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予知夢の死角─第4幕 【ミステリー小説部門】(4/4)



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1.カクテル


「好き」という言葉を渇望していた。もしもそれさえもらえたら、夕璃子はきっと安心して心のすべてを慧介に預けられた。

 慧介との名前のない関係がはじまってから、強い感情の狭間で動けなくなることが増えた。片方は、ずっと好きだった人と一緒にいられる、打ち震えるような幸せ。そしてもう片方は、ふたたび彼と離れてしまう恐怖。慧介の気持ちがわからないから不安だった。

 そうなってみて初めて、自分が恋人たちにどれほど残酷なことをしてきたのかを知った。

 告白をしてくれたのは、彼らのほうだった。好ましく思っていたからそれに頷いた。でも、夕璃子は自分から「好きだ」と伝えたことはなかった。

 夕璃子が一人目の彼氏に振られたのは、記念日デートを当日にキャンセルしたからだった。次に付き合った人からは、身体の関係を持とうとしないことを責められて、別れた。──今思うと、好きの種類が違ったのだと思う。

    恋愛感情ではなかったのだ。
    慧介と過ごすようになってはじめて気がついた。恋というのは、もっと穏やかなものだと思っていた。そして、彼らとの別れは、何度思い出してみても、別段悲しくはなかった。一人目の彼を思い出すとほんの少しの悲しさを、二人目の彼には少しの失望と悔しさを覚えるだけ。

 だからこそ、慧介が明確な言葉を──「付き合おう」という区切りの言葉さえも──口にしないのは、かつての自分と同じように恋愛感情を持っていないからなのではと思えて不安になった。
    どうしたら彼からその言葉を引き出せるのか。そればかりを考えるようになり、一人で過ごす夜は眠れなくなった。


 バーに通いはじめたのは、いても立ってもいられなくなり、外に飛び出したのがきっかけだった。
 バイト先の先輩が一度連れて行ってくれたのだ。そこは夕璃子の家から十分ほど歩いた大通りに位置し、古いビルの三階にあったが、内装はリフォームされて綺麗な建物だった。北側に大きく取られた窓からは、夜の道路と街灯が美しく見えた。

 バーテンダーが学生バイトばかりだからか、カクテルが財布に優しい価格で、何杯か飲める余裕があった。そこでほろ酔いになるまで飲んでから家に帰ると、いつの間にか意識を失う。

 客層は若かった。同じ大学の人は少なかったが、同世代の顔見知りが増えたのは嬉しかった。ただ、そこでの夕璃子は異質だったと思う。来ている女性のほとんどが、地味な夕璃子とは正反対だったからだ。それでも、お酒の力を借りれば、普段は話さない、自分とは違うタイプの人たちとも打ち解けられた。それは楽しかったし、他愛もない話をして過ごすのも悪くはなかった。

 仲良くなったうちの一人が、浦滝さんという男性だった。他大の文学部の学生で、色白で線が細く、中性的な外見をしていた。大学では隠しているというが、心は女性だった。

 彼はオカルト好きで、夕璃子がよく見ているネットの掲示板を教えてくれたのも浦滝さんだった。連絡先を交換することはなかったが、お互いを見つけると必ず一緒に飲むくらいには仲良くなった。
 そして、飲みながら一緒に掲示板に投稿された怖い話や不思議な話を読み、感想を言い合うのにはわくわくした。

「恋心って厄介よね。切り取って捨てられたらいいのにって思うの」

 彼が頼むのは、いつも甘い酒ばかりだった。カルーアミルクにカシスオレンジ、ピーチフィズ……。一方の夕璃子は、辛い酒ばかりを頼んでいた。

 浦滝さんはあまり強くない。10杯くらいまでは表情も態度も変えずに軽く飲める夕璃子とは違い、2杯ほど飲むと頬が上気し、瞳がとろりとなってくる。そして、お酒が回ってくると、彼は意図せず女性らしい言葉遣いに変わってしまう。
 だから、大学の友人の前では決して酒を飲まないのだと言っていた。



