【第三話】アサシン・スパイダー【漫画原作】
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本文 三話シナリオ
○病院・紡の病室内
・ベッドの上で目を覚ます紡(二話の冒頭と同じ画角)。
紡「………………」
・起き上がり部屋の鏡を見る。いつも通りの顔。
紡「夢――……」
真宵「じゃないよ」
・突然背後から聞こえた声に驚く紡。振り返ると真宵の姿が。
紡「あ、阿黒さん……?」
真宵「おはよう。体調はどうかな? 体に違和感はないかい?」
・言いながら、紡の体にペタペタ触れる真宵。顔を赤くして照れる紡。
紡「あ、いや、大丈夫です……!」
真宵「本当かい? もう少しよく見せてもらっても――」
・ドサッ! と言う音がドアの方から聞こえる。見ると、顔を赤くした茜が立っている(音は持っていた荷物を落とした音)。
茜「な……なにして……ッ!?」
紡「待て待てッ!? なんかとんでもない誤解をしてねーか!?」
ーー 時間経過 ーー
・病室内。ベッドの上に寝ている紡と、ベッド横に座っている真宵と茜。
紡「阿黒さん、夢じゃない、ってどういう意味ですか?」
真宵「昨夜なにがあったのか、君の体に起きた異変、その全てに答えよう。だが――」
・隣に座る茜を見る真宵。
真宵「――悪いが、ここからは極秘情報でね」
茜「あ……」
・察した茜が椅子から立ち上がる。
紡「いや、いてくれ茜」
茜「!! 紡……」
・真宵の目を見つめる紡。その目を見返す真宵。
真宵「……まぁ、いいだろう。くれぐれも口外しないように」
・頷く茜。
真宵「さて、最初に一つ訂正しておかなければ。私は医者だと言ったが、正しい肩書きは『WASP研究チーム バイオテクノロジー部門最高責任者』だ」
紡「! WASPの関係者だったんですか……!?」
真宵「ああ。私はアラクネの脅威に対抗するため『生体兵器』の研究を極秘に行っていた」
茜「生体兵器……?」
真宵「アラクネに対抗できる『人間』を造り出す研究さ。そしてあるとき、私の研究は一つの答えに到達した」
真宵「『特定節足動物遺伝子情報組込み及び体細胞活性変態手術』――通称『スパイバー手術』。この術式を受けた人間は強靭な肉体と超人的な反射神経、そしてベースとなったクモの特徴的な能力を得る」
・やや混乱気味の紡と茜。
真宵「簡単に言えば――人間にクモの力を与える手術、といったところか」
紡「……!! スパイダーマンを生み出して、アラクネと戦わせようってことですか?」
・椅子から立ち上がり、興奮したように言う真宵。
真宵「その通り! 目には目を! 歯には歯を! 『アラクネ』には『クモ』を!!」
・唖然とした様子の紡と茜。
真宵「……が、この『スパイバー手術』は成功率が極めて低くてね。君を含めて三人しか成功例がないというのが現状だ」
紡「君を含めて……?」
・ゾッとしたような表情の茜。
真宵「――もうわかっただろう。私と君がアラクネに襲われた日、君は本来なら助からない重傷を負っていた。私は君の命を救うため、一か八かこの術式を施すことを決断したんだ」
紡「!!」
真宵「そして、手術は成功した。君は一命を取り留めると同時に、ベースとなった『アゴダチグモ』の力を得たんだ」
・驚愕の表情を浮かべる紡と茜。真宵がタブレット端末を取り出す。
真宵「昨夜の映像は全て記録してある」
・タブレット端末に、異形の姿へと変身する紡の姿や、アラクネと戦っている紡の姿が映し出される。
紡「これが……俺……?」
・唖然とした表情で呟く紡。同じく唖然とタブレット端末を見つめている茜。
真宵「現場のアラクネを殲滅した君はその場から逃走――その数分後に変身が解けて意識を失った」
・映像の中でボロボロと変身が解け、路地に倒れこむ紡の姿。
真宵「倒れていた君を私が保護――この病院まで運んだ、というのが昨夜あったことのすべてさ」
・映像を凝視したまま、まだ真実を受け入れられない紡。お構いなしに話を続ける真宵。
真宵「『スパイバー手術』は不可逆な術式。残念だが、君を今すぐ元に戻してあげることはできない」
紡「………………」
真宵「そこで紡くん。君には隊員として『WASP』に加わって欲しいと思っている」
紡「! 俺がWASPに……?」
・驚きの表情で真宵を見つめる紡。
真宵「ああ。君はアラクネに対抗するための貴重な戦力だ。ぜひ我々に協力――」
・パン! という音が病室内に響き渡る。
・それは、茜が真宵の頬をビンタした音だった。
茜「――ふざけないで」
・目に涙を浮かべ、怒りに震えている茜。
茜「勝手に紡の身体を改造しておいて、次に言うことがアラクネと戦え? なんなのよ、それ……!」
紡「茜……」
・真宵を睨みつけ、大声で怒鳴る茜。
茜「――紡をバケモノにしておいて!! 勝手なことばっかり言わないでよ!!」
紡「――!!」
・一瞬、凍りついたような表情の紡。走って病室を出ていく茜。
