【せりふ三題噺】で、感想は?|傘.グミ.地平線|ショートショート
タイトル:地平線を味見したキリン
世界の果てには、地平線を作るキリンがいる。
そう言われていた。
もちろん誰も信じていなかった。
ただ、雨上がりの夕方になると、空と大地の境目が少しだけ揺れる。
その時だけキリンが現れるという。
ある日。
旅人の少女ミナは虹色の傘を差しながら草原を歩いていた。
ポケットには大好物のグミ。
目的地はない。
ただ遠くの景色を見たかっただけだ。
すると地平線の向こうから首が伸びてきた。
にゅうっ。
長い。
とにかく長い。
雲を突き抜けるほど長い。
キリンだった。
噂のキリンである。
キリンは地平線をぺろりと舐めた。
すると夕焼けが少し赤くなる。
もう一度舐める。
今度は紫色が増えた。
ミナは目を丸くした。
「なにしてるの?」
キリンは真面目な顔で答える。
「味見」
意味が分からなかった。
キリンは説明する。
地平線は毎日違う味らしい。
晴れの日はラムネ味。
雨の日はミント味。
雪の日は綿あめ味。
そして今日は夕焼けグミ味だった。
キリンは満足そうに頷く。
ミナはポケットからグミを取り出した。
「これとどっちがおいしい?」
キリンは少し考える。
そしてグミを一粒もらった。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
しばらく沈黙。
やがてキリンは首を傾げた。
そして真剣な顔で言った。
「で、感想は?」
なぜか逆に聞かれた。
ミナは笑いながら答える。
「地平線の方が気になるかな」
その瞬間だった。
キリンは嬉しそうに笑う。
すると地平線がふわりと広がった。
空の色が何層にも重なり、
見たことのない美しい景色が生まれる。
どうやら誰かに興味を持ってもらえると、
地平線は少しだけ綺麗になるらしい。
その日以来。
ミナは時々キリンに会いに行く。
グミを持って。
虹色の傘を差して。
そして二人で夕暮れの地平線を眺めるのだ。
今日の景色はどんな味がするだろうと話しながら。
了

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