 東久世あやみの口から「みっともない人」という言葉がこぼれたあの日。夕璃子はどうにもやるせなくて、慧介に会おうとメールをした。事情を話すつもりはなかったけれど、ただ、抱きしめてほしいと思った。
 だが、彼はサークルの飲み会があって、会うことができなかった。

 行けないと返信が来たときには、二人分の夕食を作り終えていた。きのこがたっぷり入った煮込みハンバーグに、人参のバターグラッセ、ゆでたブロッコリーと野菜スープだ。慧介の分を保存容器に移して、テレビも音楽もかけない部屋で、一人もくもくと食べた。
 銭湯に行こうか悩んだが、バーのほうに足が向いた。



「ゆりちゃん、見てみて! あの掲示板にね、縁切りのジンクスがある喫茶店が載ってたのよ。これって山の上の喫茶店じゃないかしら」

 そう言って、浦滝さんが夕璃子に見せた文章を読む。以前、連休中に慧介が連れ出してくれた喫茶店によく似ていた。二人で過ごすのは、いつもどちらかの家で、あのときはまるでデートだ!と浮足立ったのを思い出した。

「悲しみも縁も溶けてなくなる、か──。これが本当だったら、どんなに楽になれるでしょうね」

 浦滝さんがしみじみと言ったその言葉は、夕璃子の胸にいつまでも残っていた。




2.岡崎勇貴の誤算


 岡崎勇貴は、女には不自由したことがなかった。
   自分の容姿の良さを彼はよく知っていたし、頭の回転も悪くはなかった。息をするように演じることも嘘をつくこともできた。そうすれば、人間関係は円滑に回っていく。また、実家は地元でも有名な会社を経営していて、成績も子どものころからトップだった。

   そうしたものに惹かれて、彼に近づいてくるのは、自分に自信のある傲慢な女ばかりだった。そして、そうした性質の女にはひどく苛立ちを覚えた。母親に似ていたからだ。

 彼は、慎ましく、それでいて芯のある女を好ましく思っていた。そういう相手を見つけて付き合ってみるものの、彼というパートナーを得ると、皆が豹変した。彼に寄ってくる女たちと同じように。

 それならば、自分好みに磨き上げていくのはどうだろう。そう思い、家庭教師のバイトをしながら相手を物色した。
    そして、顔立ちは悪くないものの、醜く太り、自分に自信がない女を見つけた。

 どうしたら彼女を変えられるのか。それを考えるのは意外と楽しかった。彼女の体重が落ちていくたびに達成感もあった。見た目が変わるたびに彼女は明るくなり、自信を得て行った。
    そしてそれは、他の女たちとは違い、勇貴というアクセサリーを得たことによる自信ではなく、自分自身を認めていくというものだった。そして彼女は、付き合ったあとに豹変することもなかった。

 だが、あるとき、唐突に「なにかが違う」と思ったのだ。岡崎は彼女に別れを告げた。



 ふいに虚しくなった。苛立ちを覚えた。誰かを壊してしまいたい。そんな衝動に駆られたが、そのためには計画が必要だった。
    そこで、彼は適当な相手を物色することにした。手始めにしたのが、一人暮らしだ。大学から家が近いので毎日通学していたが、親にねだるとすぐにマンションを契約してくれた。

 目をつけたのはバーだった。仄暗いから顔も覚えられにくいし、こちらのこともあまり詮索されない。都合が良かった。
   普段はかけない眼鏡を用意して、前髪を下ろす。目立たないように意識しながら女たちを眺めた。夜のバーには派手な女が多く、香水のにおいに辟易した。夜毎にいくつかのバーを回っているうちに、気になる女を見つけた。

