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【3つのお題に空想のひらめきを第59回】風が眠る丘.朝露のオーケストラ.世界で一番小さな奇跡|ショートショート


タイトル:風が眠る丘の小さな奇跡

地図に載っていない丘があった。

人々はそこを**「風が眠る丘」**と呼んでいた。

風は吹くものではなく、眠るもの。

夜になると丘一面の草の中で静かに目を閉じ、夜明けとともにゆっくり目を覚ますのだという。

ある朝、一人の旅人が丘を訪れた。

行き先は決めていない。

それはあてのない旅だった。

朝日が昇ると、草の先についた雫が一斉に震え始める。

ぽろん。

ちりん。

しゃらん。

朝露が奏でる音色は重なり合い、まるで朝露のオーケストラだった。

その演奏に合わせるように、眠っていた風がゆっくりと目を覚ます。

旅人は耳を澄ませた。

すると、一粒の朝露が風に乗って掌へ転がってきた。

雫は朝日に照らされ、小さく七色に輝く。

その光はほんの一瞬だけ、旅人の心にしまい込んでいた願いを映し出した。

「行き先なんて、なくてもいい。」

その言葉とともに、朝露は空へ溶け、風はどこか遠くへ旅立っていった。

あとには、いつもと変わらない丘が残る。

誰も気づかないほど小さな出来事。

けれど旅人にとっては、それが世界で一番小さな奇跡だった。

そして今日もまた、風は夕暮れになると丘へ帰り、明日の朝露の演奏を楽しみに静かに眠りにつく。


おしまい


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