いますぐ×じわじわ──1日の濃度が上がる”時間薬”の調合レシピ
まどろみから抜ける。にぶく頭が痛む。
ふるふると首を振ってレースのカーテン越しに夕方の光が差していることに気がついた。
週3回のバイトに出る以外はすべて自由時間だった23歳のわたしは「どうして気がつくと夜なんだろう」と悩んでいた。
時間はたくさんある。それなのに、うまく使えない。なにもできていない。
あれから10年以上の年月が流れた。
ほとんどワンオペで幼稚園児と小学3年生を育て、ほそぼそと執筆業を続けながら、すきま時間でたくさんのことに挑戦している。
・3800日間以上の毎日更新
・3週間で13万字書いて文学賞3つ応募する挑戦
・創作大賞の全部門に応募する挑戦
・リクエストをもらってから5日で5万字の小説を書きあげる挑戦
・人が描けない状態から70講座(/年)受けて夢だったコミックエッセイに着手
23歳の頃、あんなにも時間の無さに困っていた。
いまのわたしは、家族が増え、仕事も変わり、前より時間はないはずなのだ。
まったく足りてはいない。できていないこともたくさんある。
でも、1日の濃度は大きく変わった気がする。
この間にやってきたことを大きく分けると3つ。
上に書いたように3,800日以上毎日書き続けるなかでの気づきを"処方箋"のように言語化してみた。
1.最高時間術(315時間術)
→今すぐかんたんにできて即効性がある「頓服薬」のような時間術
2.時間の対処療法
→根っこからゆっくり治療して時間を増やす「漢方薬」のような時間術
3.時間のサプリ(宝石箱手帖)
→貯めた時間を楽しむためのノート
1.いますぐ効果がある時間の「頓服薬」
「頓服薬」のようなこの方法を、”最高時間術”と呼んでみる。「3・1・5時間術」の語呂合わせ。
今すぐかんたんに目の前のことを終わらせる方法だ。
3つだけを1時間でやる時間術「スリークエスト」
1つだけを15分刻みでやる時間術「リミット15」
この2つを合わせて「3・1・5」時間術とした。
ポイントはそのときの「気分」と「時刻」に合わせて使い分けること。
時間の頓服薬(1)スリークエスト
「スリークエスト」はわたしの造語で、3つの”クエスト”という意味。
クエスト本来の意味は”冒険”や”探求”なのだけれど、たとえばゲームの中で、やるべきことを「クエスト」と表現しているのを聞いたことがないだろうか。「タスク」というよりも「クエスト」のほうがすこしだけわくわくするので、そう読んでいる。
スリークエストのやり方はとてもかんたん。
3つの質問に答えるだけで、すぐに動けるようになる。
まず、あなたもやってみてほしい。
紙に書いてもいいし、メモアプリなどに入力するだけでもいい。
1.今の時間は何時何分?
2.次の正時(区切りのいい時間)まで何分くらいありそう?
3.その時間内に終わりそうなことを3つ考えよう。
実際に試してもらうと実感できると思う。
3つという数字は「覚えやすい」。
思いつかない場合は、次の具体例へ。
▼具体例
1.今の時間は何時何分?
→14:28
2.次の正時(区切りのいい時間)まで何分くらいありそう?
→30分程度
3.その時間内に終わりそうなことを3つ考えよう。
(1)メール返信 1つ
(2)コラムの見直し
(3)記事できるところまで
どうだろう。すこしはイメージができただろうか?
これは、今この記事を書いている今この瞬間に、わたしがリアルタイムで考えたことだ。
思うままこの記事を書き進めたいけれど、やるべきことがいくつかある。
こういうとき、頭を整理するための指標として「3つ」という数字と、タイムリミットを設けるのはとても便利なのだ。
追記:
14:28にスタートして(2)までを10分で終わらせることができた。そのまま記事を書いていたらきっと夜にあわててやり始めたことだ。
「記事を書く」のようなゴールが時間で測りにくいことは、3つのクエストの最後に持ってくると便利だ。
※もっと知りたい方は、記事末尾のリンクへ。
時間の頓服薬(2)リミット15
次に紹介するのは「リミット15」という方法。
これは15分刻みで「1つ」だけタスクを終わらせようというもの。
1時間を15分刻みで区切ってみる。
すると0分、15分、30分、45分になると思う。
先ほどの「スリークエスト」では0分をタイムリミットにしたけれど、「リミット15」では、次のリミットをこの4種類のなかで「今」にいちばん近い時間帯に設定する。
