見出し画像

セツ編一章 稲作少女の陽だまり

では今回からいよいよ本題に入ります!
太古の時代の稲作少女セツの記憶です♪


第一話 セツの誕生と幼少期

セツが生まれた時、村の人々は総出でその誕生を祝った。といっても、彼女が特別だったからではない。この小さな村では子の誕生そのものが祝祭であり、共同体の未来を担う出来事だったからだ。人々は皆顔見知りで、喜びも悲しみも共有していた。外の者に対しては厳しくとも、内に生まれた命は村全体で見守られた。

村の人口は決して多くはなく、今の時代の小さな会社ほどの規模だったかもしれない。平均寿命が三十年に満たない頃、祖父母の存在は珍しく、家族は両親と兄弟で構成されるのが常であった。セツの家も例に漏れず、父母、姉妹で暮らしていた。父は田畑を耕し、時に狩りにも出掛けて家族を養っていたが、やがて体を崩し、思うように働けなくなる。

その時、幼いセツは自ら手伝うことを申し出た。とはいえ、彼女が鍬を握ったのはそれが初めてではなかった。記憶をたどれば、五、六歳の頃から田植えや畑仕事を手伝っていたのだ。家を支えるために本格的に働き始めたのは十二歳前後だったが、労働は彼女にとって日常であり、特別な意識すらなかった。

だが、仕事ばかりの毎日ではなかった。幼少期のセツは、近所の子供たちと走り回ったり、鬼ごっこをしたり、自然の中で遊んで過ごした。狩りは命懸けの行為であり、子供が真似事をするようなことはなかったが、森の入り口で秘密の遊びを想像することくらいはあっただろう。空や花を眺めながら友と語らう、そんな素朴で穏やかな時間も彼女の日常を彩っていた。

セツは「ごく普通の少女」だった。のちに仲間の記憶と共に語られる姿──鍬や鎌を武器のように携える戦士ではなく、狩りに出る勇ましい娘でもない。家族と村を思い、田畑を世話しながら、子供らしい喜びや不安を抱いて過ごす、そんな日々を生きていたのだ。


幼い頃のセツは、村の人々とよく交流していた。
その中には、少し年上の「近所のお姉さん」の存在がある。彼女は長い髪を持ち、背も高く可愛らしい雰囲気を備えていたが、弥生時代の女性らしく日々の農作業に精を出すたくましさも兼ね備えていた。セツにとってそのお姉さんは憧れの存在であり、オシャレや立ち居振る舞いといった、両親からはなかなか学べない女性らしさを教えてくれる大切な人であった。セツはその教えを受ける時間を心から楽しみにしていたようだ。

また、同年代の少年たちともよく遊んでいた。中でも、ある少年とは軽口を叩き合える気安い関係で、互いに遠慮のない言葉を交わせる間柄だった。セツにとっては珍しく、雑な対応ができる相手であり、その関係は今でいう「ケンカ友達」に近いものであった。少年の方も年頃らしく、好きな子に意地悪をしたくなる気持ちから、虫を見せびらかしたりちょっとした悪戯を仕掛けることもあったという。

こうした友人や年上の人々との交流に加え、セツは父や5つ年上で幼き頃から頼りにしていた男性であるトモから稲作の知識を教わりながら、明るくのびのびと成長していった。村の中で人と関わり、遊びと学びを重ねる日々は、彼女の幼少期を彩る大切な時間であった。



穏やかに続きます。


セツのイメージイラスト

次回のお話

いいなと思ったら応援しよう!