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【3つのお題に空想のひらめきを第45回】海の底にある古い劇場.世界の終わりを見た猫.記憶を編む織物屋|ショートショート
タイトル:海底劇場のカーテンコール
海の底に、古い劇場がある。
誰もいないはずなのに、
幕は毎晩、静かに上がる。
観客は、水の記憶。
流れてきた時間のかけらたち。
舞台袖には、猫がいる。
世界の終わりを見た猫。
何も語らない。
ただ、すべてを知っているような目で、
幕の内側を見つめている。
「今夜の演出は、少しやわらかく」
声がする。
記憶を編む織物屋が、
舞台の奥で糸を手繰る。
光る糸は、誰かの思い出。
ほどけた記憶を拾い集めて、
ひとつの物語に編み直す。
空の巣症候群、という言葉が浮かぶ。
役目を終えた場所に、
ぽっかりと残る空白。
この劇場は、
その空白のためにあるのかもしれない。
誰かがいなくなったあと。
何かが終わったあと。
残された静けさを、
ただの終わりにしないために。
幕が上がる。
舞台に現れるのは、
ありえたかもしれない時間。
もう一度だけ、
続けられるはずだった物語。
猫は目を細める。
織物屋の手が止まる。
やがて、幕がゆっくりと下りる。
拍手はない。
それでも確かに、
何かが終わり、何かが満たされる。
海の底の劇場は、
今日も静かに上演を続ける。
空っぽになった場所に、
やさしく灯りをともすために。
おしまい

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