そして、その時間までに終わらせることを1つだけ決める。
さっそくやってみよう。
1.今の時間は何時何分?
2.次のリミット(0分・15分・30分・45分)はどれ?
3.その時間内に終わりそうなことを1つ考えよう。
思いつかない人は、次へ。
▼具体例
1.今の時間は何時何分?
→14:40
2.次のリミット(0分・15分・30分・45分)はどれ?
→14:45(あと5分)
3.その時間内に終わりそうなことを1つ考えよう。
→物撮りリストをつくる
追記:
14:40にスタートして3分で終わらせることができた。そのままこの記事を書いていたら忘れてしまいそうだった。
※もっと知りたい方は、記事末尾のリンクへ。
最高時間術は、あくまでも時間の「頓服薬」
これまでに紹介してきた「スリークエスト」「リミット15」。
2つの最高時間術は道具も不要で今すぐにできるかんたんな方法だ。
決めるだけで、みるみる目の前のことが片づいていく。
実際に体感したら「この方法だけでいい」と思うかもしれない。
でもこれは、薬でいうなら「頓服薬」に過ぎないのだ。痛みをやり過ごしているだけ。
つまり、この方法を試しても、時間が増えることはない。
根本的な時間の使い方を変えていく必要がある。
そもそも、時間の使い方を変える時間すら取れない人も多いと思う。
だからこそ、ゆるくはじめる「最高時間術」を併用して「治療」の時間をつくっていくのをおすすめしている。
2.じわじわ効果がある時間の「漢方薬」
次に紹介したいのは、時間の使い方を根っこからじわじわと直していく「漢方薬」のような方法だ。
それは、暮らしや仕事の中にある「むだな時間」を見つけて取り除いていくこと。
これは本当に多様で、あらゆる物事のなかに、悪党のように、あるいはウイルスのようにこっそりと潜んでいる。だからスリークエストやリミット15といった、どんな症状にも効く薬が存在しない。
ひとつひとつ症状に合わせて行なう対処療法が必要になっていく。
そんなわけで、ここではひとつだけ例を挙げて紹介していきたい。
たとえば──
暮らしていると必ず「新しいもの」が入ってくるシーン。
避けては通れないこれこそが、部屋が散らかる原因にも、時間をむだにする原因にもなっている。
ここでは、この症状を和らげてくれる3つの”時間薬(漢方薬風味)”を紹介する。
ほかの症状には効かない。
自分で処方していく必要があるので注意が必要だ。
日々増えるモノへの処方箋3つ
時間の漢方薬① 入口屑籠散
ひとつめは、玄関にゴミ箱を置くこと。
帰宅してすぐ、玄関で家に入ってきたものを仕分けし、処分することができる。
たとえば不要なチラシやDMを捨てる。レシートを捨てる。リビングまで持ち込まない。
時間の漢方薬② 複持不取散
ふたつめは、毎回取りに行かないように、玄関専用のアイテムを置くこと。
たとえば、開封するのに使うはさみ、予備のゴミ袋、個人情報を消すスタンプなどを「玄関専用」として設置しておく。
時間の漢方薬③ 明識一瞬散
みっつめは、ラベリングだ。
玄関専用と決めたものを、間違ってほかの部屋に持っていくと、もどせなくなってしまう。だから、はさみや個人情報保護スタンプなど、玄関から動かしたくないものには、シールやネームホルダーを使って戻す場所が玄関だと明記してあげる。
これでもし、ほかの部屋に移動させてしまっても、迷わずに定位置に戻すことができる。
治療の第一歩は「7つの時間泥棒探し」
時間治療の第一歩は”7つの時間泥棒”を見つけること。これこそがウイルスのように時間を蝕んでいる。
具体的に言うと、
さ→探す
き→決める
や→やり直す
ま→迷う
と→取りに行く
し→調べる
か→考える
の7つだ。
いま、自分の時間を奪っているのがどれなのかを知るのが第一歩。そして、根気よく対処療法を進めることで、時間を蝕むものを取り除き、有意義に、あるいは楽しく使う時間を増やすことができるようになる。
→さらに詳しく知りたい方は記事末尾へ。
3.貯めた時間をきらめきに変えるサプリ「宝石箱手帖」
意外と盲点になっているのが、せっかく時間を節約しても、貯めた時間をうまく使えないこと。
そこでサプリメントのような感覚でおすすめしたいのが「宝石箱手帖」をつくること。
過去に作った詳しい図解画像を載せていく。
宝石箱手帖とは?
宝石箱手帖は、ふせんを使ってやりたいことを楽しく進めていくための手帳。用意するものは、小さなノートが1冊と、ふせん。。

