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ままならない人生は親のせい?

町田そのこの『星を掬う』を読んだ。主人公は、元夫からのDVに苦しんでいる女性。母と過ごした最後の夏が唯一の輝く思い出であり、その幸福を母から唐突に断ち切られたことがその後の人生の暗さを決定づけたと思っている。

その夏の輝きをラジオ番組に投書し採用されたことで、音信不通だった母とつながる。彼女を迎えに来たのは、母を慕う若い女性。母は、血のつながらない人たちとともに暮らし、家族になっていた。娘の自分は捨てておきながら、保守的な祖父母のもとに置き去りしながら、自分は好きなように生きてきた。彼女は反発する。

あのひとは、わたしがどんな情けない人生を歩んで、どんな風に苦しんできたかなんてどうでもいいんですよね。親に捨てられた子どもがどんなに歪んで育つかなんて、想像もしてなかったんだと思う。

若年性認知症の母を世話する医者が、それを聞いて言う。

親に捨てられて苦しんできた、なるほどなるほど、大変だったかもしれないね。でも、成人してからの不幸まで親のせいにしちゃだめだと思うよ。
…  中略 …
君の言う『捨てられた歪み』ってのがそれかもしれないけど、君自身の怠慢でもあるよ。母親のせいにして思考を停止させてきたんだろうなあ。

巻末の解説によると、著者の町田そのこさん自身が「不幸を親のせいにしていいのは、せいぜいが未成年の間だけだ」と早く誰かに言われたかったそうだ。正論パンチが誰にでも効くとは、私には思えない。自分を戒める言葉としてならわかるけど。

何もしていなくても耐えがたい不幸や不条理に見舞われる人もいる。愛情を受けるべき親から虐待されて育つ人もいる。それはその人たちのせいじゃない。そりゃ、運を呪ったり親に責任取れと言ってみてもいいことなんか何にもない。でも、苦しんできた人の傷に塩を擦りこんでもいいことはないと思う。

フィッツジェラルドが「グレート・ギャツビー」の冒頭でこう書いている。
語り手のニックがいつも心に置いている父親の言葉として、「誰かを批判したくなったら、世の中の誰もがお前のように恵まれているわけじゃないことを思い出せ」

In my younger and more vulnerable years my father gave me some advice that I’ve been turning over in mind ever since.
  ‘Whenever you feel like criticizing anyone,’ he told me, ‘just remember that all the people in this world haven’t had the advantages that you’ve had.’

The Great Gatsby, F. Scott Fitzgerald 

ニックはええとこのボンなのでしっくりきますが、大多数の人には「オレ/私は恵まれてなんかいない!」と反発をくらいそうだ。でも、人を批判したくなったら、立ち止まって相手の状況をもう一度考えてみるのはいいことだと思う。

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