 その女はちぐはぐで危うかった。
 顔立ちは綺麗なのに、化粧っ気がほとんどなく、自信がなさげだった。清楚な印象を受けるのに無防備で、無防備に見えるのに実際には隙がない。気弱そうな外見とは裏腹に、話の端々から頑固さがうかがえた。そのアンバランスさに興味を引かれた。

 彼女はたいてい、ある男と一緒に飲んでいた。女のような口調で話すその男に、ずいぶん気を許しているように見えた。勇貴は二人の会話がぎりぎり聞こえる距離で飲むようになった。

 ──どうしたらあの女を壊せるだろう? 勇貴は考えてみた。この眼鏡を外して、人当たりよく話しかけてみたらどうだろう。そうも思ったけれど、人の印象に残るのは避けたい。

 やがて、二人がオカルト系の掲示板を好んで読んでいることを知った。彼女には曖昧な関係の男がいて、これからどうするかを悩んでいることも。勇貴はほくそ笑んだ。これを利用すれば絡め取れそうだ。もっと簡単な方法はいくらでもある。でも、彼にとってこれはゲームだった。

 勇貴が罠について考えを巡らせているころ、絶好のチャンスが訪れた。サークルの先輩で、今は喫茶店のマスターをしている人から、店の管理を頼まれたのだ。一年ほど海外に行くらしく、その間、たまに店の換気や掃除をしてほしいと。

 こうして、材料は揃った。




「明日、山の上の喫茶店に行ってみようと思うんです」

 その晩、彼女は、モスコミュールの入ったグラスを片手にそう言った。心なしか、少し窶れたような気がする。男が心配そうに「あたしも付いていこうか?」と尋ねるので、思わず舌打ちをしそうになった。彼女は首を振る。

「大丈夫ですよ。明日は一限までだから、それからバスに乗って行こうと思うんです。明るい時間ですしね」

 一限が終わり、彼女が正門へ向かうのを見届けたあと、近くのパーキングに駐めておいた車に乗った。バスの後をついていく。借りた店は餌だ。下見をしてあり、視界は開けているが人通りがほとんどないことも、途中の道にいくつか死角になる場所があることもわかっていた。いくつかパターンを考えておき、当日の彼女の動きに合わせて選ぶつもりだった。
    それにしても、一番楽なパターンになりそうだ。あの女はどうして、この路線を選んだのだろうか。山向こうのバス停で降りる人はほとんどおらず、バスはすいすいと進んでいく。

 追い越さないようにしたかったので、途中で一度車を停めた。そして、あらかじめ盗んであった県外ナンバーのプレートに付け替えた。

「もし……」

 しわがれた声が後ろから聞こえて、勇貴は飛び上がりそうになった。振り返ると黒ずくめの服をまとった小柄な老婆だった。

「道に迷ってしまったんだ。先に進もうか、ここで待とうか悩んでいてね。どっちがいいと思う?」

 勇貴は舌打ちをしながら「俺には関係ないね」と言った。

「ここで待っていたって何もならんだろう。先に進めばいい」

 すると老婆はにたりと笑った。

「──そうか、それがあんたの選択なんだね」

 その後は予定が狂ってばかりだった。
 待ち伏せをしていた場所に現れたあの女は一人じゃなかった。彼女を庇うように支える女は、ちらりとこちらを見た。サングラスをしていたから顔はわからないだろうが、勇貴は焦りを覚えた。

 そして、賭けてみることにした。先回りして、店の裏に車を隠す。開店できるように準備をして、あの女を迎える。カーテンを閉め、連れ合いの女が居なくなるのを見計らってから彼女を迎え入れた。
 次の誤算はオーダーだった。実際に注文されるとは思っていなかったのだ。店に来ることはプランになかった。今しかない。勇貴は厨房にこもって準備をはじめた──。

