見出し画像

エンタテインメントとわたしと

普段の私は、どちらかといえば自分の内的な世界や、整えられた日常のルーティンの中に身を置くことを好むタイプだ。
休日ともなれば、もっぱら家の中で過ごすことが多く、あえて人が密集する場所や、予測不可能なエネルギーが渦巻く空間へ自ら足を運ぶことは滅多にない。
自分のペースで思考を整理し、日々のタスクや仕事のシステムを組み立てていくこと。
それが私にとっての心地よい休日の過ごし方であり、心の平穏を保つための最適な方法だった。

しかし、先日の休日は、そんな私の静かな日常に小さな、そして鮮烈な「非日常」の風が吹き込むこととなった。

きっかけは、妻からの誘いだった。
「仙台で行われるポルノグラフィティのライブに、一緒に行かないか」という提案である。
妻と、そして農作業に励む20歳の息子と、家族3人で揃って遠出をするのは本当に久しぶりのことだった。
普段のインドアな私であれば、少し気後れしてしまったかもしれない。
しかし、その時の私は、熱心に誘ってくれる妻の言葉と、何より「家族3人で時間を共有する」ということの貴重さに背中を押され、二つ返事で仙台行きの車に乗り込むことにした。

山形から宮城へと向かう道中、車窓から流れる景色を眺めながら、私はどこか新鮮な高揚感を覚えていた。
それは単に「遠出をする」ということに対するワクワク感だけではなく、普段の枠組みから一歩外へ踏み出すことへの、静かな期待感でもあった。
今回は、そんな私が久しぶりの非日常の空間で浴びた「エンターテインメントの熱量」と、そこから見つめ直した「わたし」のあり方、そして家族との愛おしい時間について書き残しておきたいと思う。


✅スタジアムに渦巻く熱量と、ファンではない私が受け取ったもの

仙台の会場に到着した瞬間、私は言葉にできない圧倒的な空気感に包まれた。
そこにいたのは、これから始まる夢のような時間を今か今かと待ちわびている、数千、数万の人々だ。
彼ら、彼女らが放つエネルギーは、まるで目に見えるかのように空間全体を震わせていた。
「これから何かが爆発する」という強烈な予感と、そこに集まる全員の期待が一つの方向へと収束していく感覚。
その凄まじい熱気に、私は入場の時点で早くも圧倒されそうになっていた。

正直に告白すれば、私はポルノグラフィティの熱烈なファンというわけではない。
もちろん、テレビやラジオ、街中で流れる彼らの代表曲は知っているし、耳にすれば「良い曲だな」と感じる程度の知識は持ち合わせていた。
しかし、周囲の観客たちのように、すべてのアルバムを聴き込み、彼らの歴史を熱狂的に共有しているわけではない。
そんな自分が、この熱量の中心に飛び込んでしまって本当に楽しめるのだろうかという、一抹の不安があったのも事実だ。

しかし、そんな不安は、ライブのオープニングを告げる一音が響き渡った瞬間に、完全に消し飛んでしまった。

ステージから放たれる圧倒的な音圧。
計算し尽くされた光の演出。
アーティストの卓越したパフォーマンスと、それに応える観客たちの地鳴りのような歓声。
すべてが一体となり、スタジアム全体が一つの巨大な生命体のように躍動し始めた。

ファンであるか否かなど、あの空間の圧倒的な「熱量」の前では、些細な問題でしかなかった。
知っているイントロが流れれば自然と身体がリズムを刻み、アーティストの呼びかけに応じる観客の動きに、私の視線も引き付けられていく。
そこに溢れていたのは、他者を巻き込み、瞬時にその場の全員を主役へと変えてしまうような、純粋で濃密なエネルギーだった。

