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占い師は答えを教えない〜第1話〜アウレリウスタロット誕生

【あらすじ】
主人公・咲和子は、義母の影響で占術を学び、独自の占術『アウレリウスタロット』を生み出した。

それは、未来を当てる占いではない。
自分自身と向き合うための『きっかけ』として
タロット占術を使い、結果のカードの意味を、
マルクス・アウレリウス『自省録』と組み合わせ、相談者が自分自身で答えを見つけられるよう導く占術である。

仕事や夫婦関係、家族、人間関係――。
さまざまな悩みを抱えた相談者と向き合う中で、咲和子自身もまた、人との関わりや人生について学び続けていく。

『タロット×自省録』を通して心を描く、
   お悩み解決ショートストーリー。



占いなんか当たるわけがない。
そう思って生きてきた。

咲和子は結婚して25年、
占術好きの義母に、引っ越しはこの日、方角はこっち、と指示を受け、その通りに行動している。

知識もないから言い返せない。
面倒だし、まあ、別にいいか、と、言うことを聞いていたら、人生右肩上がり。すごい幸せ。
あれれ?
咲和子の経済的安定は占いのおかげなのか?
占いが当たっているということなのか?

どうにも気になって、占術を学び始めた。

さまざまな占術に触れる中、最後に選んだのがタロットだった。今まで全く関わりのない、1番『怪しい』という印象のものを選んだ。

タロットカード占術は、78枚のカードを混ぜて、
相談内容に合った形にカードを置き、それぞれのカードの意味を読む。
元々はミラノの貴族のための遊戯カードで、カードの装飾が絵画仕様で奥深い。
咲和子はいつも眺め、虜になっている。

最古のカードといわれる『ヴィスコンティ版』の華やかな絵柄を眺めていた日、ふと、ある言葉が脳裏をよぎった。かつて、体調不良に心が折れそうになった時の哲人皇帝マルクス・アウレリウス『自省録』の言葉。

『余計な言葉やおこないをつつしめ』
自省録 第3巻5章

原因不明の起き上がれない体調不良の日々。あれもしなければ、これもやってない、と焦れば焦るほど悪化した。その時、自省録の中の『余計なおこないをつつしめ』という言葉に救われ、自分だけを見つめ、健康管理に専念した。そう、咲和子には、この言葉で乗り越えた自慢の過去があった。すっかり忘れていた。

タロットカードを引く。  
意味を見る。  
そして『自省録』を読む。

すると、『自省録』が、カードの示すものを噛み砕いた言葉で説明してくれているように感じる。
心にしみる。

これは大発見だ!
この大発見を悩める人たちに役立てたい!

咲和子は心に決めた。


第1話 THE LOVERS (恋人)

アウレリウスタロット誕生の記念日に咲和子が引いたカードは「THE LOVERS」正の位置だった。

見るからに素敵なカードの印象。アダムとイブの楽園、相思相愛、順調に進む、という、このカードが出たら、非常にラッキーと習った。

一方、
最古のタロットカードと言われるヴィスコンティのカードの絵柄はこちら。

同じ「THE LOVERS恋人」のカードでも、時代背景が違えば、描かれる物語も変わる。
こちらのカードは、目隠しされた天使がインパクト大。アダムとイブのLove♡イメージとは違い、楽しそうではない。決意を感じる。

当時のヨーロッパでは、目隠しをしたキューピッドは「不条理な愛」を象徴し、この絵も政略結婚を描いたものとされている。

咲和子は、このLOVERSカードを、恋愛よりも、責任や約束を果たして築く関係として読む。

しかし
相談者にこのように説明しても伝わりにくいため、ここで奇跡の大発見、咲和子の「アウレリウスタロット」登場である。

自省録 第4巻22章
渦巻に足をさらわれてしまうな。あらゆる衝動において正義の要求するところに添い、あらゆる思念において理解力を堅持せよ。

咲和子は、LOVERSカードが出た際には、自省録から、この一節を贈ることにした。

ただ楽しいだけの関係ではなく、お互いの役割や約束を果たすこと。『好き・嫌い』だけでなく、自身に責任、覚悟を持ち、約束を守り、信頼関係を築くこと、と解釈し、LOVERSカードにぴったり!と、ひとり頷く。
これって理想の結婚よねえ。

また忘れるところだった。
これは、咲和子が『アウレリウスタロット記念』に引いた、自分のためのカードだ。

『看板掲げて占いやるのはいいけれど、ルールに則り、約束は守ること』とカードは伝えている。

咲和子は店先に立った。
白い紙に、ゆっくりと文字を書く。

『アウレリウスタロット』
タロットカードと自省録で
心の整理をお手伝いします。

この看板が、数えきれない人生との出会いを連れてくることを、咲和子はまだ知らない。




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