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【3つのお題に空想のひらめきを第53回】風船を配る巨人.虹を盗んだ猫.眠れない三日月|ショートショート


タイトル:蜃気楼の空に忘れもの

昔々、空と地上が今より近かった頃。

世界の西の果てに、眠れない三日月がいた。

三日月は夜になるたび空を歩き回る。

星を数えても眠れない。

雲を枕にしても眠れない。

困り果てた三日月は、夜明け前になるとため息をついた。

そのため息は蜃気楼になり、

遠い空に幻の街を映し出したという。

ある夜。

三日月は空の下に奇妙な光景を見つけた。

風船を配る巨人が歩いていたのだ。

巨人は大きな袋を背負い、

泣いている子には青い風船を、

迷っている旅人には黄色い風船を、

勇気が欲しい人には赤い風船を渡していた。

「どうしてそんなことをしているの?」

三日月が尋ねる。

巨人は笑った。

「誰かの心が少し軽くなるからさ」

その言葉を聞いた三日月は少しだけ嬉しくなった。

だが、その翌朝。

世界から虹が消えた。

大騒ぎになった。

川にも空にも雨上がりにも虹が現れない。

調べてみると犯人は一匹の猫だった。

その名も、虹を盗んだ猫

猫は虹の色が好きすぎて、

七色をこっそり集めていたのだ。

三日月と巨人は猫を探した。

砂漠を越え、

森を越え、

蜃気楼の街まで辿り着く。

そこには虹色の毛並みになった猫が丸くなって眠っていた。

猫の周りには盗まれた七色が漂っている。

巨人は怒らなかった。

三日月も叱らなかった。

代わりに巨人は一つの風船を差し出した。

虹色の風船だった。

猫は目を丸くする。

「これ、くれるの?」

「うん。でも虹はみんなで見るものだろ?」

猫はしばらく考えた。

そして小さく頷く。

その瞬間。

七色の光が空へ舞い上がった。

世界に虹が戻る。

川も。

森も。

雨上がりの空も。

再び七色に輝き始めた。

その夜。

三日月は久しぶりによく眠れた。

夢の中では、

虹色の風船を追いかける猫と、

それを見守る巨人が笑っていたという。


おしまい


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