見出し画像

【毎週ショートショートnote】インフル念写|エッセイ

病室の白い天井って、どうしてあんなに“無音の音”がするんだろう。
私が寝返りを打つたび、消毒液の匂いが、遠い昔の冬を連れてくる。

インフルエンザの熱でぼんやりしていたせいか、
あの夜は、心の中のイメージが全部スクリーンに映し出されるみたいに鮮明だった。
まるで——念写。

閉じた瞼の裏に、突然 “銃声” が走った。
パン、と鋭い音。
でも、恐怖じゃなかった。
冷たい空気を割る、リアルな現実の音というより、楽譜の一部みたいだった。

私の心のどこかには、いつも「余韻」がある。
弾かれていない鍵盤の上を、誰かの指がふわりと通ったような感覚。
あの日の銃声も、楽器の一音のように、私の中で波紋をつくった。

——生きているって、こんなふうに突然、
  世界に音が差し込んでくることなのかもしれない。

薄暗い病室で、点滴の滴るリズムが、ゆっくりと楽譜になっていった。
私の呼吸と、心臓の鼓動と、遠くのナースステーションの足音が重なって、
奇妙に整ったワルツのように聞こえた。

「生きる音」って、いつもこんなふうに散らばってるんだなって思った。

熱が上がるたびに、
私の中の景色が、真冬の窓に貼りつく霜みたいにゆっくり形を変えていく。
念写みたいに浮かんでは消える断片。
銃声の音、病室の白、点滴の滴り、楽譜の空白。

その全部が、
「まだ大丈夫だよ」って私に言ってる気がした。

熱が下がったあとも、あの夜の音たちは、
胸の奥にゆっくり沈んで残っている。
忘れたくない静かな記憶として。


高熱でると、波にのまれる感じがする


*下記企画に参加させて頂きました*


☆次の作品はこちらです↓↓↓


前回の作品はこちらです↓↓↓


最後までお読みくださり、ありがとうございます😊すず

いいなと思ったら応援しよう!

鈴蘭 読んで下さりありがとうございます!励みになります!