見出し画像

第四話 元気?|10年越しの答え合わせ

第二章 ナオ君編
第四話「元気?」

好きだった子に彼氏ができた。

その話を聞いたのは、昼休みの教室だった。

友達同士の何気ない会話。

「あの2人付き合ったらしいよ。」

その一言だけで十分だった。

教室では誰かが笑っていた。

机を引く音も、

誰かの話し声も聞こえていたはずなのに、

その瞬間だけ、 全部が遠くなった気がした。


胸は痛かった。

もし、もっと早く気持ちを伝えていたら。

そんなことを考えなかったわけじゃない。

でも、
思っていたほど取り乱しはしなかった。

ただ、
胸の奥に小さな穴が空いたような感覚だけが残った。


あの子が笑っていられるなら、

それでよかった。

ずっと好きだった恋は、

ようやく終わった。

終わったというより、

終わったことを受け入れられた。

そんな感覚だった。


それから数ヶ月が過ぎた。

ある日の昼休み。

同じクラスに、水野という女子がいた。

リオと同じ中学だったらしい。

たまたま近くの席になり、

何気なく声をかける。

「そういえばさ。」

「ん?」

「リオって元気?」

水野は少し驚いた顔をした。

「え? 元気なんじゃない?」

「そっか。」

それだけ聞ければ十分だった。

……そのはずだった。

でも、口が勝手に動いた。

「前さ。」

「うん。」

「俺が勝手にメール終わらせちゃったから。」

少しだけ沈黙が流れる。

「なんか悪いことしたなって。」

水野は俺の顔を見て、小さく笑った。

「そう思ってるなら、リオに言えばいいじゃん。」

思わず苦笑いする。

「……いや。」

その一言しか出てこなかった。

今さら無理だった。

自分から終わらせた。

好きな人が忘れられないと言った。

それなのに、

何もなかったみたいに

また連絡したいなんて、

そんな都合のいい話があるはずない。


「ふーん。」

水野はそれ以上何も聞かなかった。

だから俺も話を変えた。

その会話は、

それで終わった。


放課後。

帰り支度をしながら、

昼休みのことを思い出していた。

「なんか悪いことしたな。」

あんなこと、

なんで言っちゃったんだろう。

誰にも話すつもりなんてなかったのに。

でも、

誰かに聞いてほしかった。

いや。

本当は、

自分で認めたかったのかもしれない。

俺はまだ、

リオのことが気になっていた。



数日後。

携帯が震える。

送り主は、マユ。

『またリオとメールしたいって、本当?』

……なんで。

思わず画面を見つめたまま固まる。

昼休みのあの会話が、

頭の中によみがえった。


あれ、

リオに伝わったのか。

指は画面の上で止まったまま、

しばらく動かなかった。


第五話へ続く


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集