・真宵が内胸ポケットの無線機のスイッチを入れ、部下に命令を出す。
真宵「今病室から出て行った少女を確保――」
紡「……大丈夫ですよ」
・紡を見る真宵。
紡「茜は感情に任せて秘密を喋るようなヤツじゃないです」
・半信半疑ながらも紡の言葉を信じた真宵。命令を撤回する。
真宵「……勝手なことを言っていると理解はしている。同意も得ず君に手術を施したことも――」
紡「俺、WASPに入りますよ」
真宵「!」
・即決した紡に驚きの表情を向ける真宵。
紡「突然のことだらけで……まだ頭が追いついてないけど……一つ、確かなことがある」
・自分の手のひらを見つめる紡。
紡「この力があれば……みんなを守れるかもしれない」
紡(……それに俺はもう、茜のそばにはいられない)
・一コマ回想 バケモノ、と言った瞬間の茜の表情のコマ。
紡(だったら――離れたとしても、俺は茜を守れる道を選びたい)
・拳をグッと握りしめる紡。覚悟を決めた表情で静かに呟く。
紡「……待ってろよ、解」
○WASP本拠地・隊員寮・解の部屋
ナレーション『WASP本拠地敷地内 隊員寮1号館』
・WASP本拠地の敷地内にある、隊員が暮らす寮。その一室、解と先輩の相部屋。二段ベッドなどがあり、一目で相部屋だと分かる構造。
・部屋には複数の段ボール箱が置かれており、先輩が部屋に散らばった荷物を段ボール箱へとしまい込んでいる。
先輩「しっかし、ついに解も隊長かぁ。一人部屋になるからって、寂しくて眠れない、なんてことねぇようにな!」
・振り返って怒鳴る先輩。
先輩「――って解! お前ちゃんと荷造りしろよ! さっきから俺しかやってねーぞ!」
・その視線の先には椅子に座ったままスマホをいじっている青年――解の姿が。
解「――え、なんです? 先輩」
ナレーション『WASP第8支部隊 隊長 蜂矢 解(はちや かい)』
・解の持つスマホには茜から送られてきたメッセージが映っている。
・メッセージの内容は、『隊長昇格おめでとう! 紡もおめでとう、って言ってたよ』。
・無表情でそのメッセージを見ている解。
先輩「聞いてねぇし! 手伝ってやってんだからさっさと荷物まとめろっつーの!」
解「いて」
・ペシ、と頭を叩かれる解。スマホをポケットにしまい、立ち上がって荷造りを始める。
・ふと、解の机を片付けていた先輩が、机上に写真立てが置かれていることに気が付く。
先輩「解。これ、お前の友達?」
・写真立てには、紡、解、茜の三人の幼い頃の姿を収めた写真が入っている。
解「いえ――家族、です」
・写真立てを手に取る解。笑顔でピースサインをしている紡をじっと見つめる。
解「……『おめでとう』じゃないだろ……」
先輩「ん? なんか言ったか?」
解「……いえ、なにも」
・コト、と写真立てを机に戻す解。再び荷造りへと戻る。
○街中
ナレーション『一週間後』
・廃ビルのような、ボロボロのビルの前に立っている私服姿の紡。
紡「……ここであってるよな?」
・手元のメモを見ながら呟く紡。
○(回想)病院・紡の病室内
・紡の病室。ベッドに寝ている紡とベッド横に座っている真宵。
真宵「『スパイバー手術』のことを知っているのはWASP内でも極めて少数だ。隊員の前でも、おいそれと変身してはいけないよ」
紡「はぁ……」
紡(変身って、どうやったのかわかんねーけど……)
真宵「これからWASPの隊員として活動していく上で、君は自分に備わった『力』を使いこなせるようにならなければいけない」
・メモ用紙を取り出し、そこにペンを走らせる真宵。
真宵「怪我が完治したら、この場所に行くんだ。そこで『力』の使い方を教わるといい。話は私が通しておこう」
・紡にメモを差し出す真宵。
・(回想終わり)
○街中・ビル・階段
・廃ビルの階段を上がっていく紡。メモに記された部屋へと到着する。ドアノブを回すと鍵はかかっていない。部屋へと足を踏み入れる紡。
・そこは部屋ではなく。ワンフロアぶち抜きの巨大な空間。コンクリート打ちっぱなしの壁に、瓦礫の散らばった床。
紡「……今更、全部ドッキリでした、とかないよな……?」
・呆れたような表情で呟く紡。
・ふと横を見ると、壁にくっつけて置かれた机の上にコーヒーが置いてある。コーヒーからは湯気が出ている。
紡(……コーヒー?)
・コーヒーに手を伸ばす紡。
・次の瞬間、暗がりから手錠が飛んできて、ジャキン! と紡の手を壁に走るパイプと繋いでしまう。
紡「いっ!?」
・次々と手錠が飛んできて、手、足、首を固定され動けなくなる紡。
???「おいおい、この程度も躱せないってマジか……」
・奥の暗がりから、顔に無精髭を生やした長身の男が現れる。片手で手錠をくるくると回している。
紡「だ、誰……?」
網師本「網師本司。被験体2号。SMは『ナゲナワグモ』」
・紡の顔を至近距離で覗き込む網師本。
網師本「簡単に言えば――オマエの先輩だよ。バケモン」
・パキキ……と片目が黒くなる網師本の顔のカット。
続く
