透けるノイズ │ 第3章 追
妻が消えた。隠された妻の顔と、彼女が消えた理由とは──。
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1.追跡
『バッタ』
❤23 2025年4月27日10:00
冬河未零
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電車に乗り込む。めずらしい、混んでいて座れなかった。一段高い位置にあるつり革に、背伸びしてぶら下がるようにつかまる。ぎしぎしという音が響いていた。
次の駅で人がどっと降りた。3人がけの席に腰を下ろす。つり革をつかんでいた手に集まっていた熱が散っていった。知らずに力んでいたようだ。
ふと視界の端で、向かい側に座った女性たちのスカートがはためいていることに気がついた。
ひらひら。
ひらひら。
向日葵みたいな黄色のスカートの人と、淡いブルーグレーのスカートの人。
ところが床にもなにかが、はためいている。ひらひら。ひらひら。
それは、バッタの羽根だった。
どうしてこんなところに。
よく目をこらして、気がつく。頭部が原型なくつぶれていた。踏みつぶされたバッタの羽根が、天井につけられた扇風機の風で煽られて、ひらひらと揺れているのだ。
電車が止まるたびに、目の前の通路を人が行き交う。ひっと息を詰めた。だれも気づかずにその横を通り過ぎた。バッタはこれ以上つぶれることなく、私が降りるときまでひらひらと羽根を揺らし続けた。
『不穏』
❤10 2025年4月27日11:00
冬河未零
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電車を降りる。
横断歩道のまん中に、なにかが落ちている。もこもことした毛糸に見えた。それが轢かれた燕だと気づくまで、しばらくかかった。頭がなかった。
こうも連続してしまうと、なんだか不穏な気がする。
『船』
❤10 2025年4月27日12:00
冬河未零
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視界が自分の髪の毛でいっぱいになった。背中から吹きつけてくる強い風が射抜くように冷たい。港はじりじりと焼けるように熱かったのに、船のうえはひどく寒かった。ぶるりと震える。次に来るときにはウインドブレーカーを持ってこようと誓った。
船の後ろを眺めている。船が通ったあとだけ、かき混ぜられた水の色が変わってゆく。翡翠のような──すこしにごった色味だ。ころころと海中を転がるように赤い海月が流されていく。
寒さをしのぐものがないかとリュックの中を見て、驚いた。船だ──。”船”が入っていた。
そういえば昨日、長男が廃材をつなげて船を作っていた。入れたのはきっと次男だ。あの子は、前にも長男のリュックにおもちゃを入れていた。
家を出る前にどうして気づかなかったのか。荷物になるけれど──でも、中にはビーズがたくさん入っているし、テープでつながれている。結構大きい。これじゃあ、捨てられないや。
まあ、軽くてよかったと思うことにしよう。
打ち寄せては戻る波の音を聴きながら、拓海は新しく投稿された冬河未零の記事を読んでいた。しん、と胸が冷えていく。
妻の書いた記事をたどるように、拓海も電車に乗り、高松築港駅で降りて、港まで歩き、そうして船に乗った。
くちびるの端を噛む。
昨夜、警察に行ったときのことを思い出していた。
行方不明届は受理された。でも。
「家出か事故かは、正直、こちらでは判断しかねます」
警察官は申し訳なさそうに言った。
「成人女性の失踪については、ご本人の意思による可能性もありますから。ただ、お子さんが小さいとなると……」
考え込む警察官に、拓海はスマホを差し出した。
「note、ですね……奥さまのものですか?」
「はい。自宅に残されたパソコンが、このアカウントにログインされたままになっていましたから」
「昨日……いなくなったあとに更新されていますが」
「……いや。おそらく、妻がすべて書いたのではないと、そう踏んでいます」
拓海には確信があった。
