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第十一話 忘れたふり|10年越しの答え合わせ

第二章 ナオ君編
第十一話 「忘れたふり」


久しぶりに、

高校の部活仲間四人で集まることになった。

卒業してまだ数か月。

それぞれ違う学校へ進んだけれど、

顔を合わせれば、

高校の頃と変わらない空気が流れていた。


学校のこと。

バイトのこと。

高校時代のこと。

話題は次々に変わっていく。


そんな中、

シンヤが少し照れくさそうに笑った。

「実はさ。

今、気になる子がいるんだよね。」

「へぇ、どんな子?」

みんなが興味津々で身を乗り出す。


「2組の水野、覚えてる?」

「ああ。

シンヤと水野、大学一緒なんだっけ?」

「そうそう。

その水野が連れてきた子。」

その言葉に、

何となく胸がざわつく。


「その子、

S高校出身でさ。」

S高校。

俺の頭に、

一人の姿が浮かぶ。


「背が低くて、

ちょっと可愛らしい感じの子。」

心臓が、

ドクンと鳴る。


まさか。

そんなはずはない。

それでも、

確かめずにはいられなかった。

「……名前は?」

自分でも驚くくらい、

顔が引きつっていたと思う。


シンヤは何気ない様子で答える。

「リオ」


その一言で、

頭の中が真っ白になった。

やっぱり、

リオだった。


思わず、

「俺、その子知ってる。」

そう口にしていた。

「え?」

その場の視線が、

一斉に集まる。

「高校の時、

少しだけメールしてた。」

「マジか!」

「そんな話、一回も聞いたことない。」

みんなが驚いたように笑う。

シンヤは少し複雑そうな表情をしていた。

「なんで今まで黙ってたん?」

「いや……

別に隠してたわけじゃないけど。」

苦笑いしながら答える。


「じゃあナオキ、

今電話してみよーぜ。」

「え?」

「ナオキ、仲いいんだろ?」

「いや、無理無理。」

首を横に振る。


卒業してから、

一度も連絡を取っていない。

突然電話なんて、

できるはずがなかった。


「いいから一回だけ!」

「ほら、シンヤも話したいって」

その場の勢いに押され、

俺は携帯を手に取った。


呼び出し音が鳴る。

胸の鼓動まで、

一緒に鳴っている気がした。


しばらくして、

電話がつながる。

「もしもし?」

聞こえてきたのは、

間違いなくリオの声だった。

懐かしかった。

たった一言で、

胸の奥にしまっていた思い出が、

一気によみがえる。


「久しぶり。」

それだけ言うのが精一杯だった。

少しだけ近況を話す。


大学のこと。

最近何をしているのか。

卒業してからのこと。

聞きたいことは、

いくらでもあった。


でもーー

「シンヤに代わるわ。」

そう言って携帯を渡した。

もっと話していたかった。

でも、

話し続ける理由が、

もう俺にはなかった。


シンヤは笑いながら話している。

リオも楽しそうに笑っている。

その声を聞いているだけで、

なぜか胸の奥が締めつけられた。


もし、

二人が付き合ったら。

そんな考えが、

頭をよぎる。


電話は数分で終わった。

「また連絡するわ。」

そう言ってシンヤは携帯を閉じた。

周りは、

「いい感じじゃん。」

と笑っていた。

俺も笑った。

でも、

心の中だけは笑えなかった。


帰り道、

一人になって気づく。

忘れたと思っていた。

でも、

そう思い込んでいただけだった。


もしリオとシンヤが付き合ったら。

そう思っただけで、

胸の奥が締めつけられた。


その理由を、

あの頃の俺は、

まだちゃんと言葉にできなかった。

だから、

何もしなかった。


その日を境に、

また時間は静かに流れ始める。

次にリオと話すことになるのは、

ずっと先――

十年後のことだった。


第十二話へ続く


リオ編も読んで、
答え合わせしませんか?



時は流れ、
大学生になったリオ。
新しい春のお話。


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