第二話 新歓|新しい春
第三章 ユウ先輩編
第二話 「新歓」
入学式が終わると、
いよいよ大学生活が始まった。
朝、校門の前には先輩たちがずらりと並び、
「新歓来て!」
「テニスどう?」
「ご飯だけでも食べにおいで!」
あちこちから声が飛んでくる。
こんなにたくさんサークルがあるなんて、
高校までの私には想像もしていなかった。
圧倒されながらも、私たちはいくつか
気になるサークルの新入生歓迎会へ
参加してみることにした。
サークルごとに雰囲気は全然違う。
にぎやかなところ。
落ち着いたところ。
どこも楽しかったけれど、なかなか決めきれない。
そんなある日。
参加した新歓で、見覚えのある顔を見つけた。
「あっ!」
ユリが指をさす。
振り向いた先輩が、大きく手を振った。
「おー!お前ら!」
合宿で同じ班だったハヤト先輩だった。
「来てくれたのか!」
その一言だけで、不思議と緊張がほぐれる。
初めて会う一年生にも気さくに話しかけて、
場を盛り上げて、
いつの間にかみんなを笑顔にしてしまう。
やっぱり、この先輩はすごい。
私たちも先輩や同級生と話しながら、
あっという間に時間が過ぎていった。
そのときだった。
時間を見ようと、何気なく左腕に目を落とした。
私の左手のすぐ近くに、
もう一つの手があった。
白いシャツを腕まくりした大きな手。
長い指。
少し日に焼けた肌。
向こうは私には気づいていない。
後ろを向いたまま、隣の人と楽しそうに笑っていた。
ただ座った場所が近かっただけ。
何気なく、そこへ手を置いただけ。
それなのに、
少し手を動かしたら
触れてしまいそうなくらい近くて、
胸がドキッとした。
私はその手から目を離せなかった。
男の人に、
こんなふうに胸が高鳴ったのは初めてだった。

あの手が、
どうしても頭から離れなかった。
帰り際、
ほんの一瞬だけ、その人の顔が見えた。
切れ長の目。
どこか大人っぽい雰囲気。
今まで好きだったタイプとは、少し違う。
なのに、なぜか気になった。
帰り道。
3人で電車を待っていると、
ユリが突然笑い出した。
「ねぇ、ハヤト先輩。」
「ん?」
「YOSHIKIに似てない?」
一瞬、三人で顔を見合わせる。
そして、
「あー!」
笑いが止まらなかった。
「もうYOSHIKIにしか見えない!」
その日から私たちは、
ハヤト先輩のことを、
こっそり『YOSHIKI先輩』と呼ぶようになった。
「私、やっぱりあのサークルが一番楽しかった。」
ユリが言う。
「私も。」
ナナも頷く。
「リオは?」
「……実は、私も。」
三人とも同じ気持ちだった。
私たちは、
ハヤト先輩のいるサークルへ
入ることに決めた。
あの日の選択が、
私の大学生活を
大きく変えることになるなんて、
まだ知らなかった。
第三話へ続く
