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【3つのお題に空想のひらめきを第25回】透明な朝の音.明日へ歩く影.消えない砂時計|ショートショート
タイトル:影が先に歩く朝
透明な朝の音が、静かに世界を満たしていた。
それは鳥の声でも、風の揺れる気配でもなく――
“始まりそのもの”の響きだった。
私はゆっくり目を開け、そばに置いた消えない砂時計をそっと起こす。
夜のあいだ、何度振っても砂は減らない。
時間が永遠に閉じ込められた、不思議な砂時計。
でも、今日は違った。
砂はわずかに――一粒だけ、下へ落ちていた。
「……始まったんだ」
砂時計の傍らには、昨日までなかったはずの影が寄り添っていた。
私の影。でも、少しだけ濃くて、少しだけ前を歩いている。
“明日へ歩く影”――
そう呼ばれる精霊のことを、昔、祖母から聞いたことがある。
未来へ導く影。
その影が現れた者は、運命の扉がひらくのだ、と。
影は振り返らない。
けれど、迷う私の手をそっと引くように、少し前に伸びた。
「行くね。ちゃんと、ついていくよ」
闇の薄れた空には、まだトレミーの48星座がかすかに残っていた。
星々は古い物語の番人。
消えない砂時計の秘密も、未来へ進む影の理由も、
きっとあの中にあるのだろう。
影を追って歩き出すと、透明な朝の音がさらに澄みわたり、
砂時計が胸の中で静かに時を刻みはじめた。
未来はまだ何も知らない表情をしている。
でも、影は私を振り返らないまま――
確かに、前へ進んでいた。
私はその背を、そっと追いかけた。
これはきっと、今日からはじまる物語。
まだ誰も知らない、私だけの明日へ。
おしまい。

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