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みくさんの創作大賞応募作(TALES)ぜんぶ読んだ【感想】

持ち時間的に新しい作品の発掘はむずかしいですが、感想をくださった方への恩返しとして、ひとりひとりの作品を深く読み込んでいます。

▼みくさんが書いてくださった感想


きょうは、みくまゆたんさんの創作大賞応募作品(TALES)すべて読んだので感想を書きます。



あの子ばかりエコ贔屓しないで。私を見てよ

華やかな女優生活を送っていたものの、じつは整形でうつくしくなった母。"醜い"と言われてしまう容姿の筑紫。筑紫は芸能界を目指し、恋愛リアリティーショーへの出演が叶うが──。

途中からずっと「つくちゃん!」と声をかけたい衝動に駆られていた。逆境に身を置いていても、主人公の筑紫は芯がある知的な女性だと思った。
悲観するのでも助けを求めるのでもヤケになるのでも無く、想像の斜め上をいく思考で、けれどもまっすぐに周りのことも考えて動くその様子に心を動かされた。

"あの子"が嫌な子すぎて、むかむかしながら読んでいて、彼女がどうなったのかも描かれていてすごくよかった。


47歳、独身ですが何か問題でも?

主人公の時次は、47歳独身男性。婚活サイトに登録するも、そのプロフィールは女性にモテませんとアドバイザーから言われてしまう(たしかに……と思った)。
そんな時次のもとに、学生時代の友人(?)や、かつて憧れていたマドンナのような女性がやってくるが……。

時次は、最初は婚活プロフィールのように魅力を感じない男性なのだけれど、読み進めるうちに、彼の愚直さや情の厚さが魅力的に見えてくる。

そして友人と女性……。え? からの  ん? からの え? でした。

前作に登場した"あの子" への感情が変わります。


それは、パクリではありません!

主人公の紀子は、インターネットである「漫画広告」を目にして驚く。紀子がかつて小説サイトで綴っていた小説と、タイトルや内容が酷似したものだった。 作品をパクられたと感じた紀子は、漫画家をSNSで告発をするが、今度は名誉棄損などの罪で法的措置を取られる羽目に……。

この作品は、著作権をテーマにしており、クリエイターにとっては深く考えさせられる作品だと思った。

わたしはnote歴7年だけど、本格的に再開してからは1年も経っていない。創作大賞は初めてで、それでも創作大賞後にこの作品の名前をよく見かけて気になっていた。

すこしわたしの話をさせてもらうと、"パクリ"には、じつは何度も合っている。紀子のような小説ではなく、考えやメソッド、あるいは言葉選びで。

たとえば、わたしがTwitterで10日間、試作の様子を重ねたあとで出したブログ記事のレシピを一字一句違わず丸コピーして、冒頭にだけ「わが家に10年伝わる秘伝のレシピです」と書いた人がいた。
その人からは「凛花さんに憧れてブログを始めました!」と言われうれしくて毎日ブログを見て応援していたからこそ知り、傷ついた。

なお、そのとき事情を一切書かずに「なんでこんなことができるの?」という一文だけをツイートした。すると彼女にブロックされてしまったのだった。

わたしの著書やほかの方の著書をテキストとして高額なセミナーをしている人も見つけた。本が何冊買えるだろう?という値段だった。

ほかにも、公開するにはきわどいものが多々、本当にたくさんあって、自分の小説でもすこし触れた。

絵も小説も、実用の世界でも。それどころか日常生活にも。いたるところにきっとパクリは存在する。

なんなら今日、小3の娘が「図工の作品をパクられたんだ」と悩みを吐露していた。

パクりはたくさんある。しんと心が冷えるあの感覚をきっとたくさんの人が経験している。でもそれを証明して糾弾するのがむずかしく、ともすればこちらが"勘違い"とされてしまう恐れもある。

そういう現代特有の虚しさがあるなかで、紀子は助けを得て道が開かれていく。
読み終えたときに感じたのは、希望だった。

また、本作品ではパクリではなく「リスペクトを持ったオマージュ」にも触れられており、多角的な視点がすごくよかった。
読み応えのある作品だった。


処女、官能小説家になる

女子高生の咲子は、片思いしていたクラスメート・片桐に告白した。振られてもめげずに何度も。最後には片桐から「プロの作家になればデートしてもいい」と返事をもらう。咲子は彼とのデートを実現すべく、作家を目指したが──。

