統的な曲でいってね、などと意向をTDJにはっきり伝えるオーガナイザーもいれば、アンタの好きにやっていいよ、というところもあるし、またTDJの好みもあるので、どの楽団が入るがは蓋を開けてみないとわからないし、またそれが楽しみでもあるのですが、たいていのミロンガは「トラディショナル・タンゴだけ」「新しいタンゴも混ざる」「半々くらい」などと、かかる音楽の傾向をサイトなどにのせているので、ある程度の見当は付きます。ざっくりですが、1960年代までの音楽がトラディショナル、1970年代以降はピアソラや他のタンゴ・ヌエボ、タンゴ・エレクトロなどを含む新しいタンゴと考えればいいかな、と思います(タンゴ音楽の時代区分に関しての吉村俊司さんのnoteの記事はこちら)。
ピアソラはタンゲーロスに嫌われてる?
1970年代にピアソラの音楽が出てきた当時、その新しさを、奇をてらっただけ、と嫌ったタンゲーロスも少なくなかったので、そういう印象があるかもしれませんが、今はそんなことはないと思います。絶対聞きたくない、なんて人はハナからトラディショナル・オンリーのミロンガに行くでしょうし、音楽としてはいいんだけど踊りづらいからちょっと、という人はピアソラのタンダは一休みして飲み物やお喋りを楽しんでいるでしょうし。
また、ピアソラはダンスの枠組みに囚われない曲も多く書いているので、そういう曲はコンサートでは人気でもミロンガではかかりません(例えば、ドラマチックに歌い上げる『ロコのバラード』とかですね)。
ピアソラは沢山ある素敵なタンゴの一つなので、ミロンガではかかる時もかからない時もある
好きな音楽がかからないとちょっとガッカリしますが、ミロンガでは知らなかった素敵なタンゴに巡り合ったり、タンゴ以外の音楽のタンダで、こういうのでも踊れるんだ~と発見があったりもするので、いろんなワインをテイスティングしてる気分で TDJ のおススメを楽しむのも、たまにはいいのではないでしょうか?
©2025 Rico Unno, CC BY-ND
