第十話 春になっても|10年越しの答え合わせ
第二章 ナオ君編
第十話 「春になっても」
春が来た。
俺はファッションの専門学校へ。
リオは大学へ。
それぞれ、
新しい毎日が始まった。
あの日、
合格を伝え合ったメールを最後に、
俺たちが連絡を取ることはなくなった。
リオへの気持ちが消えたわけじゃない。
喧嘩をしたわけでもない。
ただ、
新しい生活が始まって、
気づけば、
メールを送る理由がなくなっていた。
「受験が終わったら。」
あの日の約束も、
どちらからともなく、
口にすることはなかった。
専門学校では、
毎日が発見の連続だった。
コーディネートの組み方。
色の合わせ方。
ブランドごとの特徴。
服一つで、
人の印象がこんなにも変わることを知った。
高校とは違い、
周りにはファッションが好きな仲間ばかり。
すぐに気の合う友達もできた。
授業が終わると、
みんなで街へ出て、
洋服屋を何軒も見て回る。
「この組み合わせいいな。」
「この色、今年流行りらしいよ。」
そんな話をしている時間が、
何より楽しかった。
将来どんな仕事がしたいか。
どんな職場で働きたいか。
夢を語り合う時間も増えた。
同じ目標を持つ仲間と過ごす毎日は、
自然と俺を前向きにしてくれた。

季節も、
少しずつ変わっていく。
桜は葉桜へと変わり、
日差しも少しずつ強くなっていた。
気づけば、
高校を卒業してから数か月が過ぎていた。
それでも、
ふとした瞬間、
リオを思い出すことはあった。
映画館の近くを通った時。
一緒に歩いた交差点を渡った時。
カップルで楽しそうに歩く高校生を見かけた時。
「リオ、元気にしてるかな。」
そんなことを思う日はあった。
でも、
携帯を開くことはなかった。
きっと、
リオも大学生活を楽しんでいる。
新しい友達ができて、
新しい毎日を過ごしている。
もしかしたら、
彼氏もできたかもしれない。
リオが笑っているなら、
それでいい。
そう、自分に言い聞かせていた。

リオへの気持ちは、
終わったわけでも、
続いていたわけでもない。
ただ、
静かに、
思い出へ変わっていく途中だった。
そして、その数か月後。
一本の電話が鳴る。
相手は、
高校時代の友達だった。
「今度さ、みんなで集まらん?」
懐かしい声に、
「いいよ。」
深く考えることもなく、
そう返事をした。
あの日の俺は、
その集まりが、
止まっていた気持ちを、
もう一度動かすことになるなんて、
思いもしなかった。
第十一話へ続く
リオ編も読んで、
答え合わせしませんか?
