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【風まかせ文芸部】傘|エッセイ


タイトル:傘をひらく

傘は不思議なものだと思う。

晴れの日には邪魔者なのに、雨の日には頼もしい味方になる。

普段は玄関の隅に置かれていて、存在を忘れられていることも多い。

それでも雨が降ると、一番に思い出される。

なんだか人間関係にも似ている気がする。

私は昔から、一人で何とかしようとするところがある。

困っていても「大丈夫」と言ってしまう。

迷惑をかけたくないし、頼るのも少し苦手だ。

けれど人生には、自分だけではどうにもならない雨の日がある。

そんな時、誰かがそっと傘を差し出してくれることがある。

何か特別なことを言うわけではない。

ただ話を聞いてくれたり、一緒にいてくれたりする。

それだけで雨の冷たさが少し和らぐ。

逆に、自分が誰かの傘になることもある。

ほんの少し話を聞くだけかもしれない。

励ましの言葉をかけるだけかもしれない。

それでも、その人にとっては雨宿りになることがある。

だから私は思う。

強い人は雨に濡れない人ではなく、必要な時に傘をひらける人なのだと。

誰かの傘を借りることも。

誰かに傘を差し出すことも。

どちらも同じくらい大切なのだと思う。

今日も玄関には一本の傘が立っている。

雨の予報はない。

けれど、人生の天気は変わりやすい。

だから私はその傘を見ながら少し安心する。

一人で頑張りすぎなくてもいいのだと、教えてくれている気がするからだ。



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