3年n組、きょうの授業は自己紹介です。
▼みんなで創るこの物語の、おまけコンテンツです。
物語考えるときにこれほしかったなって思ったのでつくりました。
物語のほうは初見でもなるべくわかるように書いていますが、こちらはおまけなので、読んだ人じゃないとなんのはなしかさっぱりわからないと思います。
二重虹の朝、あなたを知りたくて。
静かな朝の空気を吸い込むと、ほんのりと土の匂いが混じっていた。
昨夜遅くに降った雨のせいで、草はくったりとしているし、地面は少しぬかるんでいた。
(なんだか最近、呼吸がしやすい気がする……)
乃音小学校に転校してきてから、1週間が経った。
「おはよう」
後ろから声をかけられて振り向くと、はるちゃんだった。
はるちゃん。
そう言いかけて、わたしは目を見開いた。
彼女の後ろ──西の空に、大きな虹がかかっている。しかも二つも。
「はるちゃん、見て」
思わずはしゃぎながら指差す。
「わあ、ダブルレインボー?」
「すごい!」
「いいことありそうだね」
重なった虹は、内側のほうがくっきりと色鮮やかだった。外側のほうは今にも消えてしまいそうで儚くって、これを写真に撮れないことを残念に思った。
せめて文章で書けたらと、じっと見つめる。この一瞬を焼き付けるために。
ランドセルの肩ひもをぎゅっと握り直して、坂道を登る。
空を区切る葉っぱたちはいつもよりつやつやしているように見える。
ふと、前を見ると、鮮やかすぎない、少しおねえさんっぽい赤いランドセルが見える。
リィちゃんが少し先を歩いていた。
『西門コース』と呼ばれる、こちら側に帰る人はじつは少ない。
はるちゃんとリィちゃん、それからゆにちゃん。あとは誰かいただろうか……?
「リィちゃん、おはよー!」
はるちゃんが声をあげる。
「おはよう」
「今日、ちょっと暖かくない?」
言われてみれば、風が冷たいわりに、頬がじんわりと熱い。
たった7日の間に、この通学路もずいぶん様変わりしていた。薄茶色の干からびた枯れ草がほとんどだったのに、あちこちから小さな芽がのぞいているのだ。
冬の終わり、春のはじまり。
そんな空気が満ちていた。
通学路はゆるやかな坂道ではあるけれど、二十分ほど登らなければいけないのでなかなかにしんどい。
学校とふもとのちょうど真ん中あたりに、少し山にはみ出すようにして整えられた場所があり、そこにはベンチが置かれていた。
まだまだ始業までは時間がある。
わたしたちは一度腰かけて、水筒を開ける。歩いているうちに体は温まり、氷入りの冷たいお茶が気持ちいい。
他愛のないはなしをするはるちゃんとリィちゃんを見ていたら、勇気を出してもいいような気がした。
「あのさ……」
思い切って、声だけ先に上げる。
膝の上にランドセルを下ろして、ためらいながら中から取り出したのは、一昨日からずっと入れっぱなしのプロフィール帳だ。
「はるちゃん、リィちゃん……」
「なに?」
ふたりの声が揃う。わたしは一瞬視線を彷徨わせてから、目をつむったまま「これ…みんなに書いてもらいたくて!!!!」と、言った。
「ふふん。こういうの、まかせて!」
力強く受け取って、さっそくペンを取り出そうとするリィちゃんに、はるちゃんは「ここで書いてたらさすがに遅刻するよ」と笑った。
少しずつ高くなっていく朝の空を見上げて、ほっと安堵の息を漏らした。
教室に入る前に、はるちゃんが耳打ちした。
「よかったら、わたし、配ろうか?」
「……いいの?」
「うん!」
はるちゃんはいつも優しい。
わたしが考えていることを先回りしてくれるみたいに。胸のなかに温かいものがじゅわりと広がっていき、思わず顔がほころんだ。
「じゃあ、男子の分はマイトンくんに頼もう」
リィちゃんがそういうと、プロフィール帳の半分を、マイトンくんのほうへ持っていった。
自席から外を眺める。
早く登校したのだろう、学年問わずたくさんの人が、校庭で思い思いに遊んでいた。3年n組の姿もちらほら見られる。ドッジボールをしているようだ。
アルロンくんのほうにボールが飛んできた。
「あー」
マイトンくんが目をそらした。
アルロンくんはわたしが転校してきてからもずっと「今日のがっかり賞」を取り続けているのだ。
ここに来たばかりのわたしでも、もはや、”不憫”の意味がよくわかっていた。
ところが。
「あれ……?」
窓ぎわで一緒にいたみゅみゅが首をかしげる。今日もかわいいね、と思いながら見ていたわたしは違和感に気づかずにいた。
叫び声が、聞こえてこない……?
