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第十四話 確かめたい|新しい春

第三章 ユウ先輩編
第十四話 「確かめたい」

考えてみれば、
彼女がいてもおかしくない。

むしろ、なんで今まで一度も、
考えなかったんだろう。

好きだと気づいて、
会えたら嬉しい。

名前を呼ばれたら、
もっと嬉しい。

好きな人ができたことが嬉しくて、
その先のことなんて、
何も考えていなかった。

高校の頃から付き合っている、
遠距離の彼女。

ショウタから聞いて、
もう分かっている。

それなのに、
もしかしたら、
何かの間違いかもしれない。

もう別れているとか。

ハヤト先輩が、
昔の話をしただけとか。

そんな小さな可能性を、
まだどこかで探していた。


次のサークルの日。

ユウ先輩は、
いつもと何も変わらなかった。

ハヤト先輩と話して、
みんなと笑っている。

今までなら、
その姿を見つけただけで、
嬉しかったのに。

今日は、

ユウ先輩には彼女がいる。

その言葉が、
何度も頭に浮かんだ。


サークルが終わったあと。

気づけば私は、
いつもの校舎裏へ向かっていた。

植え込みの近くまで行くと、
ユウ先輩がいた。

しゃがんで、
猫の頭を撫でている。

「お疲れ。」

私に気づいて、
いつものように笑った。

「……お疲れさまです。」

そのまま、
隣にしゃがむ。

猫は何も知らずに、
私たちの間を行ったり来たりしていた。

「だいぶリオにも慣れた?」

「ユウ先輩いない時にも、
会いに来てるんで。」

「お。えらい。」

いつもと同じ会話。
なのに、
私だけが昨日までと違っていた。

聞きたい。

でも、
聞きたくない。

聞かなければ、
もう少しだけ、間違いかもしれないって
思っていられる。

「あの……。」

「ん?」

ユウ先輩が、こっちを見る。

「あ……なんでもないです。」

「なにそれ。」

先輩が笑う。


少しして、

「そろそろ帰ろっか。」

「あっ。」

考えるより先に、声が出た。

今聞かなかったら、
きっと聞けない。

「あの……。」

胸の奥が、落ち着かない。

「ユウ先輩って、
彼女いるんですか?」

ユウ先輩が、私を見る。

「いるよ。」

あまりにも、
普通だった。

「……そうなんですね。」

「うん。」

昨日からずっと気になっていたこと。

その答えは、
思っていたよりあっさり返ってきた。

彼女の話は、聞きたくない。
これ以上知ったら、
きっと苦しくなる。

なのに、
知らないままでいるのも嫌だった。

「高校の頃から?」

「うん。」

「今は……
遠距離なんですよね。」

「なんで知ってるの?」

「あ……ショウタから、
ちょっと聞いて。」

「そっか。」

「大学、遠いんですか?」

「結構遠いかな。」

「じゃあ、
あんまり会えないですね。」

「まあね。」

その言葉に、
ほんの一瞬だけ心が動いた。

会えないんだ。

だったら――

そこまで考えて、やめた。

会えなくても、
遠くにいても、

彼女は彼女だ。


「そろそろ帰るか。」

「……はい。」

立ち上がって、
いつもの道を歩き出す。

昨日までなら、
この時間が
少しでも長く続けばいいと思っていた。

今日は、
隣にいるのに、
少し遠く感じた。

もう、
間違いじゃなかった。

ユウ先輩には、
彼女がいる。

だったら、
これ以上、
好きにならない方がいい。

まだ、
好きになったばかりだから。

今なら、
きっと忘れられる。

そう思っていた。


第十五話へ続く


私の高校時代の恋は
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