第十二話 今度、会わない?|10年越しの答え合わせ
『久々にリオに会ってみたいな』
そのLINEをもらってから、
私は何度もその言葉を思い返していた。
「会いたい」
たったそれだけなのに、
心のどこかが落ち着かなかった。
高校生の頃なら、
きっと一晩中浮かれていたと思う。
でも私はもう二十八歳。
数ヶ月後には結婚式を控えている。
だからあの頃みたいに、
素直には喜べなかった。
会ってどうするの?
今さら何を話すの?
そんな気持ちもあった。
その一方で、
聞いてみたいことも山ほどあった。
あの頃、
本当はどう思っていたの?
どうして突然メールをやめたの?
どうして何度も連絡してきたの?
そして、
どうして今なんだろう。
その答えを、
私はずっと知らないままだった。
それからもLINEは続いた。
仕事の話。
友達の話。
高校時代の思い出。
たまに面白い画像が送られてきて、
思わず一人で笑ってしまうこともあった。
十年ぶりとは思えないほど、
会話は自然だった。
気を遣うこともなく、
むしろ昔の続きを
話しているような感覚だった。
そんなある日。
私は夫と結婚式場で
打ち合わせをしていた。
テーブルの上には席次表。
担当スタッフさんが披露宴の流れを説明している。
その時、
スマホが震えた。
何気なく画面を見る。
ナオ君だった。
私は慌ててスマホを伏せる。
悪いことをしているわけじゃない。
それなのに、
なぜか見られたくなかった。
打ち合わせが終わると、
私はこっそりLINEを開いた。
『この前話してたやつだけどさ』
続けて届いたメッセージを見る。
『今度ほんとに会わない?』
私はしばらく動けなかった。
冗談じゃなかったんだ。
あの時の
「会ってみたいな」は。

自然と高校生の頃を思い出していた。
全部、
中途半端なまま終わってしまった。
もしあの頃、
「もう少し勇気があったら」
そんなことを考えたのは、
一度や二度じゃない。
でも、
今さら何かが始まるわけじゃない。
私は結婚する。
ナオ君だって、
きっと彼女くらいいるだろう。
そう思っていた。
だから、
会うことに特別な意味はない。
そう自分に言い聞かせる。
『うん、会おっか😊』
送信ボタンを押した瞬間、
胸の奥が少しだけ熱くなった。
十年ぶりの再会が、とうとう決まった。
その後は日程を決めるやり取りが続いた。
私はまだ実家暮らし。
旦那は新居で暮らしていて、
週末だけ一緒に過ごしていた。
だから自然と、
会う日は平日の夜に決まった。
『金曜日どう?』
『大丈夫だよ』
画面の向こうで約束が決まっていく。
そのやり取りは、
どこか高校生の頃を思い出させた。
違うのは、
私たちがもう大人になっていること。
そして、
お互い別々の人生を歩いてきたことだった。
この時の私は、まだ知らない。
この再会が、
十年間ずっと心の片隅に残っていた想いに、
ひとつの答えをくれることになるなんて。
【第十三話へ続く】
「十年ぶりの待ち合わせ」
