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【毎週ショートショートnote】踏切オーディション|ショートショート


タイトル:季節を運ぶ踏切

世界には四つの季節がある。

だが、その季節を運んでいるのが誰かを知る者は少ない。

春の妖精。

夏の竜。

秋の風使い。

冬の雪狐。

彼らは百年ごとに選ばれる。

その選考会こそが、

踏切オーディションだった。

森の奥。

誰も知らない場所に一本の踏切がある。

線路はどこにも繋がっていない。

列車も来ない。

それでも決まった時刻になると警報機が鳴る。

カン、カン、カン。

すると異界への扉が開くのだ。

今年の応募者は三百名。

花を咲かせる妖精。

氷を操る狼。

虹を編む小人。

みんな緊張した顔をしている。

そんな中、一人だけ変わった応募者がいた。

名前はスリッパ。

魔法使いでも妖精でもない。

ただの喋るスリッパだった。

周囲はざわつく。

「季節を運ぶのにスリッパ?」

「無理だろ」

審査員たちは半信半疑だった。

やがて試験が始まる。

春候補は桜を咲かせる。

夏候補は雷を呼ぶ。

秋候補は紅葉を舞わせる。

冬候補は雪を降らせる。

どれも見事だった。

最後にスリッパの番が来る。

「では、あなたの力を」

スリッパは少し考えた。

そして静かに言った。

「季節は景色だけじゃありません」

その瞬間。

会場に風が吹く。

春の入学式。

夏休みの冒険。

秋の夕焼け。

冬のこたつ。

誰かと過ごした思い出が次々と現れた。

観客たちは目を見開く。

そこに映っていたのは季節そのものではなく、

季節の中で生きた人々の記憶だった。

会場は静まり返る。

やがて最年長の審査員が微笑んだ。

「合格」

その年から、季節を運ぶ列車の車掌はスリッパになった。

今でも踏切が鳴るたび、

どこかで季節を乗せた列車が走り出すという。

そして列車の先頭では、一足のスリッパが誇らしげに立っているらしい。


*下記企画に参加させて頂きました*


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