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第八話 偶然、また偶然|10年越しの答え合わせ


高校を卒業してから、
私とナオ君は連絡を取らなくなった。

あの日以来、
メールは一通も来ていない。

私から送ることもなかった。
送ろうと思えば送れた。

でも、できなかった。



もし迷惑だったら‥
もし彼女がいたら‥
もしもう忘れられていたら‥

そんなことばかり考えてしまった。


私はいつも、
傷つくかもしれないことから、
逃げることで自分を守っていた。


大学生活は本当に楽しかった。
友達もたくさんできた。

授業終わりにご飯へ行ったり、
みんなで遠出したり、
毎日が青春だった。


でも、
ふとした瞬間に思い出すことがあった。

ナオ君は元気かな?

今誰か好きな人いるのかな?

そんなことを‥


そして大学生になってしばらく経った頃。
最初の偶然は突然やってきた。

その日は友達と買い物をしていた。
大都市の大きな交差点。
人通りが多かった。

信号待ちをしながら、
友達とたわいもない話をしていた。

横断歩道を渡った後だった。

携帯が鳴り、
画面を見ると
ナオ君からだった。

心臓が跳ねる。


久しぶりだった。

メールを開く。

『今〇〇にいたでしょ?』

え?

続きが届く。

『すれ違ったよ』


私は思わず周りを見回した。

今?
どこで?
まだ近くにいる?
頭の中が混乱する。

一緒にいた友達が
私の行動を察して言った。


「あぁ!」

「そういえばさっきリオのこと
めっちゃ見てた男の子いたよ!」

私は固まった。

こんな近くにナオ君がいたんだ。

私は気づかなかった。

ほんの数メートル先にいたのに。


もしあの時、
私も気づいていたら。

話せていたのかな。

少しだけ悔しかった。

そして少しだけ嬉しかった。

高校を卒業して半年も経っているのに、
私だと分かったことが。


そのことを、しばらく引きずっていた。



そして数ヶ月後。
また偶然は起きる。

友達と広場の階段に座っていた時だった。

夕方だったと思う。
みんなで話をしていた。

そこに突然メールが届く。

『今広場にいる?』

またナオ君だった。


私はまた驚いて周囲を見渡した。

どこ?
どこにいるの?
キョロキョロ探す。

すると少し離れた場所に、
見覚えのある姿があった。

ナオ君だった。
友達と一緒に座っている。


目が合った。
私は反射的に手を振った。

ナオ君も笑いながら手を振った。
それだけだった。


話したわけじゃない。
近くへ行ったわけでもない。
ほんの数秒。


それなのに、
その日の帰り道、
お風呂、
布団の中。

私は何度もその光景を思い出していた。


不思議だった。

世の中には一度会ったきりの人もいる。

二度と会わない人の方が多い。

なのに、ナオ君とは何度も偶然会う。

まるで、
忘れた頃に思い出させるみたいに。


でも。
それ以上は何も起こらない。

会って話すわけでもない。

付き合うわけでもない。

ただ人生の中で、ふっと現れる。

そんな存在だった。


そしてその数ヶ月後。

私はもう一度、
ナオ君から連絡を受けることになる。


今度はメールではなく、
突然の電話だった。


【第九話へ続く】

「電話の向こう側」


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