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【毎週ショートショートnote】作家ワールドカップ|ショートショート


タイトル:作家ワールドカップ

四年に一度だけ開かれる大会がある。

その名も、

作家ワールドカップ。

世界中の物語が一つの会場へ集まり、

優勝した作品は一年間、人々の夢に登場できるという。

開会式の日。

作家たちは原稿用紙を抱え、真剣な表情で集まっていた。

ところが、競技開始前に全員が広場へ呼ばれる。

「まずは柔軟体操です!」

司会者が元気よく叫んだ。

「えっ?」

ざわつく会場。

小説家も。

詩人も。

絵本作家も。

みんな腕を伸ばし、体をひねる。

「物語は頭だけじゃ書けません!」

その一言に、誰も反論できなかった。

柔らかくなった心には、新しい発想が入りやすいからだ。

競技が始まると、不思議なことが起こった。

ペンを走らせるたび、

文章が鳥になって飛び立つ。

笑顔を書けば虹が現れ、

涙を書けば星が降る。

観客は物語そのものを見ながら採点していた。

昼休みになると、

屋台には長い列ができる。

一番人気は、

揚げたてのアメリカンドッグ。

「これを食べると語彙力が少し増える」

という噂があり、

売り切れ続出だった。

午後の決勝。

最後まで残ったのは、一人の若い作家と、小さな出版社の社長だった。

社長も昔は作家を目指していたのである。

勝敗を決める最後のお題は、

「誰も読んだことのない幸せ」

若い作家は、静かにペンを走らせた。

社長は、その横顔を見て微笑む。

「いい物語は、勝つためじゃない。」

「誰かの心に住むために書くんだ。」

その瞬間、会場中の本が一斉にページをめくった。

風もないのに。

審査員は満場一致で拍手を送る。

優勝トロフィーは若い作家へ渡された。

しかし彼は首を横に振った。

「この物語は、一人では書けませんでした。」

そう言ってトロフィーを社長へ差し出す。

社長は受け取らず、笑って言った。

「続きを書くのが、私の仕事だから。」

その日以来、作家ワールドカップでは優勝者よりも、

「誰かの続きを応援できた人」

が、一番大きな拍手をもらうようになったという。


*下記企画に参加させて頂きました*


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