【毎週ショートショートnote】梅雨占い|ショートショート
タイトル:雨粒の占い師
梅雨の間だけ現れる店がある。
その名も、
「梅雨占い」
店は街の外れの紫陽花坂にひっそり建っていた。
看板もない。
地図にも載っていない。
雨の日にだけ見つけられる不思議な店だった。
店主は一匹の青いカエル。
小さな丸眼鏡をかけている。
占いの方法は変わっていた。
水晶玉ではない。
タロットでもない。
葉っぱの上に落ちた雨粒を眺めるのだ。
ぽつり。
ぽつり。
落ちる雨粒の形で未来を読む。
ある日、一人の少女がやって来た。
「私の未来を占ってください」
カエルは頷く。
そして紫陽花の葉を一枚差し出した。
雨粒が落ちる。
ころん。
ころころ。
すると雨粒は葉の上を転がり、小さなハートの形になった。
「恋愛運ですね」
少女は顔を赤くする。
次の雨粒は星形になった。
「新しい挑戦が待っています」
少女は目を輝かせた。
けれど最後の雨粒だけは不思議だった。
形が定まらない。
丸くなったり、
三角になったり、
ふわふわ揺れ続ける。
少女は不安になる。
「悪いことですか?」
カエルは首を振った。
「いいえ」
そして優しく笑う。
「まだ決まっていない未来です」
少女はきょとんとした。
するとカエルは窓の外を指差す。
雨の向こうで紫陽花が揺れている。
「未来は占いで決まるものではありません」
「あなたが選ぶものです」
その言葉を聞いた瞬間、
最後の雨粒は小さな虹になった。
少女は嬉しそうに微笑む。
そして傘を開き、雨の中へ歩き出した。
その後ろ姿を見送りながら、カエルは呟く。
「一番当たらない占いが、一番素敵なんですよ」
なぜなら、
未来にはまだ希望を書き足せるのだから。
梅雨占いの店は今日も雨の中で営業している。
誰かのまだ見ぬ虹を探しながら。
了

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