普段の私は、物事を効率的に処理したり、論理的に組み立てたりすることに意識が向きがちだ。
しかし、あの空間に流れていたのは、そうした理屈をすべて飛び越えた「感情の爆発」だった。
これほどまでに人を興奮させ、笑顔にし、一瞬で一つにまとめてしまうエンターテインメントの力。
ファンではないからこそ、私はどこか客観的な驚きを持ちつつも、その渦中に身を置くことの純粋な心地よさを、全身で味わっていた。

✅非日常の光の中で顔を出す「悪い癖」と、それすら溶かす空間の魔法

ライブが中盤に差し掛かり、演出がさらに華やかさを増していく中で、私の脳裏にふと、いつもの「悪い癖」が顔を出した。
私はグラフィックデザインやweb制作、あるいはビジネスの仕組み化といった仕事に長年関わってきた人間だ。
そのため、目の前で繰り広げられる素晴らしいエンターテインメントを観ながらも、無意識のうちにその「裏側」を分析しようとしてしまうのだ。

「このタイミングでこの照明が切り替わるのは、どのようなプログラミングによるものだろうか」
「観客の視線をこれだけ一方向に集めるための、ステージ上の動線設計はどうなっているのか」
「この一体感を生み出すための、演出全体のディレクションの妙とは何だろうか」

せっかくの非日常の空間にいるというのに、頭の片隅で仕事のロジックや効率性、デザインの構成を考えてしまう。
それは、長年の職業病とも言える私の思考の癖だった。
ふと我に返り、「いけない、今はただ楽しむ時間なのに、なぜこんなことを考えているんだ」と、自嘲気味に苦笑いしてしまう瞬間もあった。

しかし、今回のライブが持つ魔法は、そんな私のひねくれた「悪い癖」さえも、優しく包み込んで溶かしてしまうほどのものだった。

どれだけ裏側のシステムを想像しようとしても、ステージから押し寄せる光と音の奔流は、私の貧弱な分析を簡単に押し流していく。
気がつけば、「凄いな」「美しいな」という原始的な感動が、分析的な思考を上回っていた。
仕事のスイッチを完全にオフにすることは難しくても、その思考がネガティブなノイズに変わることはなく、むしろ「これほどのエンタメを作り上げる人間たちの情熱は凄まじい」という、純粋なリスペクトへと昇華されていったのだ。

何より、私の心を現実に引き戻し、そして満たしてくれたのは、隣にいる家族の存在だった。
ふと横を向くと、そこには普段の生活の中では見られないほど、目を輝かせ、心から楽しそうにステージを見つめる妻と息子の姿があった。
家族のその嬉しそうな横顔を見た瞬間、私の頭の中にあった理屈や仕事の雑念は、綺麗さっぱりと消え去った。

家族がこれほどまでに喜び、感動している。
その姿を特等席で見られていること自体が、私にとって何よりのエンターテインメントであり、最高の癒やしだったのだ。
変に冷めた気持ちになることもなく、私もまた、家族と一緒にその熱量の一部となり、素晴らしい時間の波に身を任せることができた。

✅帰り道の静寂と、はしゃぐ家族の声を聴きながら

興奮の坩堝(るつぼ)だったライブが終わり、私たちは現実の世界へと戻ってきた。
会場を出た後の夜風はどこか心地よく、火照った身体を優しく冷ましてくれるようだった。
私たちは遅めの夕食をとるために、近くのレストランへと入った。

テーブルを挟んで向かい合う妻と息子の顔には、まだ先ほどまでの興奮の余韻が色濃く残っていた。
運ばれてきた料理を食べながら、二人の口から次々と飛び出すのは、ライブのあのシーンが良かった、あの曲の演出が最高だった、という熱い感想の数々だ。
どうやら妻だけでなく、息子も今回のステージでポルノグラフィティの歌がすっかり気に入ったらしく、普段よりも少しはしゃいだ様子で、身を乗り出して楽しそうに話している。