警察官の表情がわずかに変わった。けれども、推測を話すと難しい顔をされた。
「その程度の違和感では……」
すぐに動くことはできないという。
noteのアカウントが本人のものであっても、離島行きの話はSNS上のうわさ程度に過ぎない。スクショ画像だって、フェイクかもしれないと。
だから拓海は、居ても立ってもいられなくなって、澪の足取りを追うべく離島に来ていたのだ。
後悔している。
半年ほど前だっただろうか。澪が、拓海のスマホから自分のスマホを探せるようにしてほしいと言ってきた。
スマホをなくしたときに見つけられるから、と。
拓海はむっとした。なくさないように気をつければいいだけなのに、と。
澪は家の中で数え切れないくらい何度もスマホをなくしている。いつまで持っていたのか、どこに置いたのか、まったく記憶が無いのだという。
拓海にはそんなことなかったので、毎回、鳴らしてほしいという澪にいらついていた。
でも、もしあのときにGPS設定をしていれば。
そうすれば、手がかりが得られたのではないか。
砂浜に続く石段にすわり、動けずにうずくまっている拓海には眩しいくらいに、世界は美しかった。
波間にきらめく光がダイヤモンドみたいだ。薄い雲の向こうに空が透けている。あの船の行き先は2つある。澪は、この景色を見たのだろうか。
波が引き上げていくとき、炭酸が抜けるような音がすることを、──拓海ははじめて知った。
2.追懐
教室の空気は、いつも湿っていた。
思い出そうとすると、チョークの粉が舞い上がるときの、むせそうな匂いが鼻の奥によみがえる。
小学生のころの拓海は、いつも一人だった。
周りの感覚についていけなかった。いつでも自分だけが違う世界にいるような気がした。なにもかもが遅い。
(それ、もう知ってるんだよ……)
口に出すとめんどうなことになるから、飲み込んでいた。日々の授業がひどく退屈だった。
教科書をめくって眺めるだけでわかるような事柄を、延々と説明される。それくらいなら、辞書でも読んでいるほうがよほど楽しいのに。いじめられたりしたわけではない。だが、──同い年の子どもとは話が合わず、教室に入るのが憂うつだった時期があった。
そんな中やってきた澪はおとなしくて目立たない少女だった。
転校生という非日常感に期待していた愚かなクラスメートたちは、彼女を見て、なんとなくがっかりしたような感じがあった。
澪は拓海の隣になった。目線を合わせずおずおずと会釈をして自分の席についた。
それからしばらく会話をすることすらなかった。彼女は、意識して話さないようにしているように思えた。授業中に当てられたときの、西側の訛りのがない発音のせいだろうか。
澪に興味をもったのは、ある夏の国語の授業中だった。
いつも通りの退屈な教室。わかりきったことを延々と聞かされる、永遠のような45分間。
ふと、窓側の澪の席に目をやって、気がついた。彼女は妙なことをしていた。
国語の教科書に、色を塗っていたのだ。蛍光ペンを使って、文字に色をつけている。けれどもそれは、なんの意味も持たない配列だった。
なにをしているのかはさっぱりわからなかったけれど、自分に近い感覚を持っていると思った。だって、彼女の成績は悪くなかったのだ。手遊びでやっているとは思えなかった。
彼女の栗色の髪の毛が、窓の光でほのかに透けて金色に光っていたことだけを妙に覚えている。
給食中に校内放送で音楽が流れると、リズムをとるように、手の指がかすかに動いていた。弾いているのではない。ごくごく微細な手の動き──。
彼女に興味を覚えた。その目にはいったい、なにが見えているのだろう。
けれども、そのときは互いになにか進むというようなことはなく、そのうちに澪はふたたび転校してしまった。北陸に行ったと人づてに聞いた。──父親が不倫したことで、母の実家に越したのだと打ち明けられたのは10年近くが過ぎ、恋人になったあとだった。
澪と再会したのは大学時代だった。同じ学部で一緒になった。声をかけてきたのは澪からだった。
同一人物だとは思えないくらい目が大きくなっていたし、苗字も変わっていたので、拓海は名乗られてもしばらく、目の前の光景と告げられた言葉が一致せずに固まったくらいだった。
