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「ケアマネって、無料だったの!?」──老人ホームのケアプラン有料化ニュースから考える、介護保険の“入口”の話



2026年5月26日、こんなニュースが流れました。

「老人ホームでケアプラン一部有料化、介護保険法改正案が衆院を通過」

このニュースを見て、こう思った方も多いんじゃないでしょうか。


「ケアプランって、今まで無料だったの?」


訪問診療や訪問看護の現場で働いていると、ケアプランは毎日のように関わる、ごく当たり前の存在です。

でも一般の方からすると、
「そもそも何なのか」
「お金はどうなっているのか」

まではなかなか見えにくい。


実際、現場にいる私から見ても「これは知られていないだろうな」と感じる仕組みがいくつもあります。

そこで今回は、ニュースをきっかけに、その“見えにくい部分”を整理してみます。


そして調べていくと、
これは単に「月に1000円増えるかどうか」という話ではなくて、“介護保険の入口そのもの”に関わる話なんだな、と感じました。


まず、今回のニュースを正確に


ニュースの見出しだけ見ると
「介護のケアプランが有料になる」と読めてしまいますが、実際の中身はもう少し限定的です。


- 介護保険法などの改正案が、5月26日に衆議院を通過した(※まだ参議院が残っているので「成立」ではありません。)

- 対象は「住宅型」の有料老人ホームに入居する、重度の要介護者など(住宅型に住む全員ではなく、要介護度などで絞られる見込みです)

- ケアプランの作成と生活相談の費用を有料化し、原則1割の負担を求める

- 所得によっては2〜3割になるケースもある

- 自宅で訪問・通所サービスを使っている人は、これまで通り無料のまま

- 施行は原則2027年4月1日の予定(一部は段階的に実施)


つまり「在宅で介護を受けている人全員が、いきなり有料になる」という話ではありません。


まずは特定のタイプの施設、しかもその中の重度の方などに絞られた話、というのが正確なところです。

この「自宅利用者は据え置き」という一文に、ちょっとほっとした人もいるかもしれません。

そもそも「ケアプラン」って何?


介護保険を使って、

- ヘルパー
- 訪問看護
- デイサービス
- 福祉用具
- ショートステイ


などを利用するには、基本的に「ケアプラン」が必要です。

これは、

どんなサービスを、どれくらい使うか

をまとめた、いわば生活の設計図みたいなもの。

そして、この調整をしているのがケアマネジャー(介護支援専門員)です。

- どの事業所を使うか
- 週に何回訪問してもらうか
- 医療との連携をどうするか
- 介護保険の限度額を超えないか


こういったことを、利用者・家族・各事業所のあいだに立って調整しています。在宅医療の現場だと、本当に“司令塔”みたいな存在です。

意外と知られていない① 
利用者の負担は「0円」だった


ここが、多くの人が「えっ」となるところだと思います。

ケアマネジャーには、もちろん報酬があります。でもそれは介護保険から支払われていて、利用者本人の自己負担は、これまで0円だったんです。

つまり、

「無料サービス」

というより、

「みんなの介護保険料で支えられているサービス」

だったんですね。
タダで誰かが働いてくれていたわけではなく、財源の出どころが“見えにくかった”だけ、という言い方が近いかもしれません。


参考までに、現在のケアマネ報酬はざっくりこのくらいと言われています。(これは事業所が受け取る「基本部分」の目安です)

ただ、ここで知っておきたいのが「加算」の存在です。

たとえば24時間連絡がつく体制を整えていたり、難しいケースに対応していたりする手厚い事業所は、「特定事業所加算」という上乗せの報酬を受け取れます。
これが月に数百円〜五千円ほど、基本部分にプラスされます。

ポイントは、今の制度では、この加算分も含めて全額が介護保険から支払われていて、利用者の自己負担はやっぱり0円だということ。
加算は「事業所が受け取れる報酬が増える」だけで、利用者の払う額が増えるわけではありませんでした。


ところが、有料化されるとこの関係が変わります。1割負担が導入されれば、手厚いサービスで報酬(加算)が増えるほど、その1割である利用者の自己負担も増えることになります。


「コストを意識してもらう」という国の狙いは、まさにこの構造の変化を指しているわけです。

「たった1000円でしょ?」
と思う人もいるかもしれません。

でも現場で高齢者の暮らしを見ていると、
その1000円が重い人は、本当にいます。

意外と知られていない②
なぜ“住宅型の老人ホーム”から?


