見出し画像

【3つのお題に空想のひらめきを第60回】四つ葉の森.花びらの切符.風船ホテル|ショートショート


タイトル: 四つ葉の森へようこそ

山奥にある四つ葉の森は、幸運を探す場所ではない。

幸運へ向かう人だけが見つけられる森だった。

入口には、小さなアライグマが駅員の帽子をかぶって立っている。

「切符をどうぞ。」

差し出されたのは、一枚の花びらだった。

薄桃色に透けるその花びらには、金色の葉脈が走っている。

花びらの切符です。一度きりですが、素敵な場所へご案内します。」

切符を風にかざすと、森の奥から色とりどりの風船が浮かび上がった。

それぞれが一軒の家ほど大きく、空へ向かってゆっくり昇っていく。

「あれが風船ホテルです。」

アライグマは胸を張った。

部屋は雲の高さによって景色が変わる。

朝焼けの部屋。

虹の部屋。

星空に一番近い部屋。

泊まる人の願いに合わせて、風船は静かに高さを変えるという。

私は花びらの切符を握りしめ、風船ホテルへ乗り込んだ。

窓の外では四つ葉の森が小さく揺れている。

不思議と胸の奥が温かくなった。

「幸運って、見つけるものじゃなかったんですね。」

そうつぶやくと、アライグマがにっこり笑う。

「ええ。」

「幸運は、誰かが"ようこそ"と言ってくれる場所から始まるんです。」

その瞬間、一枚の四つ葉が風に舞い上がり、花びらの切符へそっと重なった。

風船ホテルはさらに高く、高く昇っていく。

まるで今日という一日が、誰かから贈られた幸運そのものだったように。


おしまい


*下記企画に参加させて頂きました*


☆次の作品はこちらです↓↓↓

過去の作品はこちらです↓↓↓


最後までお読みくださり、ありがとうございます😊すず

いいなと思ったら応援しよう!

鈴蘭 読んで下さりありがとうございます!励みになります!