澪は美人になっていたが、いつでも暗い顔をしていた。
その瞳は凪いだ海に似ていた。目の前を見ているように見せかけて、じつは何も映していない。そういう感じだった。
教授に誘われた飲み会で隣の席になった。酒を1杯飲んだだけで澪はけらけらと笑いだし、けれども瞳の端に、ぽちりと涙が滲んでいるのに気づいた。
「ピアニストになりたかったの。でも、むりだったんだあ」
彼女は自分のてのひらを見つめ、舌足らずな感じで言った。
流れで付き合うようになった。
朝の光の中で見る澪のあどけない顔は、小学校時代にとなりの席だったあの少女を、そのまま大人にしたような感じだった。拓海は、ポーチの中に無造作に落ちている長いつけまつ毛を虫に見間違えて飛び上がった。
互いに愛の言葉みたいなものはなかった。
いっしょにいるのが当たり前で、らくで、心地よかったはずだ。やがて澪は就職したが、上司にあたる女性の横暴さに悩んでいたときに結婚して、退職した。ややあって子どもたちが生まれた。
澪と拓海は互いに同じ方向を向いて進んでいる。そう、──思っていた。
けれども、だからこそ、お互いのことが見えなくなっていたのではないか。そこにいるのに透明で、不満ばかりがつのっていく。
それはきっと、お互いに。
拓海と澪は孤独を埋め合うために夫婦になった。でも、いっしょにいればいるほど、──澪は孤独を覚えるようになったのではないか。
拓海は、確かに自分が日々がんばってきたと思っている。だから、休日には高校時代の仲間とフットサルを楽しんでいた。休息日がある。そのことが間違っているとは思わない。──でも。
3.追風
拓海は、あのnoteの投稿はニセモノだと思っている。
予約投稿であると勘違いするような、「10時」「11時」「12時」と正時で投稿されていることも気になっていた。
だれかが澪を「自殺しようとしていた」と印象づけようとしている。
そう思えてならなかった。
なぜなら拓海は昨夜、まだ公開されていない、下書き状態の『バッタ』を、『不穏』を『船』を、読んでいたからだ。
船の最後に、昨日はぜったいになかった……はずの、一文が付け加えられていた。
これは公開前の下書きです。
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『船』
2025年4月22日10:16
冬河未零
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視界が自分の髪の毛でいっぱいになった。
背中から吹きつけてくる強い風が射抜くように冷たい。港はじりじりと焼けるように熱かったのに、船のうえはひどく寒かった。ぶるりと震える。次に来るときにはウインドブレーカーを持ってこようと誓った。
船の後ろを眺めている。
船が通ったあとだけ、かき混ぜられた水の色が変わってゆく。翡翠のような──すこしにごった色味だ。ころころと海中を転がるように赤い海月が流されていく。
寒さをしのぐものがないかとリュックの中を見て、驚いた。船だ──。”船”が入っていた。
そういえば昨日、長男が廃材をつなげて船を作っていた。入れたのはきっと次男だ。あの子は、前にも長男のリュックにおもちゃを入れていた。 家を出る前にどうして気づかなかったのか。荷物になるけれど──でも、中にはビーズがたくさん入っているし、テープでつながれている。結構大きい。これじゃあ、捨てられないや。
まあ、軽くて良かったと思うことにしよう。でも、リュックの中身がいっぱいで、とても家族へのお土産は入れられないけれど。
拓海のなかでは、一つの答えが浮かび上がっていた。
このアカウントを操作している人物の目処もついている。けれども証拠がない。
拓海は、行方不明になったあと最初に投稿された未零の文章を開いた。
『透けるノイズ』
❤45 2025年4月26日11:20
冬河未零
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夫といると、消えたくなることがある──。
家の中に透明なノイズがある。
