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【毎週ショートショートnote】半導体大仏|ショートショート


半導体大仏の休日

遥か東の国に、不思議な大仏がいた。

その名も、

半導体大仏。

全長百メートル。

体は黄金ではなく銀色。

内部には無数の回路が張り巡らされている。

人々の願いを計算し、

世界の幸福度を見守る守護神だった。

だが最近、半導体大仏は悩んでいた。

願い事が多すぎるのである。

「試験に受かりますように」

「恋が叶いますように」

「宝くじが当たりますように」

「推しが幸せでありますように」

毎日何億件もの願いが届く。

ついに半導体大仏の頭から煙が出始めた。

完全なオーバーワークだった。

そこで天界は特別休暇を与えることにした。

場所は雲の上。

開催されるのは、

第一回 フリースタイル大相撲大会。

優勝賞品は、

「何も考えなくていい一日券」。

神々が大歓声を上げる。

参加者は自由。

龍神。

風神。

河童。

雪女。

そして半導体大仏。

普通の大相撲と違い、

ルールはたった一つだった。

自分らしく戦うこと。

押し出してもいい。

踊ってもいい。

歌ってもいい。

俳句を詠んでもいい。

完全にフリースタイルだった。

試合が始まる。

龍神は竜巻で土俵を回る。

河童はきゅうりを配る。

雪女は観客席にかき氷を振る舞う。

もはや相撲ではない。

半導体大仏は静かに見ていた。

そして決勝戦。

対戦相手は風神。

誰もが激しい勝負を予想した。

しかし半導体大仏は合掌したまま動かない。

風神が首を傾げる。

「戦わないのか?」

半導体大仏は微笑んだ。

「今日は休みに来たのです」

そう言って空を見上げる。

青空。

流れる雲。

笑う神々。

誰かの願いを考えなくていい時間。

それは何百年ぶりかの静かな休日だった。

風神も笑った。

「それなら引き分けだな」

会場は大歓声に包まれる。

優勝者はいなかった。

けれどその日、一番幸せそうだったのは半導体大仏だった。

以来、人々は言う。

願い事をするのも大切だけれど、

時には空を見上げて休むことも大切だと。

なぜなら、

世界中の願いを聞いている半導体大仏でさえ、

休日が必要なのだから。


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