医療から学んだ〜行動力と感謝と尊敬の心〜④
前回、理学療法士の視点を持って自分自身を「評価」し、身体との認識のズレを修正することの大切さをお伝えしました。
患者さんにとって、それは「薬を飲む」という行動力が重要であることでした。
今回は、少し視点を変えて、
なぜ私がそこまで「服薬」にこだわるのか。
理学療法士としての臨床経験と、現在の当事者としての実感を照らし合わせてお伝えしたいと思います。
【前回投稿をお読みになっておられない方は是非👇】
理学療法士が痛感した「服薬」という名の土台作り
理学療法士として私が考える服薬の本質。
それは、これまでお伝えしてきたように、言わばリハビリテーションを円滑に進めるための「土台作り」です。
臨床の現場では、痛みが強すぎて、原因を探るための評価や検査(調査)が進まないことが多々あります。
すると、患者さんからは切実な声が上がります。
「はやく治してよ!」
「もう一回注射してもらう!」
「他の人に担当変わって欲しいわ……」
痛みがあるうちは、リハビリどころではありません。時には来院が途絶えてしまうことすらあります。
それくらい「疼痛」というものは、リハビリを進める上で大きな壁になることはお伝えした通り。
それどころか、痛みによって夜に十分な睡眠が取れずリラックスできないと、神経は常に興奮状態になり、さらに痛みが増すという「負のループ」に入ります。
経験上、これは最も治りにくく、制限が残ってしまうパターンです。
だからこそ、私はこう伝えてきました。
「処方された薬をきちんと飲んで、まずは炎症を鎮静化させてください!」
患者さんが医療者を信頼して服薬することが、完治への最短ルートになる。
「薬で痛みを抑えることは、逃げではなく、リハビリを始めるための準備である」
これは、私がプロとして揺るぎなく信じてきた正論でした。
ナルコレプシーと肩関節周囲炎の共通点
この「服薬の重要性」は、私自身がナルコレプシーという病気になったことで、より深い確信に変わりました。
脳の病気であるナルコレプシーと、肩の炎症である肩関節周囲炎。
一見、全く別物に見えるかもしれません。
しかし、リハビリ専門職として、そして当事者として気づいた本質は、驚くほど一緒でした。
それは、前回もお伝えした通りですが、
「本人の気合いや努力だけではどうにもならない、
生理的な壁がある」
ということです。
風邪や熱、感染症が根性や気の持ちようで治らないのと同様です。
ナルコレプシーという病気は、オレキシン(覚醒物質)が不足している状態で気合で起きようとしても、脳は機能しません。
その状態がずっと続きます。
私は痛みこそなかったですが、いわゆる負のループに飲み込まれてしまい、精神的にも肉体的にも追い詰められました。
どちらも、まずは服薬によって
「リハビリができる状態までコンディションを底上げすること」
そこが整って初めて、再発予防や生活の改善といった、本当の意味でのリハビリテーションがスタートできるのです。
患者になって初めて知った「共感」の本当の意味
経験を通して、私は改めてこう確信しています。
「服薬は、単に症状を抑えるものではない。スタートラインに立って前に進むための、きっかけに過ぎない」
ナルコレプシーの私のメインとなる症状は、
不眠、疲労感、猛烈な眠気。
これらはすべて「主観」でしかなく、他人からは見えません。
時には怠惰に見え、叱責されることもありました。
かつて私が担当していた肩関節周囲炎の患者さんも、今私が感じているような
「試さないと分からない薬への怖さ」
「目に見えない辛さ」
を隠されていたのかもしれません。
「その人の辛さや痛みに、簡単に共感するな!」
「人それぞれ度合いも感じ方も、抱えている恐怖も違うんだぞ!」
……と。
今の私は、過去の自分にそう言ってやりたい気持ちになります。
今の私は、毎日服薬でしか体調をコントロールできません。
だからこそ、服薬の重要性により気づくことができました。
そして、それは決して後ろ向きなことではないと痛感しております。
医療から学んだ行動力
皆さん、どうか病院で薬を処方されたとき
「薬が出るだけか」と思わないでください。
医師に服薬が必要だと診断されたなら、
それは「飲む必要がある」ということ。
それは、あなた専用の、言わば
「パーソナル服薬リハビリ」です。
服薬コントロールは本当に繊細です。
これは私だけではないと思います。
ほんの1時間、30分、たった1錠の差で、その日のすべてが変わります。
正直、めちゃくちゃ難しい。
そして、試してみるまで結果がわからない服薬には、常に「怖さ」がつきまといます。
私は、幸いにも少しずつコツを掴めてきているのが救いです。
その微調整を繰り返すこと自体が、自分の人生を取り戻すためのリハビリなのです。
薬を飲むことは、停滞ではありません。
そこではじめて、
私たちは本当のスタートラインに立てるのですから。
私は
治療に対して本気で向き合い、
今を変えたいと心から願い、
行動する勇気を持つことができました。
その想いがあったからこそ、
見つかりにくい「ナルコレプシー」という病気に辿り着くことができ、診断を受けることができました。
そして、診断されたことで初めて使える薬を手にし、今、少しずつ体調が良くなっているのを実感しています。
今、私はスタートラインに立ち始めています。
これが、私が医療から学んだ行動力です。
医療から学んだ〜行動力と感謝と尊敬の心〜⑤
へ続く