それはほかの家族にとってはなんでもなくて、私にだけ響く不協和音なのだ。理解できない感覚だからこそ、それによって阻まれた現状こそが私の”能力”だと判断されてしまう。
私は妻失格であり、母失格なのだ。
頭のなかでいつも色の洪水が起こっている。でもそんなこと話したって、だれにも信じてもらえない。確かにここにあるのに、ほかの人から見えない幽霊みたいなノイズが、確かに私を侵蝕している。そうして頭のなかがいっぱいになってしまうから、聞いたり、考えたりすることに、一歩、遅れが出る。
──これまでは、良い能力を得られたと思っていた。神さまからのギフトのようなものだと思って磨いてきた。そう。幼いころはこんなことがなかったのだ。研ぎ澄ました結果、創作には役立っても、実生活では呪いのようなものに変わってしまった。
みんなが当たり前にできることが、私にはできない──。
でも、だから私は書くのかもしれない。頭のなかにあるたくさんのノイズのなかからきらめきの上澄みを掬い取って、綺麗なものだけを残すために。あるいは、忘れてしまっても、また記憶をもどせるように。
理解しろとは言わない。
言えない。でも、そっとしておいてほしい日だってあるのだ。
だからわたしは此処から居なくなろうと思う。もう、戻らない。
未零の──澪の、すべての記事を読んでわかったことがある。
それはいわゆる”文体”というものだ。どこをひらがなにして、どこを漢字にするか。はっきりとした特徴があった。
じゃあ、この最後の一文は、なんだ。
だからわたしは此処から居なくなろうと思う。もう、戻らない。
スクロールをして、コメント欄を見る。
たったこれだけで、関係者だと決めつけるのは早計だろうか。でも、勘が言っていた。
拓海はそいつのすべての投稿に、目を通した。
「おにーちゃん、どっから来たん?」
ふと声をかけられて顔を上げる。年配の女性が立っていた。
「高松です……」
拓海は目を逸らした。
知らない人物がこうして気軽に声をかけてくるのが、苦手だ。
「なんや、市内か。ご近所さんやなあ。ようけ長いことここにおるけん、思い詰めとるんかなって気になったんよ。気をつけないと、帰りの船はな、人数制限あったら乗れんようになるけん……ん? その人」
女性は拓海のスマホをのぞきこんだ。不快さに身を硬くしたが「こないだ見た女の子やわ」という言葉に、はじめて女性の顔をまっすぐに見た。
「妻を、知ってるんですか?」
「へえ、奥さんなん。うん。知っとるよ。こないだ、うちの店でたこめし食べていった子なんよ。男の人といっしょにおったけど、すごく居づらそうというか、帰りたがってる感じがあって気になっとったんよね」
「……それはもしかして、この人ですか」
拓海は、男の写真を見せた。
女性はうなずいた。
答えが出た。『バッタ』も『不穏』も『船』も。
書いたのはすべて澪だ。
でも、あのかたちで投稿しようとは考えていなかったはずだ。昨晩、あれらが「下書き」として公開されずに残っていたのを拓海は見ている。
あれはきっと、メモだったのではないか。
公開するための文章には、それぞれ特徴があった。たとえば、タイトル。詩的なものばかりがつけられていた。
でも、今日公開されたものはどうだ。「バッタ」「不穏」「船」。本文のなかに登場する単語ひとつだけのタイトルを、冬河未零がつけるだろうか。
あれは、島に向かう過程で見つけたものを、メモしていた記憶の切れ端なのではないだろうか。エッセイや日記というものですらない、もっとそれ以前のもの──。
公開されていない下書きは、じつは、たくさんあった。それはどれも言葉の切れ端や、日常のワンシーンを、切り取ったものたちだった。
これは公開前の下書きです。
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『透明なノイズ』
2024年2月14日15:26
冬河未零
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動画を流しているとつらくなる
BGM
絶対音感
音の名前が文字で浮かぶ
それが色に変わる
指先に出てくるのは楽譜
