壜詰めの秘密 │ ショートショート #噂話製粉所
ぷか、ぷかり。
母の薬を買った帰り道。水路を流れてきたのは小壜だった。
掬い上げて日にかざす。中にはきらきらした銀色の。
「粉……?」
ピートは蓋を開けた。
ふわり。中身が飛び散る。風に溶けていく。
『満月の夜、森でシェリーの花が咲くらしい』
耳元で囁くような声。振り返っても、誰も居ない。
銀の月が、清かにシェリーの木を照らしていた。
りりり、り。
白い花が鈴のような音を鳴らしながら咲き、そして散った。
ぼとぼとと銀の実が散らばる。
100年に1度しか咲かぬシェリーの花。希少な実を売り、母は健康になった。
ぷか、ぷかり。ふわり。
ぷか、ぷかり。ふわり。
物知りピートの前に、今日も行列ができる。
「その病にはギロリの蜜がいいらしい」
窶れた女は涙を流して銀貨を渡した。
本当はチロリの蜜なのだ。ピートは嗤う。
ぷか、ぷかり。ふわり。
『フモル山に紅玉が埋まっているらしい。目印は赤い星模様のきのこ』
森の奥でピートは足をすべらせた。そして。
「消えたらしい」
(410字)
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