おそるおそる目を向けると、アルロンくんの腕に、ぽすりとボールが収まっている。
本人も意外だったようで、数秒固まったかと思うと、我に返ったかのように素早く構え直した。
「これで完ぺき…! ゆにに、当てる…!」
「あー……」
lionくんが頭を抱えた。わたしも思わず目をつむる。
案の定、ボールが弧を描いた瞬間、強い風が吹いた。
「春一番じゃない?」
リィちゃんがのんびりと言った。
「ぐふっ」
アルロンくんが投げたボールは、引力でひかれるように戻ってきた。あるいはヨーヨーのようでもあった。
アルロンくんは倒れ込んだ。
「ぐえっ」
同時に、どこからか飛んできたボールが背中に当たる。
「あばばばばば」
「あーごめん。あっちのグループのボール、返そうと思ったんだけど……風が……」
「ゆにぃ、やってんな!」
アルロンくんは倒れたまま叫んだ。
「あ、消えた」
みゅみゅの声に顔を上げると、空にかかっていた大きな虹も、跡形もなく消えていた──。
「じゃあ、男子のほうは配っておきますね」
マイトンくんが言ってくれた。
「Rのフラグ説、強まりましたね」
lionくんが耳打ちする。
わたしも頷いた。
「でも、あれだけ不憫な目にあっているのに、怪我一つしてないの逆にすごい……」
みゅみゅの言葉に、わたしたちは顔を見合わせる。
確かに。今日もボールが2発ほぼ同時に当たったにもかかわらず、アルロンくんはかすり傷一つなく戻ってきたのだ。
「さらに謎が深まる……。やっぱり運命に試されているのか」
おまけのおまけ:
「小西先生、……あの、先生も書いてもらってもいいですか?」
わたしは、どきどきしながらプロフィール帳を差し出した。
小西先生は数秒固まったのち、プロフィール帳の表と裏を何度も確認する。そのあとにっこり笑って「いいですよ」と言った。
「ラブレターだと思ったんだけどなあ……特になにも書いてない」
「……なんのはなしですか?」
「じゃ、マイトンよろしく。好きな女性のタイプは萌え袖で……あとは大丈夫かな」
流れ作業のようにマイトンくんの手に収まったのだった。
「そうだ、来月また転校生が来るよ。マイトンよろしくね」
あとがき
昨日公開した物語に、たくさんの反響をいただきありがとうございました。
Xもnoteも通知が追いつかなくなって、まだぜんぜん返せていません。みんなで創るたのしさを噛み締めています。
さて、今回のおまけコンテンツについて少しおはなしします。
これもともとは、昨日の記事に入れるつもりだったんですが、長くなったので分けました。
物語を書いてみて思ったんです。
皆さんの「一人称(子どもだとしたら)」がわからない。
普段からどれくらい記事を追っているかにもよりますが、お1人ずつ5~20記事くらい読んでから書きました。
それでも「子ども時代でもありえそうな”好き”」を見つけられなかったりも。
(わたし自身もそうなんですが、子どもたちと過ごす時間をよく描かれる方だととくに)
もっと個性を、好きなものをお伝えできたらいいな、と思ったんです。
というわけで、書きたい人だけ使ってもらえるように、なつかしのプロフィール帳をつくりました。
印刷して書き込んだり、画像加工アプリで文字入れしたりして、自由に遊んでください。
※負担になってしまうのは絶対にいやなので、書きたい人だけで。
スピンオフも書いていただいたのでマガジンを作ろうと思います。
プロフィールもそこに格納していきますね。


Q&A
・3年n組じゃないけど使える?
→この遊びに使いやすい質問内容になっています。「o組」「t組」「e組」など、ほかのクラスをつくって遊ぶ場合は最適です。空欄のクラス名簿を、物語本編の記事に置いています。
・遊びには参加しないけど使える?
→大人も使えるプロフィール帳をこちらで配布しています。
・プロフィール帳の内容は、現実とちがってもいい?
→もちろんです。遊びに使える設定集にしてもいいです。
そのほかの、遊びのおさそい
・教室の掲示物を募集しています。
物語で書いていた「習字(テーマ:己)」「絵(テーマ:仲間)」を自由に創っていただき、写真を送っていただければ物語のほうに入れ込みます。
・制服デザイン募集
乃音小学校の制服デザインを募集します。私服校か制服校かで迷いましたが、学園ぽいですよね、制服。
・凛花の設定考えてもらえませんか
自分のことほどわからなくって、転校して1週間経つのに「係」と「部活」が決まりません。
「新聞係」も「整理整頓係」もいいなーと思うし、過去にやった部活は(
続かなかったり廃部になったりで)幅がありすぎて決まりません。
(合唱部、器楽部、茶道部、美術部、剣道部、運動部のマネージャーです…)
ちなみに運動神経は壊滅的です。
助けてください……!
今回のスペシャルゲスト
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最後までお読みいただき、ありがとうございます♡