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イオンモール熊本の爆発事故から考える、販売現場の“万が一”構造  


熊本地震、ショッピングモールの爆発事故。 取り返しのつかない痛ましい結果を前にして、 残された私たちができることは、考え続けること。

3名が亡くなった企業の説明があったとき、 先に行われた2名が亡くなった企業の説明とは違い、 世間の評価はかなり良いものに感じられた。
「私物を取りに行っただけ」 「驚いてすぐ退去するように言った」 「戻るようには言っていない」
確かに、 「戻れるなら戻れ」と言ったケースとは違う。 しかし、従業員の立場から見れば、 “戻るべき理由があった”という点では大きな違いはない。
その視点から、今回の事故について私なりの分析を書きたい。

変わっていく明日へ。

■ ハビタ:売上金の扱いが制度化されていない構造

ハビタは、現場の状況がわからない人間が一般論として 「戻れるなら戻れ」と言った。 しかしその背景には、 売上金をどうにかしなくてはいけないという理由があった。 混乱した災害現場の従業員が、売上金について自分で判断しなければならない状態が、 問題の根幹にある。

■ オンワード:私物を持てない就業スタイルという慣習

オンワードは、3人は私物を取りに戻った、それは心情として理解できる、私物を持たないと帰るに帰れないから。 上司は、危ないからすぐに出なさいと言った、それを世間は評価している。 しかし従業員の立場から見たら、危ないからといっても、私物持たずには帰れない。戻る理由がある。

■ この二つは違うものだろうか?「構造的には同じ問題」

売上金を、万が一の場合どうするかを完全に決めていない施設構造上の問題。 私物を身に付けていないから、帰りたくても帰れないと言う店舗運営上の問題。 これらは、大規模商業施設で営業している店舗が抱える基本的な問題。 これをまとめて考えるべきではないか。

■ この問題の解決のため進むべき道

まず、売上金については保険のような保障される仕組みを考えることと、揺れを検知したらガスが止まるようなことと同じように、すぐに安全な部分に落とし込めるような機械的なサポート。こうしたものの合わせ技による制度的なよりよく備える仕組み、というものが必要だった。

次に、私物を取りに戻ったということについて、店員が私物を身に付けられないことが前提の今回の店舗の運営スタイル、それはあくまで商売の見栄え優先の営業スタイルが産んだ慣習。 足元もヒールやパンプスなど逃げることをおよそ考えていない業態も多い。 これらについては、万が一のことを考えたスタイルで営業することを徹底するべき。
こうした店舗などでの安全への備えの基準を、運営の柱の一つとして考えることが必要。

少し話を広げると、 土木建設業界では「怪我と弁当は自分持ち」という慣習が長く続いていた。
リスクマネージメントも体調管理も、すべて労働者が自己管理をしなさいと言う、企業側が責任を放棄している構造。
しかしそれは業界のイメージを悪化させ、後継者不足を招き、 このままでは立ち行かなくなるという危機感を生んだ。 そこで業界は慣習を見直し、ホワイト化に向けて努力を始めた。 今では少しずつ変わりつつあり、 イメージアップが誇りにつながる好循環が生まれている。同じように、 危険とは関わりが薄いとされてきた飲食や販売といった分野でも、 万が一への備えを徹底すべき。

■ 安全バッジ。
備えの整備がステータスを生む構造


製造業でISOで規定された安全基準があり、 それを満たすことがステータスになっている、これにヒントを得た。
飲食や販売といった危険が見えにくい業種にも安全基準を設け、 基準を満たした企業にステータスバッジを与える仕組みを作れないだろうか。
安全基準を満たした製造業の事業所にISOの認定を与えるように、働く人間を大切にする企業ですよ、と言う公的な認証。

平時有事を横断して危険へ備え、働く人の安全に配慮する。「見栄え」という曖昧な評価基準よりも誰にもわかりやすい「安心安全」という認証を与えることで、万が一への備えをブランド価値に直接的にプラスできる武器になる。


■変わっていく明日へ

今回の事故は、 販売現場の安全構造が時代に追いついていないことを示した出来事だった。 売上金の扱いという制度の不在と、 私物を持てない就業スタイルという慣習の問題は、 どちらも「万が一を想定していない」という一点でつながっている。

社会全体では、 火災保険、地震保険、生命保険、非常持ち出し袋、ハザードマップなど、 “万が一の備え”が常識になっている。 しかし販売や飲食の現場では、 万が一を考えないという非常識が長く続いてきた。 非日常の世界観を演出することが優先されてきたから。

しかし、時代は変わった。 制度が下支えし、企業が誇りを持って安全基準を満たす。 そんな流れが生まれれば、 今回の痛ましい出来事を、未来の安全につながる一歩にできるはず。


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