 彼女に正体がばれた。

「バーにいた……」

   咄嗟に口を塞ごうとしたときだった。



「──勇貴くん……?」

 懐かしい声と、夕方の赤い光が飛び込んできたのは。




3.エピローグ 予感


 あの誘拐未遂から数年が経った。
    夕璃子は、今朝、名前を変えた。

 夕璃子は教会の外に立っていた。パイプオルガンと賛美歌の音に混じって、強い海風がベールをはたはたと揺らす音だけが響いていた。
 

 やけに静かだと思い、夕璃子が隣を見上げると、シルバーのタキシードを着た慧介は、緊張で強張った顔をしていた。眉根が寄って、深い溝を作っている。
    夕璃子はくすりと笑って、その背中にそっと手を添えた。彼は、はっと我に返り、それから甘やかな笑顔をこちらに向けた。そして、開かれた扉の向こうに呼ばれて、消えていった。


 夕璃子の出番はまだ来ない。
   思わず小さなあくびをする彼女を見て、隣に立った父は苦笑した。今朝は区役所に行くところから始まり、事故で電車が動かず、式場へタクシーで乗りつけ、──激動の一日だった。でも今日からやっと「森島夕璃子」だ。字面が綺麗。女優みたいな名前で気に入っている。

「ご新婦さま、ご入場ください」

 プランナーが小声で耳打ちする。開かれた扉の中へ、しずしずと進んでいく。プランナーには、ドレスを蹴り上げるように進むように言われたが、本当にこれで優雅に見えるのだろうか。夕璃子は微笑を貼り付けながら、少し不安に思った。

 懐かしい面々が見えた。
   バーで仲良くなった浦滝さんに、山道で助けてくれたおばさん、ブライズメイドの揃いのドレスに身を包んだ秋奈とあやみ。──目まぐるしくいろいろなことが変わった数年間だった。




 夕璃子を攫おうとしていたのは、秋奈の昔の恋人だった。
   それは本当に偶然だったらしく、秋奈が現れたことに犯人のほうが取り乱していたそうだ。彼は同じ大学の先輩だったが、キャンパスは違う。だから秋奈と夕璃子が親しいことにも気がつかなかったらしい。

 どうして夕璃子が目をつけられたのかは、結局わからなかった。でも、バーで浦滝さんとの会話を聞かれていて、それで計画が立てられたことを警察に告げられ、ぞっとした。
    あの書き込みまでもが、夕璃子を誘い込む罠だったのだ。


 あれからしばらくは、秋奈とぎくしゃくしてしまった。彼女のほうが気に病んでしまったのだ。なんの責任もないのに──。
    何年もかけて、元通りとはいかないものの、親しくできるようになった。でも、今になって思うことがある。あの人は、本当は秋奈のことが好きだったのではないだろうか。

    なにかが違えば、きっと結末は変わっていた。そう思えてならない。



 もっとも予想できなかったのは、東久世あやみと親友になったことだ。
 助けてくれたおばさんが彼女の祖母で、あやみからのメールがなければ危なかったことを知ったときは、本当に驚いた。感謝もした。それがきっかけで、大学で少しずつ話すようになった。意外とうまが合い、学外でも会うようになった。

    そして、友人として付き合ってみると、あやみは実にストイックで魅力的な女性だった。みっともないと言われたのも、彼女の陰の努力を知ったらなんだか納得してしまった。

 傷ついたのは確かなので、そのことは、はっきりと伝えた。あやみは顔を青くしたり赤くしたりしていて、華やかな美女のそうした様子がなんだか可笑しくて、夕璃子はそれだけで少し彼女を許せてしまった。



 学生時代は化粧っ気がなかった夕璃子だが、秋奈やあやみにメイクを教えてもらってから、すっかりその魅力に取り憑かれた。少し手を加えるだけで顔の印象が大きく変わる。いろいろな顔になれる。それは楽しくて新鮮な発見だった。

 大学を出たあとは上京して、イメージコンサルタントになった。イメージコンサルタントというのは、骨格や肌の色などから、似合うものや似合わないものを診断して、ファッションやメイクに取り入れていくアドバイスをする仕事だ。

