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【シロクマ文芸部】三月は|エッセイ


タイトル:暖かいは正義、三月は揺れる

三月は、季節と心が同時に衣替えを始める月だ。

コートでいつも迷う。
暖かい日もあれば、雪がチラつく日もある。
朝、カーテンを開けて空の色を見る。光は柔らかいのに、空気はまだ鋭い。まるで春が「ちょっとだけ顔出したよ」と言って、すぐ引っ込むみたいだ。

ダウンを着るか、普通のコートで行くか。
毎朝、小さな会議が始まる。

個人的には、朝晩は冷えるのでダウンを選びがちではある。
それも、中旬くらいまで。
流石に下旬ともなると、普通のコートを着るようになる。街の色も軽くなるし、気持ちも少しだけ前のめりになる。

でも、ぬかりなく、中にはウルトラライトダウンを着るのを忘れない。
見えないところで保険をかける。それが三月の作法だと思っている。

暖かいは正義。

冷たい風は背筋を伸ばしてくれるけれど、体を守るのはやっぱり温もりだ。
体が守られると、心もやわらぐ。
やわらいだ心は、余裕をつくる。

ふと、春の匂いが混じる瞬間がある。
土がほどける匂い。
遠くで誰かが始める気配。

優しい風が頬をなでると、「もう少しだけ頑張ってみようか」と思える。

三月は揺れる。
寒さとぬくもりのあいだで。
迷いながらも、少しずつ軽くなる。

だから私は今日も、迷いながら選ぶ。
そして、そっと中に仕込む。

暖かいは正義。

それはきっと、季節にも、人生にも言えることだと思っている。


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