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【3つのお題に空想のひらめきを第34回】名前を呼ぶと光る、古い街灯.忘れ物を預かる小さな雲.朝になると消えてしまうベンチ|ショートショート


タイトル: 光らない名前の町

その町には、名前を呼ぶと光る、古い街灯があった。
夜になると誰かが試すけれど、
自分の名前で光らせられる人は、案外少ない。

街角の上空には、
忘れ物を預かる小さな雲が浮かんでいる。
鍵、約束、言えなかった言葉。
雲は黙って受け取り、軽くなるまで持っていてくれる。

広場の端には、
朝になると消えてしまうベンチが一つ。
夜しか座れないそのベンチでは、
後悔も希望も、同じ温度になる。

俺はある晩、そのベンチに腰を下ろし、
街灯に向かって自分の名前を呼んだ。

光は、つかなかった。

その瞬間、近くで雲が小さく震え、
ベンチの脚がきしんだ。
まるで世界が、
「それは同時に成立しない」と言っているみたいだった。

後で知った。
この町ではそれをパウリ効果と呼ぶらしい。
心が満ちると、装置は黙る。
欠けているときだけ、光る。

夜が明け、ベンチは消え、
雲は少し軽くなって空へ溶けた。

街灯の下に残ったのは、
呼ばれなかった名前と、
なぜか悪くない静けさだけだった。

俺は歩き出す。
光らなくても、
この町はちゃんと、進める。


おしまい

パウリ効果とは、
著名な物理学者であるヴォルフガング・パウリが触れると機械がすぐ壊れたというエピソードに基づく現象名またはジョークです。


*下記企画に参加させて頂きました*


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