咲子の高校時代から36歳までが描かれた作品。最後まで読んだら1話目にもどりたくなる。

それにしてもみくさんは、男女問わず絶妙にもやもやする人物を書くのがうまい。こういう人、いる。

でた。マリコの、「どうして?」攻撃。こちらが隠したいと思って、あえて言葉を濁してるんだから、それくらい気づいて欲しい。

咲子と"幽霊"との心の交流が個人的に好きだった。
そして途中で幽霊から忠告されるも、咲子が自らの目で事実を確かめにいったシーンが、現実ならちょっとシリアスに落ち込むと思うんだけど、コミカルで楽しめた。

この作品も、好きだなぁ。


2番目の子ども

ある日、少女が家族3人を殺害した。事件をニュースで知るなり、動揺して泣き崩れる由香里は、彼女の母だった。離婚して置いてきた娘を思って泣く母を見て、人間の娘である環奈は──。

今よりも未来の世界観で進んでいくミステリー。最後まで読んでしばらく脱力していた。

血縁とは、家族とは。そんなことを深く考えさせられる作品だった。

みくさんの作品をたくさん読んで好きだなと思ったのは、表裏一体で不完全な人間を描いていること。

すこし話をずらすと、実写版シンデレラの主人公エラ(シンデレラ)がわたしは苦手だ。当時2歳だった娘がなぜかハマり、1ヶ月くらいずっとこの映画が家で流れていた。

わたしは洗いものをしながらエラに冷めた目を向け、継母を見て悲しくなっていた。
エラは狂信的なくらいに善良だった。完璧な善には圧がある。他者を許さないような。(物語ではあえてそう描いている感じがした)

子どもの頃ならきっとエラが大好きになったはずだ。けれども、完全すぎる善なる彼女を見ると息苦しかった。

みくさんの作品では、善人にもほのかな悪や不器用さが、悪人にも事情が見えてくる。そこが公平で好きだと思った。



天才と凡才

一卵性双生児の唄子と沙莉。妹の沙莉は、才能に溢れた姉の唄子に日々嫉妬していた。 ある日、沙莉はインターネットでどんな願いも叶える「ミラーペンダント」という商品を見つけて──。

みくさんは、劣等感の描写がなんてうまいのだろう。

わたし自身はやや年の離れた弟がひとりいるだけで、そこまで劣等感なく生きてこられた。でも、双子という比べられやすい環境にいる同性。鏡合わせのように抱く感情──。

そこまで劣等感なく、と書いたものの、子どものころから周囲は弟ばかりをほめていた。いちばんつらかったのは、観光地で外国人たちと出会ったとき、「かわいい!写真を撮りたい」と言われ、わたしはどかされて弟だけが撮られたときだ。
あのときのむなしさは今でも鮮明に覚えている。

すこし話がずれるのだけれど、そんなわたしにそっくりなはずの息子は、あらゆる人から「かわいい」「イケメン」「きれいな顔」と言われている。
もしかして、周りの目が曇っていただけでわたしもかわいいのでは!? と一瞬期待して、やがて答えが出た。

息子は、丹念に研究したフルメイクで顔を加工したあとのわたしに似ているのだ。
つまり、わたしの上位互換なのである。

わたしがアイシャドウで大きく錯覚させている目や、のっぺりした鼻をシャープに見せるためにほどこしたシェーディング。オーバーめにリップをぬったくちびる。
そういうものを、息子は加工無しに持っているのだ。
とくに家系では弟にしか見られない、マツエク級に長くてふさふさしたまつ毛がそれを物語っていた。

しかも、私が持っている余分なもの──たとえばメイクではどうにも加工しきれない歯並びの悪さなど──は持っていない。

異性でもこんなふうに突きつけられる現実を、同じ学年で日々目にしていたら……。


そして、中盤。まるであわせ鏡のように、視点が変わると見えてくるものが変わる。他視点の物語を読むのが好きで、自分が書く時もなるべくそうしている。
ひとりの視点では見えなかったものが、他者の目を通して見えてくる時、ぞくりとすることがある。この作品もそうだった。

