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AMCO知見Lab、創設一周年に寄せて

AMCO知見Lab創設一周年を記念して刊行が予定されている記念誌に、小林さんから短い寄稿文の執筆を依頼されました。
 
私はこれまで、自身の長年にわたるマースクでのキャリアについて執筆してきました。特に1987年から2005年まで在籍したオーデンセ造船所(リンデオ工場)での造船経験を中心に紹介してきました。
 
前回の寄稿では、日本の造船業は今後も生き残るだろうと予測し、次のような結論を述べました。
 
「日本の造船業の競争戦略は、
『量より質(Quality over Quantity)』
『規模より価値(Value over Volume)』
『従来型よりグリーン(Green over Conventional)』
に要約される。」
 
今回は、この考えをさらに発展させ、AI(人工知能)がこの戦略の実現において極めて重要な役割を果たす可能性について述べたいと思います。

また、AIが船舶や港湾の運用をどのように変えていくかについても触れたいと思います。
 
その前に、一つお断りしておきたいことがあります。
 
私は過去20年間、造船業界の第一線から離れており、知識も多少古くなっています。しかし、その後の発展を大きな関心を持って見守ってきました。そのうえで、あえて次の大胆な主張から始めたいと思います。
 
**AIは造船と船舶運航を根本的に変革し、効率性・安全性・持続可能性を飛躍的に向上させる。そして日本には、それを実現する背景、技術力、ノウハウ、そして精神風土が備わっている。**
 
### 造船分野
 
**生成AIによる設計最適化**
 
AIは数千通りもの設計案を短時間で比較検討し、船体抵抗の低減、重量配分の最適化、燃費向上など、人間だけでは到達できないレベルの設計改善を実現するでしょう。
 
**スマート製造**
 
画像認識技術や予測アルゴリズムにより、ロボット溶接の高度化、鋼板の微細欠陥検出、建造設備やドッククレーンの保全予測が可能になります。
 
**デジタルツイン**
 
鋼材を切断する前に、船舶全体の仮想モデルを構築し、実海域での性能をシミュレーションできます。推進装置や配置変更の効果も、実船を造る前に検証できるようになります。
 
### 船舶運航分野
 
**自律航行**
 
AIはレーダー、AIS、カメラ、LIDARなどの情報を統合し、障害物の検知や衝突リスクの予測、操船判断を行います。まずは沿岸航行や港湾支援から始まり、将来的には完全自律航行へ発展するでしょう。
 
**予知保全**
 
エンジン振動、潤滑油中の摩耗粉、温度データなどを分析し、故障を数週間前に予測することで、突発停止を大幅に削減できます。
 
**航路・燃料最適化**
 
気象・海流・波浪データをリアルタイムで活用し、最適な速力や針路を自動調整することで、運航スケジュールを維持しながら燃料消費を5〜15%削減できる可能性があります。
 
**港湾・物流との連携**
 
ジャストインタイム入港、自動係船、荷役作業の最適化などをAIが統合的に管理し、船舶と港湾システムを連携させることで、待機時間や排出ガスを削減できます。
 
### 人間に求められる役割
 
乗組員の役割は、従来の直接操作から自動化システムの監督・管理へと変化していくでしょう。そのため、新たな教育や資格制度が必要になります。
 
また、混雑海峡や荒天時などの複雑な状況において、AIによる意思決定支援は船長の重要な補佐役となるでしょう。
 
### 解決すべき課題
 
* AI制御船に対するサイバーセキュリティ対策
* 自律運航船に関する法制度整備(衝突時の責任問題など)
* 造船所、機器メーカー、運航会社間のデータ標準化
* 既存船への導入に必要な初期投資
 
### 結論
 
AIは船員や造船技術者を不要にするものではありません。
 
むしろ船舶をより賢く、安全に、効率的にしながら、設計、建造、運航、保守管理に至る船舶ライフサイクル全体を大きく変えていくでしょう。
 
そして日本は、この新しく刺激的な変革の最前線に立つことのできる、極めて有利な立場にあると私は考えています。
 
**Niels Roed**

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