『壜詰めの秘密』答え合わせ&メイキングのひみつ
この記事では、2つのお話をしています。
1.先日公開したショートショート『壜詰めの秘密』の答え合わせ(無料)
2.『壜詰めの秘密』メイキングで伝えるわたしなりの小説のつくりかた(有料)
▼公募用の中長編がんばって燃え尽きたので、今月はショートショートや漫画の習作と、自己分析をがんばっています。
答え合わせ編
小説の引用と、漫画にしたものを併用しながら答え合わせをしていきます。
▼最初に通しで読みたい方はこちらへ。
1.起
ぷか、ぷかり。
母の薬を買った帰り道。水路を流れてきたのは小壜だった。
掬い上げて日にかざす。中にはきらきらした銀色の。
「粉……?」
ピートは蓋を開けた。
ふわり。中身が飛び散る。風に溶けていく。
『満月の夜、森でシェリーの花が咲くらしい』
耳元で囁くような声。振り返っても、誰も居ない。

たらはかにさんの「毎週ショートショート」という企画に参加したくて書いたものです。お題は『噂話製粉所』でした。
わたしが考えたのは『噂を撒く粉』です。
この部分で覚えておいてもらいたいのは3つ。
1.「ぷか、ぷかり」
2.「ふわり」
3.銀色の粉
2.承
銀の月が、清かにシェリーの木を照らしていた。
りりり、り。
白い花が鈴のような音を鳴らしながら咲き、そして散った。
ぼとぼとと銀の実が散らばる。
100年に1度しか咲かぬシェリーの花。希少な実を売り、母は健康になった。
ぷか、ぷかり。ふわり。
ぷか、ぷかり。ふわり。



ここでも「銀」というワードを多用しています。
銀の月
りりり、り
鈴のような音
銀の実
「鈴」も「銀」を連想させそうだなと思い、この仲間に入れました。
ピートは、病気の母を持つ少年です。母のために働きながら薬を買っていたけれど、もうお金がない。そんなとき、水路を流れてきた小壜を見つけました。
壜の中には銀色の粉が入っている。誘われるように蓋を開けると、粉がふわりと舞い散って、声が聞こえた。
その声のとおりに行動した結果、ピートは、希少な実を手に入れて、ずっしりと銀貨が入った袋と交換してもらい、母は完治します。
続いて出てくるこのフレーズ。
ぷか、ぷかり。ふわり。
ぷか、ぷかり。ふわり。
ピートがたくさんの壜を手に入れて、うわさ話を入手したことを表しています。410文字に収めるためにどうしよう、と考えた結果、こんな方法にしてみました。
目の色、背景の色に注目
漫画は基本的にモノクロで描いてあるけれど、ところどころ色が出てきます。
この色には意味を持たせています。
3.転
物知りピートの前に、今日も行列ができる。
「その病にはギロリの蜜がいいらしい」
窶れた女は涙を流して銀貨を渡した。
本当はチロリの蜜なのだ。ピートは嗤う。

たくさんの”うわさ話”を入手したピートは、集めた情報を使って商売をはじめました。人々の困りごとを聞き、解決策があれば提案します。
実際には、はなしを聞いてもらえるだけで満足する人も多いので、ピートはどんどんお金を儲けていきます。貧しくても母を支えていたはずの純朴な少年は、店を構え、身なりに気を使うようになり、すこしずつ変化していきました。
少し時が経ったのがこのシーンです。かつての母と同じように病で苦しんでいる女性の相談。
本当は”うわさ”を知っているのに、答えを教えて完治するともう来てくれない。儲けられない。だからピートは嘘をつきます。真っ赤な嘘です。
富を得たピートが、少しずつ傲慢になり、ついに一線を越えた部分を描きました。
この物語の中で「赤」は「嘘・罪・罰」を指します。漫画のほうではわかりやすく色をつけてみました。
反対に「銀」はイラストになるとわかりにくいので、代わりに「青」。これは「善良であること」と「助け」を指しています。
そして、漫画のなかで「紫」の背景があります。
これは、善良から嘘つきに変化していくゆらぎをイメージしてみました。
4.結
ぷか、ぷかり。ふわり。
『フモル山に紅玉が埋まっているらしい。目印は赤い星模様のきのこ』
森の奥でピートは足をすべらせた。そして。
「消えたらしい」