 自分にはできない、向いていないと、容姿に関することをはなから諦めていたけれど、知ってみると面白かったし、見た目が変わると自信が持てた。
   大学三年のころ、貯めたバイト代で講習を受けて資格をとり、上京一年目でサロンを開くことができた。大学で学んだこととは関係がなかったので、父とは一度険悪にもなったけれど、今は認めてくれている。

 夕璃子は、かつての自分のように、容姿にコンプレックスがある人に向けたサービスを展開している。SNSで宣伝や集客もできる時代であるのも幸いして、起業二年目にして好評を得ている。

 慧介は今年大学を卒業した。そして、夕璃子を追いかけるように東京に出てきた。案外ストイックなところのある彼は、こつこつと就活を続けて、大企業に入社した。そして、それをきっかけに同棲を始めた。

 二十歳のときに感じていた切なさも不安も、すっかり消えた。


    激しく身を焦がすような恋心も、実は消えてしまった。パチンとしゃぼん玉が弾けるように。でも、それは決して悪いことではないと思えた。二人の間に残ったのは、ただ穏やかな愛情だけだった。



 挙式を終えて、教会を出ると、鈍色の雲に覆われた夕空が広がっていた。夕璃子がひゅっと息を飲むと、慧介が背中にそっと手を添えてくれた。──事件のことは、今でもたまに夢に見る。息苦しくなって叫びながら目を覚ますと、眠そうな目をした慧介が抱き寄せてくれる。それでも、しばらくは涙が止まらない。

 



 あの日、厨房であの男性がしようとしていることに気づいたとき。恐怖に身はすくみ、逃げ出したいのに撃ち抜かれたように足が動かなかった。
   それでいて身体はどんどん重くなり、気を抜くと瞼が閉じてしまいそうだった。出された水に薬が入っていたのだろう。
 目尻から涙の雫がほろり、とこぼれたときだった。

「──勇貴くん!」

 秋奈の声がした。
 次の瞬間、身体を強く後ろに引かれ、硬い腕に抱きとめられていた。いつも彼がしていた香水のにおいがなかったので、はじめは戸惑い、身が強張った。でも、耳元で、ずっと聞きたかった声が名前を呼んだ。目頭が熱くなり、視界が真っ白に滲んだ。

   胸の前に回された腕を、夕璃子も強く抱きしめた。




 慧介とは、事件のあと、夜通し話し合った。そして、互いの認識に大きな食い違いがあったことを知った。

「佐藤先生に言われてたのにね。ちゃんと伝えるようにって」
「──悪かった。俺の中では、……その、告白をしたつもりだったんだ」
「私は、ひとこと、好きって言ってほしかった。付き合ってほしいでも良かったの。わかりにくいよ」

 そう言って夕璃子は、慧介の頭を小突いた。

「でも、ごめん。私も自分からは言い出せなかったの。言ったら終わりのような気がしたし、慧介に望まれているんだって、実感したかった。くだらないプライドでしょう」

 夕璃子は自嘲する。
 答えはずいぶん前に提示されていたのだ。佐藤によって。わかっているつもりで、自分たちは実は聞き流していたのかもしれない。

「夕璃子」

 慧介が、姿勢を正して言った。

「すきだ。つきあってくれ」

 夕璃子は思わず吹き出す。

「棒読みで全然ロマンチックじゃないなあ」

 二人は笑い、互いをかたく抱きしめあった。

「──私も好きだよ、慧介のこと。高校のときから、ずっと、ずっと」

 腕の中に囚われたまま、夕璃子はつぶやいた。想像していた以上に勇気が必要で、くすぐったくて、温かく、──心から吐き出してしまえば、なんということのないただの言葉だった。
 どちらからともなくキスをして、二人でみっともなく泣いた。そのとき、夕璃子はふと思ったのだ。きっとこの人と添い遂げるのだろう。




 それは、予知夢を見なくても確かな、──予感だった。









【了】



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三條 凛花 最後までお読みいただき、ありがとうございます♡

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