私は、そんな二人の様子を少し離れた視点から、ただ静かに眺めていた。
その時間は、私にとって何にも代えがたい幸福なひとときだった。
普段、家の中でそれぞれが自分の時間を過ごしている中では、これほどまでに一つのテーマで家族全員が盛り上がり、笑顔を交わす機会は少なくなっていたかもしれない。
妻の思い切った誘いがあったからこそ、私たちはこうして、一つの素晴らしい体験を共有し、同じ思い出を刻むことができたのだ。

レストランを後にし、山形への帰り道。
車内には、さっそく彼らの楽曲が流れていた。
ハンドルを握る私の耳に、カーステレオから流れる力強い歌声と、それに合わせて小さく口ずさむ妻と息子の楽しげな声が届く。

夜の暗闇の中を走る車内は、外界から切り離された、私たち家族だけの小さな、そして温かい空間だった。
行きの道中とは違い、帰りの私は、心地よい疲労感に包まれていた。
日頃の緊張が解け、素晴らしいエンタメの余韻と、家族の満たされた気配に包まれる中で、私の意識は次第にとろけていく。

助手席で、あるいは後部座席の気配を感じながら、私はこくりこくりと眠気を覚え、心地よい微睡(まどろみ)の中に身を任せていた。
自分で運転しているわけではない安心感(※あるいは、家族が運転を代わってくれた優しさ)の中で、二人の楽しそうなはしゃぎ声を子守唄のように聴きながら過ごす帰路は、この上なく贅沢なものだった。

自宅に到着し、いつもの我が家の玄関をくぐったとき、私の中に残っていたのは、確かな「心の充電」が完了したという感覚だった。

エンターテインメントとは、単に消費されるだけの娯楽ではない。
それは、日常に埋もれがちな私たちの感情を揺り動かし、大切な人との絆を再確認させ、明日からの日々を生きるための活力を与えてくれる、目に見えない処方箋のようなものなのだ。

普段の静かな日常も愛おしいが、時としてこうして誘われるがままに非日常の熱量を浴びに行くことも、人生には必要なのだと知った。
素晴らしいステージを見せてくれたアーティストたち、会場を包んでいたすべての観客、そして、私をあの最高の空間へと連れ出してくれた妻と息子に、心からの感謝を込めて。

私の日常は明日からまた、いつものように規則正しく始まっていく。
しかし、その足取りは、仙台へ向かう前よりも、ほんの少しだけ軽やかになっているはずだ。


✅LINE公式アカウント

心を整える事のご相談、家事育児の悩みのご相談は
LINEでご連絡くださいね。
😊


✅お知らせ

りんだーくの定期マガジン【エッセイ集】を発行しました。
毎日更新のこの記事よりも、より細かく人生の生き方のコツや日々思った事を書いたエッセイを書いています。
気になる方はこちらをどうぞ。
りんだーくの定期マガジン【エッセイ集】


✅合わせて読みたい


✅インフォメーション

🐰X(旧Twitter)(フォローお願いします😊)
🐰Instagram(見に来てね😊)

📖Blog
 🔹主夫の楽しい生活Blog(主夫が楽しく暮らすあれこれのBlog)
 🔹
リン☆だあくの家事MAX(主夫になりたい人を応援するBlog) 
 🔹
リン☆だあくの副業術(主夫をしながらでも副業をやる情報のBlog)

🔵お仕事依頼(グラフィックデザイン/オンライン秘書)
🔵お知らせ
🗺サイトマップ


🙌サポートして頂けると飛び上がって喜びます!😍

#エッセイ #コラム #生き方 #毎日更新 #毎日note #楽に生きる #楽しく生きる #人生 #短編小説 #物語

いいなと思ったら応援しよう!

りんだーく@📖note連続更新1000日以上達成❗ ✅よろしければサポートお願いします❗ 毎日更新の励みになります😊 頂いたサポートは、毎日の活動費(スタバ代など)に大切に使わせていただきます❗❗これで、スタバでコツコツ記事を書くことができますー。ありがたいです。🙏