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futen_seisuke
【アマノ文筆クラブ】論理ピープル|ショートショート
タイトル: 論理ピープル
この街では、感情は禁止されている。
怒る理由は三行以内。
泣く場合は事前申請。
恋は、合理的根拠を提出のこと。
人々は自分たちを誇らしげにこう呼ぶ。
――論理ピープル。
広場の真ん中には、掲示板がある。
そこには毎日、誰かの“辞世の句”が貼り出される。
もちろん、本物の死ではない。
「感情的発言をした者」は、
社会的に“論破”される。
そのとき、自らの最終発言を五七五で残すのだ。
《好きだった 理由はないが 好きだった》
それは今朝の辞世の句。
作者は、行方不明になった。
噂では、地下に“密売人”がいるらしい。
感情を売る男。
涙、怒り、ときめき、嫉妬。
禁制品だ。
私は密売人に会いに行った。
薄暗い地下倉庫。
そこにいたのは、無愛想な青年だった。
「別に、あんたのためじゃないけど」
それが第一声。
ツンデレかよ。
「何を買う?」
「……ときめき」
青年は小瓶を差し出す。
透明な液体。
揺れると、かすかに赤く光る。
「副作用は?」
「論理が鈍る」
私は笑った。
「それ、最高じゃん」
小瓶を開けた瞬間、
胸が熱くなる。
理由なんていらない衝動。
説明できない衝撃。
心臓が、勝手に鳴る。
地上に戻ると、掲示板の前に人だかり。
私はペンを取る。
《論理では 測れぬ鼓動 今ここに》
ざわめき。
誰かが叫ぶ。
「非合理だ!」
「感情的だ!」
私は振り返らずに言った。
「うるさいな。別にあんたのためじゃないけど」
胸が高鳴る。
辞世の句ではない。
これは、宣戦布告だ。
論理ピープルの街に、
感情という密売品が、
今、流通を始めた。
了

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