宝石箱手帖は、やりたいことを掘り出す「原石メモ」と、叶えたことを集める「宝石メモ」でできている。

ようするに、
原石メモ……ToDoリスト
宝石メモ……できたことリスト
なのだ。
ただし、宝石メモには、その作業をすることで気づいたことや、どんなふうにやったかという”記録”を残す。作業をこなすだけじゃなく、次への気づきといった付加価値を残すことで、ただのメモが、宝石みたいに輝く便利なものに大変身するのだ。
宝石箱手帖のつくりかた
宝石箱手帖は3ステップでつくることができる。
ふつうの付箋なのだけれど「カッティング方法」だけで急に宝石らしくなってたのしい。

まずは「原石メモ」にやりたいことを書く。このとき、なるべく上部中央にくるように書くのが大事。これは1付箋=1todoで書いたやりたいことリストをイメージするとわかりやすい。
書いた原石メモは、毎日開く手帳やノートに貼っておく。目にする機会が多いほど、達成しやすくなるのだ。
ちなみにわたしは、5色の付箋を活用している。色ごとに「カテゴリ」があるのだ。これでタスクを選ぶとき、すこし選びやすくなる。
できたら原石メモを磨いていく。

原石メモに書いたことを達成できたら、感想や気づき、やったことなどを書き込んでいく。このとき、逆三角形か正方形になるように書くと、あとで「カッティング」がしやすくなる。

原石メモに書いたことを達成できたら、角をカットする。すると不思議なことに、これまでのがんばりが、宝石のように見えてくる──!
集めてたのしくがんばれるノートなのだ。
「宝石メモ」になったふせんは、よく使う手帳ではなくて、専用のミニノートをつくってそこに貼りつけていく。1冊終わるころにはきっと、自己肯定感が少し高くなっているはずだ。
宝石箱手帖で生まれるいいこと
せっかく時間を貯めても、その時間をむだにしてしまっては意味がない。どうせなら、好きなこと、やりたかったこと、これからが楽になるようなことをたくさん詰め込みたいものだ。
けれども、それが現実にむずかしいのは、思いつかないから。だから、ぽっかりとあいた時間の使い方をあらかじめ想像しておくのはとても大事なことだと思っている。
やりたいことが決まっていなければ、ゼロから考えなければいけない。
やりたいことが決まっていれば、その中から「今やるもの」を選ぶだけでいいのだ。
ぐっとハードルが下がる。
ではどうしたらいいのか。
やりたいことを見つけるためには、ふせんの裏側──剥離紙がついている部分に「カテゴリ」を記入するのがおすすめ。たとえばわたしは「Home(家のこと)」「Family(家族のこと・家族といっしょにすること)」「Work(仕事でがんばりたいこと)」といったようにメモしてある。
このカテゴリを見ることで、「時間ができたらやりたいこと」が思いつきやすくなるのだ。
ここまで紹介してきたように
いますぐ効く時間薬「最高時間術」
じわじわ効く時間薬「対処療法」
わくわくするサプリ「宝石箱手帖」
この3つが、わたしの時間術の根幹になっている。
どの方法からはじめても効果があるので、ぜひ試してみてほしい。
とくに「スリークエスト」は、思いついた当時から10年経っても利用してくれている人が多い。Xで「#1h3q」とタグ付けして投稿するだけでいいのでおすすめ。
▼自己紹介
▼時間術・ノート術・家事術の本を出したり、雑誌の監修をしたりしています。

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