実況者の声 文字で浮かぶ
それが色に変わる
子どもたちがなにかいってる
でもよくわからない
床に散らばったもの おもちゃのカラフルさ
目の前が、頭のなかが、透明なノイズでいっぱいになる
うるさい うるさい
これは公開前の下書きです。
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『遮断』
2024年11月23日04:36
冬河未零
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夫がヘッドホンをくれた
うれしかった
子どもたちが動画を見ているとき、少しだけ耳からずらしてつけた
これで声はきこえる なにか話していたら取ろう
音楽を流す 自然の音 水の流れ
帰宅した夫に怒られた
どうして子どもたちを拒絶するみたいにヘッドホンをするんだ
ちがう そうじゃない
だってうるさくて
……私が洗い物をしていたら、夫はヘッドホンをつけて動画を見始めた
どうして私はだめなの
夫といっしょにいると、ときどき、消えたくなる
4.追尾
翌日は平日だった。GWの途中だが、仕事がある。
「サムカワぁ、おまえさ、効率化とかいって作業内容変えるのやめろよ」
上司の大西が書類をデスクに投げつける。にやにやと笑った下卑た顔だ。
「1人あたり45分かかっていた作業をなくしたんです。作業マニュアルも作りましたので難しいことではないとおもうのですがね。もちろん、ボタンを追加しただけですから、今まで通り作業することも可能です。大西さんだけ前のやり方で続けることもできますよ」
普段は言い返さない拓海がつらつらとしゃべると、大西は意外そうに片眉を上げ、それから顔を真っ赤にした。
「うるさいッ! おまえ、最近サボりすぎなんだよ。子どもの迎えなんてヨメにやらせればいいだろうが」
「昼休憩、行ってきます」
しん、と静まり返ったオフィスをあとにする。
(辞めてぇ……)
でも、辞めたら生活ができない。
自分は”父親”なのだから。せめて澪が、ほかの母親みたいに働いてくれたら。そうしたら、転職を検討できるのに。
拓海は瓦町駅方面へ向かいながら、SNSを開いた。
背の低いビルに切り取られた空がもくもくと曇っていく。真っ黒な雲だ。さらさらと雨が降りはじめた。
(今日が駄目なら明日。でも、少しでも早く……)
祈るような気持ちであらかじめリストに入れておいたメンバーのタイムラインを遡る。
《おはよう、noterの皆さん!今日は妻といっしょに産直へ行ってくるよ♪♪♪ 四国・九州地方の方は雨模様だね。ゲリラ豪雨に気をつけてね^^》
❤2

《おはようございます!いい天気だね。スーツ暑いけど、今日も笑顔で!朝のコーヒーうまっ。》
❤59

《@しじまさん
おはよー! 僕は紅茶派》
❤1
《今日は休み。いつものスタバと本屋行こうと思ってる》
❤4
《@YJさん
おつかれさま♪ スタバのおすすめカスタムある?》
❤1
《@田代シロさん
俺甘党なんで、ホワイトモカシロップ好きっす》
❤1

《自転車で移動してたらずぶぬれ……。なんにも見えなくて息もできない中強風が吹いて命の危険を感じた》
❤7

《@まひるさん
おつかれw スタバの窓から見てたらすごい雨だったわ。ギリセーフだった》
❤1
《1限まじ無理…外に出たくない……(おふとんカムバック)》
❤1

《@イヲリさん
おつかれさま♪ 》
❤1
アスファルトに水たまりができていた。空は先ほどまでが嘘のようにからりと晴れている。
「すごい雨だったねー……」
そのまま水に飛び込んだように濡れた拓海の髪の毛から、ぽたりぽたりと雫が落ちて、スマホ画面を濡らした。ぷっくりと浮かんだ雫が、ブルーライトに照らされてビビッドなピンクやら緑やらに縁取られている。
拓海はSNSを確認したあと、昼休みの食事に向かう人の群れをかき分けるようにして走った。そのたびに、ぴしゃりと水が跳ねる音がする。
「冬河未零はどこですか」
拓海は、そう声をかけた。
第4章へ
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