ぷか、ぷかり。ふわり。
これまでと同じく、ピートがうわさ話を入手したことを意味するフレーズ。
『フモル山に紅玉が埋まっているらしい。目印は赤い星模様のきのこ』
「嘘・罪・罰」を表すワード(赤いもの)が2つ。
これは”ピート”を罰するための罠です。
すこし話は逸れるんですが、わたし、いわゆる「洒落怖」と呼ばれるジャンルが好きなんです。
「洒落にならないくらい怖い話」の略です。たぶん掲示板かなんかでむかし流行っていたもので、リアルタイムではなくそのまとめが出たときに読んでいました。
怖い話にもいろんなジャンルがあるんですが、個人的な好みでいうと「神さま系」です。
人間が太刀打ちできない、大いなる存在みたいなものの怖い話って、童話的な雰囲気と、醜悪さと畏怖と、いろんなものが濃縮されているような感じがして読んでいて興味深いんですよね。
今回のピートのはなしも、そもそもどうして「噂をばらまく粉」が水路を流れてくるのか? ということになると思うんです。
その犯人は、やっぱり「人間が太刀打ちできない、大いなる存在」だと思いました。
この話では妖精・精霊をイメージしたのだけれど、じゃあ、どうしてピートを助けたり罰したりしたのだろう。
ピートが幼いながらも病の母を支える様子が気に入った→祝福
こういう図式を考えました。
けれどもそれなら、ピートが悪人になってしまったら、祝福は取り上げられるのでは。そういうわけで、終盤につながっていきます。
洒落怖のはなしをしたけれど、ここではもう一つイメージしたものがあります。童話です。
グリム童話なんかも、じつは結構怖い話だったりしますよね。童話にはなにか教訓が含まれている。怖さもある。
ここでの教訓はふたつ。
1.うわさ話が本当だとは限らない
2.嘘をついてはいけない
「うわさ話」だから、小壜から聞こえてきた声は、すべて最後に”らしい”とつけてあります。本当とは限らないし、誰がソースなのかもわかりません。
でもピートは、一度成功したからと、その不確かなものを売ってしまった。さらには内容を故意に改変した。
だから、妖精の怒りを買った設定です。
うわさの書き方は、じつは変えています。
漫画のほうでは「点線?みたいなふきだし」と「丸ふきだし」
小説のほうでは『』と「」
それぞれ『』→壜から聞こえてきたうわさ、「」→生身の人間がしているうわさ。
じつはラストも「うわさ話」です。
つまり、「消えたらしい」けど、具体的にどうなったのかは定かではない。自由に解釈できるようにしてみました。
ピートは足をすべらせて落ちて、儚くなってしまったのか。
怪我をしたけど助かるのか。
あるいは妖精に連れ去られてしまう。
頭を打って記憶をなくし、善人に戻る……などなど。
どれですか?
お題「噂話製粉所」から生まれたショートショート『壜詰めの秘密』は、こんな背景のあるおはなしでした。
短くぎゅっと凝縮するのってすごくむずかしくて、でも楽しかったです。
読んでくださってありがとうございました。
↓ここからは、わたしがどんなふうにしてこの物語を書いたのか、書き方で工夫したことをお話ししてみよう思います。長年蓄積したものと、試せるような書き方をしているので、有料パートになっています。
▼物語ごとにメイキングと答え合わせを入れた記事をたまに書こうかなと思っています。
メイキングを2つ以上読む場合、マガジン購入のほうが100円お得です。
上のような答え合わせだけ読みたい場合、この記事のように無料で読むことができます。
『壜詰めの秘密』メイキングのひみつ
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