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yumi411
【青ブラ文学部】嫌いな人にありがとう|エッセイ
タイトル:嫌いな人に、ありがとう
嫌いな人に「ありがとう」と言うのは、
簡単なことじゃない。
むしろ、言わなくていい理由のほうが、
いくつも思い浮かぶ。
父は、母を怒鳴り、虐げた。
外では愛想がよく、
いつの間にか被害者の席に座り、
家族を悪者にした。
私はその姿を、
子どもじゃない目で、何度も見た。
母の最後の願いは、
「お祭りに行きたい」
それだけだった。
父は大暴れした。
連れてくるな、勝手なことをするなと。
それでも私は、母の手を取って外に出た。
夜の屋台の灯り。
人混みのざわめき。
母は、静かに笑っていた。
その夜、母は亡くなった。
私は今でも思う。
あの時間は、母が自分の人生に
ちゃんと「さようなら」を言えた
最後の場所だったのだと。
父を、許せてはいない。
母にした仕打ちは、
なかったことにはならない。
それでも、思い出す。
子どもの頃の父は、優しかった。
海に連れて行ってくれた。
スケートリンクで、転ぶ私を笑いながら手を引いた。
大人になってから、
私たちは疎遠になった。
心の距離は、戻らない。
それでも私は、言う。
父に、ありがとう、と。
それは許しではない。
和解でもない。
ただ、私が私でいるための言葉だ。
憎しみだけで終わらせない。
感謝だけで美化もしない。
その両方を抱えたまま、
私は前を向く。
嫌いな人に、ありがとう。
それは、
私が母から受け取った
最後の強さなのかもしれない。
了

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悠・恵 日常・ほのぼの↓↓↓1
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