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第八話 また|新しい春

第三章 ユウ先輩編
第八話 「また」

授業が終わる。

「ごめーん!今日先帰るね!」

ユリは急いで教室を飛び出していった。

「今日バイトだっけ?」

「うん。遅刻しそう!」

「頑張ってねー!」

その横で、ナナは教科書をバッグへしまう。

「私は学務課で手続きあるんだ。」

「了解。また明日ね。」

「うん。また明日。」

ナナを見送ると、私も教室を出た。


校門へ向かって歩き出す。

でも、
気づけば足は校舎裏へ向かっていた。

もちろん、
猫に会うため。

……そういうことにしていた。


植え込みの前まで来る。

「あ、いた。」

茶トラの猫が今日ものんびり座っていた。

私はそっとしゃがみ込む。

「今日も来たんだ。」

猫は私をちらっと見て、小さくあくびをした。

この前より、少しだけ近い。

「かわいい!」

ゆっくり手を伸ばす。

猫は逃げなかった。

指先の匂いをくんくん嗅いで、そのまま座り込む。


「今日は仲良くなってる。」

聞き慣れた声がした。

振り向く。

「あ……。」

ユウ先輩だった。

コンビニの袋を片手に、小さく笑っている。

「お疲れ。」

「お疲れさまです。」

ユウ先輩も私の隣へしゃがんだ。

猫は嬉しそうに近寄っていき、足元へ体をすり寄せる。

「やっぱりユウ先輩の方が好きなんですね。」

思わず笑う。

「たまに会うからかな。」

「この子、気まぐれだけどね。」

猫の頭を優しく撫でながら答えた。

「ユウ先輩、よくここ来るんですか?」

「下宿先、この近くだから。」

コンビニの袋を少し持ち上げる。

「買い物帰り。」

「猫がいたら、ちょっと寄る。」

「そうなんですね。」

だからこんなに懐いているんだ。


少し風が吹く。

木の葉が揺れて、猫が気持ちよさそうに目を細めた。


「今日は終わるの早かったんですね。」

「四限休講。」

「いいなぁ。」

「でも一限から。」

「それは大変でしたね…。」

二人で少し笑う。

たわいない会話。

それなのに、

こうして少しずつ話せることが、嬉しかった。


「じゃあ。」

ユウ先輩が立ち上がる。

「また。」

その一言に、思わず顔を上げた。

「……はい。また。」

ユウ先輩は軽く手を振ると、
そのまま歩いていった。

歩いていく後ろ姿を見送りながら、
帰り道も、
「また。」
その言葉ばかり思い出していた。

また会える。

そんな約束をもらえた気がして、
少しだけ嬉しかった。


第九話へ続く


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