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デュエル、自分|クリエイター図鑑

俺は今、人生最大のピンチに直面している。
ライフポイントは、残りわずか。

相手のフィールドには、屈強なモンスターたち。
さらに、正体の分からない伏せカードが二枚。

対して、俺の盤面は空っぽだった。
次のドローで逆転できなければ、負ける。

指が、デッキの一番上に触れた。

そもそも。
この戦いの舞台を用意したのは、営業パパさんだ。

元年収1800万円。

1000人中トップの営業マンから、30代で専業主夫へ転身した人。

そんな人が今回、肩書きではなく、その人の「生態」をカードにする企画を始めた。

その名も、「クリエイター図鑑」。

営業で培った人を見る目が、ついにカードゲームへ到達したらしい。

そして私は、フォロワーのアリゼロさんから指名していただいた。

軽い気持ちで参加した。

まさか、自分のカードで命運を懸けることになるとは知らずに。

※実際のお二人は、
高層ビルから見下ろしてはいません。

俺のデッキには、一枚だけ、この状況をひっくり返せるカードが眠っている。

あのカードさえ引ければ。

空気が止まる。観客が息をのむ。
相手プレイヤーだけが、余裕の姿勢を崩さない。

俺は、デッキの一番上へ指をかけた。

「俺のターン!」

ここで引く。
主人公なら、引ける。

「デスティニードローッッッ!!」


引いたカードを、天高く掲げた。
紫電が走り、まばゆい光が会場を包む。

俺は、ゆっくりとカードを確認した。

「ふっ……」

口角が上がる。

「信じてたぜ、お前を」

No.037。遠地 陸矢。
貯金はないけど、貯筋ならある人。

レア度は……
──星一つ。

俺はカードをデュエルデバイスへ叩きつけた。

「俺は手札から、遠地陸矢を召喚!」



盤面が爆発した。
銀河が渦を巻き、花びらが舞う。

その中心から、メイド服に身を包んだ筋肉質な男が現れた。

盤上へ降り立ったのは、俺ではない。
メイド服を着た、もう一人の俺だった。

両手でハートを作り、大腿四頭筋だけは世界の終わりに備えている。

どう見ても、勝った。

召喚されたメイド遠地は、敵モンスターを見上げた。そして、最初の言葉を発した。

「お前らって、たんぱく質なんぼ?」

相手プレイヤーの動きが止まった。

「第一声がそれか」

「カードに書かれた鳴き声だ」

「モンスターたちを食べるつもりか?」

「たぶん、こいつは本気で食うぞ」

呆れた顔で、相手が聞いた。

「レア度は?」

「星一つ。そのわりに、演出がやかましい」

「攻撃力は?」

俺はカードを確認した。
書いていない。

「守備力は?」

もう一度確認した。
それも書いていない。

「えっと、好物は鶏むね肉、高たんぱく食材、米、読者のスキ……」

「そんなことは聞いていない」

深いため息が返ってきた。

「特殊能力は?」

来た。
このカード最大の強みだ。

俺は胸を張った。

「日常の小さな出来事を、脳内で即座に筋トレかnoteの記事へ変換する!」

「それは、デュエルで何の役に立つ?」

沈黙が流れる。

相手のフィールドに並ぶ巨大モンスターたちも、少し困っているように見えた。

「記事にしている間に、殺されるぞ」

「それでも記事にはなる……」

俺はメイド遠地を指さした。

攻撃力も守備力も分からない。
レア度は星一つ。特殊能力は記事化。

それでも、鍛え上げた大腿四頭筋がある。
筋肉は、すべてを解決する。

知らんけど。

「バトルだ!」

メイド遠地が、低く腰を落とした。

極太の脚に力が入る。
床が震え、観客がざわめく。

あの脚で突進するのか。
拳を叩き込むのか。

それとも、巨大モンスターを持ち上げ、スクワットでも始めるのか。

メイド遠地は、両手を胸の前へ運んだ。
そして、ハートを作った。

「くらえ!!」

「MMM(マジカル・メイド・マッスル)アターーーック!!」


両手で作ったハートから、パステルピンクの筋肉エネルギーが放たれた。

「筋肉使えよ!」
「ビームかよ!」
「ハート飛ばすんかい!」

会場の意見は、満場一致。

ハートのエフェクトが、なぜか大事なところをギリギリで隠している。

そこの防御力だけは高い。

ピンク色の光線が、盤面を一直線に進む。
敵モンスターたちが光に包まれていく。

あと少し。
あと少しで届く。

俺は拳を握りしめた。

「いっけええぇぇぇぇぇ!!!」


決まった。
そう思った瞬間。

伏せられた二枚のカードが、同時に浮かび上がる。

「甘いな。伏せカードを二枚発動」

一枚目。
《それ、見せ筋ですよね?》

二枚目。
《何を目指してるんですか?》

極悪の、冷笑系カード。
しかも、二枚同時。

メイド遠地の脚が止まった。

「見せ筋……」

膝から力が抜けた。

「何を目指してるんですか……」

床に手をついた。
ついでに、お豆腐メンタルも崩壊していた。

「おい!何止まってんだ!」

俺は叫んだ。

「もうワンレップ頑張れって!!!」

メイド遠地は、うなだれたまま動かない。
七年間鍛えてきた筋肉は、二枚の質問に敗北した。

ピンク色の光線は、敵へ届く直前で消滅していく。

相手プレイヤーは笑みを浮かべ、腕を上げる。

「これで終わりだ」

敵モンスターたちの口元に、巨大な光が集まっていく。

俺は盤面を見た。
メイド遠地は、まだ立ち直っていない。

「おい!」

返事はない。

「プロテイン3kg買ってあげるから!!!」

返事はなかった。

巨大な白い光線が放たれる。

「うわああああああああああ!!!!」

星一つのメイド遠地は、銀河を背負ったまま粉砕され、花びらと共に散っていった。

俺も一緒に吹き飛ばされた。

ライフポイントは、ゼロ。
次回を観るまでもなく、負けた。

そして、もう二度と、デュエルスタンバイすることはなかった。

帰宅後、私はノートPCを開いた。

自分自身のカードを引き、メイド服の自分を召喚し、ハートビームを放つ。

最後は、二枚の質問で心を折られ、まとめて消し飛ばされた。

その一部始終が、今こうして記事になっている。

遠地陸矢の特殊能力。

「日常の小さな出来事を、脳内で即座に筋トレかnoteの記事へ変換する」

どうやら、正常に発動していたらしい。
戦闘には、一切役に立たなかったが。

ライフポイントはゼロ。
記事は、一つ増えた。


次のデュエリストへ

ここで、相手プレイヤーの正体を明かしておこう。

俺を完膚なきまでに叩き潰したのは、黒野さんだった。

「やるやる詐欺師」を卒業するため、200日間の投稿に挑み続けている人。

そして、オタマトーンを愛するオタマニストでもある。

私の有料記事も読んでくださり、遠地陸矢のnoteを、「新感覚、読む筋トレ」と呼んでくれた。

電車で読むときは、突然吹き出さないよう、腹筋に力を入れているらしい。

そこまで鍛えているのなら、話は早い。

次は、読む側ではなく。
カードになる側へ。

黒野さん。
次のデュエル、よろしくお願いします。


あわせて読んでほしい

今回の記事で、遠地陸矢を初めて知った方へ。
私の原点になった記事です。

筋肉の話を入口に、人生のいろいろを書いています。

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