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【風まかせ文芸部】お年玉|エッセイ


お年玉袋を開ける前から、
もう嬉しかった記憶がある。

中身じゃなくて、袋そのものが。
おじいちゃんが、そこに絵を描いてくれていたから。

小さな紙の中に、
日本画みたいな景色が収まっていた。
線は控えめで、色は深くて、
見るたびに気持ちが落ち着いた。

特別な道具を使っていたわけじゃない。
でも、描く人の時間と呼吸が、
ちゃんと紙に残っていた。

祖父は、頼まれると
書や絵をよく書いていた。
祝い事も、節目も、
言葉の代わりに筆を使う人だった。

今でも親戚の家に飾ってある。
色あせているのに、古くない。
そこにあるだけで、
家の空気が少しやさしくなる。

お年玉の中身は、正直もう覚えていない。
でも、袋の絵だけは、
ちゃんと心に残っている。

あれはたぶん、
「大きくなれ」でも
「立派になれ」でもなくて、
「ちゃんと見てるよ」っていう
無言のメッセージだったんだと思う。

時間が経ってから分かる贈り物もある。
祖父は、それを知っていた人だった。



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