今回の対象が「住宅型の有料老人ホーム」に絞られているのには、理由があります。

ひとつは公平性の話。
実は同じ有料老人ホームでも「介護付き」のタイプでは、入居者はサービス料の一部として、すでにケアプラン作成費などを負担しています。一方で「住宅型」は制度上“居宅(在宅)”扱いになるため、これまで無料でした。

同じように手厚いサービスを受けていても、片方は負担あり・片方は無料、という状態を揃えよう、というわけです。

もうひとつ、背景としてよく語られるのが、いわゆる「囲い込み」問題です。

- 同じグループのケアマネ
- 同じグループの訪問看護
- 同じグループのヘルパー

を組み合わせて運営しているケース。
もちろん全部が悪いわけではありません。
でも制度上、

「サービスが増えやすい」
「本当に必要な量なのか、外から見えにくい」

という議論が、以前からありました。
利用者が費用を意識することで、漫然としたサービス利用にブレーキをかけたい──そんな狙いも含まれているようです。

知られていない選択肢「セルフケアプラン」


ニュースの本筋からは少し外れますが、ここで知っておきたい選択肢があります。

実は介護保険って、“ケアマネなし”でも使えるんです。

本人や家族が自分でケアプランを作る方法があって、これを「セルフケアプラン(自己作成)」と呼びます。あまり知られていませんが、制度としてはちゃんと認められています。

ただ、結論から言うと、現実にはなかなかハードルが高い選択肢です。
メリット・デメリットを並べてみると、その理由が見えてきます。

こうして並べてみると、「自由度が高い」とも言えるし、「全部ひとりで背負うことになる」とも言える。


ただ、正直に言うと、私はあまり積極的におすすめはできません。

知人のケアマネジャーに尋ねたところ、セルフケアプランだとサービス事業所側から受け入れを断られることがあるそうです。
事業所からすると、ケアマネを通したやりとりに比べて連絡や調整の手間が読めず、敬遠されてしまう面があるのかもしれません。

本人や家族がどれだけ頑張って計画を立てても、肝心のサービスにつながらなければ意味がない――ここが現実の壁です。

もちろん、ケアマネが「自分の懇意にしている事業所」ばかりからサービスを選ぶような偏りも、それはそれで望ましくありません。

だからこそ今回のニュースのような「中立性」の議論があるわけで。なんとも言えないところです。

それでも、医療と介護が複雑に絡む在宅の現場を見ていると、調整役なしで家族だけがやり切るのは、やはりかなりハードルが高いと感じます。「そういう制度もある」と知っておくのは大事ですが、現実的な第一候補としては、信頼できるケアマネジャーを見つけることのほうを、私はおすすめしたいです。

だから現場の感覚としては、今回の話は「ケアマネ費用が月1000円増える」というより、

「介護の“入口”そのものに、負担が発生し始める」

という捉え方に近いのかもしれません。


“調整する人”は、実はかなり重要


在宅医療の現場で働いていると、

誰かが調整役をやっているから、在宅生活が回っている

という場面を、本当によく見ます。

訪問診療、訪問看護、ヘルパー、薬局、デイサービス、福祉用具、そして家族。

これらが別々に動いてしまうと、生活はあっという間に崩れます。誰かが真ん中に立って、全体を見て、つなぎ直す。その役割が、どれだけ大きいか。

だから今回のニュースは、私にとって単なる「値上げ」の話ではなく、

在宅を支えている構造”そのもの

に関わる話として、心に残りました。

まずは住宅型の有料老人ホームから。
でも、こういう議論は少しずつ広がっていくものでもあります。「自分には関係ない」ではなく、「介護の入口にお金の話が入ってきた」という変化として、頭の片隅に置いておいてもいいのかもしれません。

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