今回の作品は終盤からラストシーンもとくに好きだなと思った。なにを選ぶのか。どう生きるのか。そんな問いかけをもらったような気がします。



誰が僕を殺したのか

天才ゲームクリエイター白岩蓮は、ある日殺された。死後の世界で自らが作ったゲームのキャラクターである悪魔に出会ったが──。

うわ、そういうことだったのか。終盤、蓮と同じように、わたしもまた混乱した。まさかそんなことだなんて思いもしなかった。

そこからさらに、予想外の展開が訪れる。

世界観も面白いと思った。未来の世界。こういう世界観はありえそうだ。



あなたの懸賞金を決めて下さい

この作品のタイトルは、前から知っていた。フォロワーさんが投稿したレビューの通知などさまざまなところで目にしていたからだ。
前作を読んでから読む方が深く刺さる。こちらがスピンオフというのだから驚きだった。

まるでSFのように見えるのだけれど、それでも妙なリアリティーがあった。いつかこんなことがあるのではないか──
ちょうど読み終えたあと、ドローンの展示を見た。農業で薬剤散布をできるというものだったが、子供が乗れそうなくらいに大きい。
こういうものが、違う使われ方をする時代も近いのではないか。背筋が粟立った。


宵闇の畔で、あなた円舞曲を

全3話の読み切り短編集。ファンタジーとホラーが混ざりあった雰囲気。

みくさんにはどれだけの引き出しがあるのだろう。
そう思えてならなかった。これまで読んできた作品とはまた毛色の違う、幻想的な色合いや不思議さを孕んだ作品。

特に好きなのは1話目だった。
哀しくてうつくしい。

終わり方が曖昧なのもこの作品に合っていると思った。想像することでより深まる余韻に酔わされた。



すべては、嘘から始まった

幼なじみの山賀菜月との結婚を控えていた立花隼人は、婚の報告を兼ねて港高校の同窓会を企画した。ところが、招待していた亜由美から「同窓会には行けない」との一通の連絡が届く──

ミルフィーユのような物語だと思った。いくつもの謎が複雑に重なり合っている。

登場人物が多いのに、読み終えてもひとりひとりの生き様が頭に残った。ほかの作品の感想でも書いたけれど、悪人にもまた被害者な面があり、それが悲劇へとつき動かしていくむなしさを感じた。

どうすればこの悲劇は防げたのだろう? 最後の彼女の選択を思うとこころがぎゅっとなる。自らもその思いを持ちながら、思われる相手たちに攻撃的にならなかった彼女はとても高潔なのではないだろうか。

だれがいちばん悪かったのだろう。 ひとりひとりの背景を知ればこそ、せつない。

また、冒頭で紹介した『あの子ばかりエコ贔屓しないで。私を見てよ』でも思った。娘から母親へのせつない愛に胸を打たれる。

どんな作家さんにも、ひとりひとり違う背景があり、その過程で生まれたモチーフがあると思っていて。みくさんの場合、そのひとつが母と娘なのではないか。そんなことを、考えた。


すべて読んでの感想

みくさんの作品を読んで、素敵な個性だと思ったことを紹介する。

尖っている

設定や世界観が尖っている。新しい。今のこの時代に即していて、作品によってはもっと先のありえそうな未来まで描いている先見の明にぞくりとした。

鋭さ

みくさんの文章は、読みやすくすっきりとしている。だから世界観にするりと誘われるのだけれど、どの物語にも読み終えたあとに心を深く穿たれたような鋭さがあった。本質を問われているような感じ。

白と黒が滲む

善人にも悪人にもそれぞれの事情があり、全員が濃度の違うグレーさをもつ人物なのではと思った。だからこそリアルで、そして人間味がある。だからキャラクター一人一人が、印象に残る。
たいていは思い入れのあるキャラクターほど"善"に寄りやすいと思うので潔く素敵だと思った。


たくさんの素敵な物語を読ませてもらい、くらくらしている夜です。みくさんの作品の素敵さを少しでも描けていたらうれしいな。



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三條 凛花 最後までお読みいただき、ありがとうございます♡