見出し画像

第四話 サークル|新しい春

第三章 ユウ先輩編
第四話 「サークル」

初めてのサークル活動の日。

授業が終わると、
ユリとナナと三人で部室へ向かった。

「なんか緊張するね。」

「知ってる先輩、ハヤト先輩しかいないし‥」

少しだけ深呼吸をして、部室の扉を開けた。


「おっ!」

私たちに気づいたハヤト先輩が、大きく手を振る。

「ちゃんと来たな!」

その一言だけで、肩の力がふっと抜けた。


部室には二年生や三年生もいて、
思っていたよりずっと賑やかだった。

自己紹介をしたり、

みんなでゲームをしたり。

初めて来た場所なのに、
気づけば自然と笑っていた。

ハヤト先輩は相変わらず、輪の中心にいた。

誰とでもすぐに打ち解けて、
気づけば周りは笑顔になっている。

その姿を見ているだけで、こっちまで楽しくなる。


ふと目を向けると、
少し離れたところにユウ先輩がいた。

誰かの話を聞いて、
時々、小さく笑う。

自分から前へ出ることはないのに、
気づけば、周りには人が集まっている。

不思議な人だった。


気づけば、
また視線はユウ先輩を探していた。

話しかけたいわけじゃない。

目が合いたいわけでもない。

なのに、
気づくと探してしまう。


サークルが終わり、
みんなで部室を出る。

「お疲れ!」

部長の声に続いて、
あちこちから「お疲れさまでした。」
という声が聞こえた。

私も小さく頭を下げる。


「お疲れ。」

その声に顔を上げると、
ユウ先輩が少しだけ笑っていた。

「お、お疲れさまです。」

ちゃんと言えたのか、
自分でも分からなかった。

それでも帰り道、
頭の中に残っていたのは、

サークルの楽しさでも、
ハヤト先輩の笑顔でもなかった。


「お疲れ。」

たった一言。

それだけなのに。

帰り道、
気づけば私は、
その一言を何度も思い出していた。


第五話へ続く


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集